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理論だけでは売れない!高額商品の販売にリフレーミングが不可欠な理由

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高額商品の販売において、詳細な商品の説明や法令に基づく説明は不可欠です。しかし、それだけでは顧客の感情を動かすことはできません。多くの場合、顧客が本当に納得して購入を決めるのは、理性だけでなく感情が大きく影響しています。理論的な説明が完璧でも、感情面で「これが自分にとって正しい選択だ」と納得しなければ、購入には至らないのです。

本記事では、人間の行動心理や購買行動心理に基づいた「リフレーミング」の手法を解説します。特に、理論的な説明に偏りがちな営業マンが、顧客の感情を引き出しながら効果的に提案を行い、最終的に購入につなげるためのアプローチをお伝えします。

高額商品の販売における感情の影響

高額商品やサービスは、顧客にとって大きな投資です。車、不動産、保険、高額な家電など、これらの選択は長期にわたる生活の一部となり、結果的に人生を左右することがあります。つまり、顧客は高額な商品を購入する際に、大きな責任感やプレッシャーを感じています。

行動経済学では、「感情と理性の両方を使って意思決定する」とされますが、実際には感情が大きく意思決定に影響を与えることが多いです。人は不安や恐怖を感じるとリスクを避ける傾向があり、その結果、理性的には「買うべき」と分かっていても、感情的な不安から購入を控えてしまうことがあります。

顧客の本音:

  • 「この商品は本当に高価で、間違った選択をしてしまったらどうしよう」
  • 「いくら優れた商品でも、もし使わなかったら無駄になる」
  • 「周囲の人にこの選択をどう思われるだろう?」
  • 「将来的にもっと良い商品が出たら、この選択が後悔になるんじゃないか?」
  • 「この商品にこんなに高額な投資して本当に元が取れるのかな?」
  • 「自分には必要ないかもしれないけど、周りが持ってるから買った方が良いのかな?」

これらの声に共通するのは、購入を検討する顧客が感じている「リスクの大きさ」と「感情的な不安」です。理屈では商品の価値を理解していても、感情的に納得できていないと、結果として行動を起こすことができません。

 

理性と感情の狭間で悩む顧客の心理

顧客が高額商品を検討する際、彼らの心の中で理性と感情の狭間で葛藤が生まれることがよくあります。特に、人生の大きな決断や長期的に使用する商品ほど、顧客はリスクを感じやすく、その結果、購買決定に迷いが生じるのです。

ここでは、顧客が理性と感情の間でどのように悩み、なぜ購買行動に至りにくくなるのかを、より具体的に解説します。

不確実性への恐怖

高額商品を購入する際、顧客は将来的にどうなるか分からないという不確実性に直面します。特に、初めて購入する商品やサービスでは、購入後の使用感や本当に満足できるかどうかが分からないため、「もし間違った選択をしたらどうしよう」と不安に駆られます。

たとえば、家を購入する顧客が「この家に一生住む決断をして後悔しないだろうか?」と考えるように、長期間にわたり影響を与える商品では、未来の見通しが不透明なため、顧客はリスクを感じやすくなります。このリスクは、商品そのものの性能将来の市場変動などに対する不安に加え、自分の決断に対する信頼感の欠如から生まれることが多いのです。

損失回避バイアス

行動経済学では、損失回避バイアスという概念がよく取り上げられます。これは、人が利益を得ることよりも、損失を避けることに強く反応する傾向を指します。たとえば、顧客が100万円を得る可能性よりも、100万円を失うリスクに対してより敏感に反応しがちなのです。このバイアスは、高額商品を購入する際に顕著に現れます。

「購入して後悔したらどうしよう」「使わなかったら無駄になる」という心配が、顧客にとって大きな壁となり、結果として購買行動を抑制します。このような心理が働くと、たとえ商品のメリットが十分に説明されても、損失のリスクが心に残り、最終的な決断が先延ばしになってしまうのです。

社会的な評価に対する不安

顧客は、自分が選んだ商品が周囲の人々にどのように受け取られるかという社会的な評価にも敏感です。たとえば、「この高額商品を買って、家族から”贅沢だ”と思われるのではないか」「周囲の人たちから、この選択は正しいと認められるだろうか」という不安が、顧客の頭をよぎることがあります。特に高額な買い物や珍しい商品を購入する際には、こうした社会的なプレッシャーが顧客の購買意思を左右します。

これは、家や車といった社会生活をする上で象徴となるものには特に顕著に現れやすいです。周囲からの評価を気にしている顧客は、商品の機能や価格以上に、その選択が他人にどう見られるかに重きを置くことがあり、最終的な購入判断が感情的な要素に大きく左右されることがあります。

感情的な反応による購入躊躇

高額な商品に対する感情的な反応として、「これは私には高すぎる」「必要なものかどうか不安」という感覚がしばしば生まれます。これは、たとえ商品が理論的に「お得」であったり「価値がある」と説明されても、感情的に納得できていないと顧客が購入に踏み切れないという状態です

特に、感情的に「高すぎる」と感じてしまうと、いくら数値や理論で「安い」「お得」と言われても、それが頭に入らず、結果的に購買が避けられることが多いです。営業担当者としては、まず顧客が抱いている感情的なハードルをしっかり理解し、それを尊重するアプローチが重要です。

パラリシス(麻痺)状態に陥る

さらに、理論的に完璧な計画を立てようとすると、逆に「決断できない」という状況に陥ることがあります。高額な商品ほど、購入前に多くの情報を収集し、すべてを計画しようとするため、情報過多によって顧客が迷いすぎてしまうことがあります。これは「分析麻痺」とも呼ばれ、選択肢が多すぎると、顧客がどれが最良の選択か判断できなくなり、最終的には何も決断しないという結果を招くことがあります。

たとえば、顧客が家を購入する際に、数多くの物件を見過ぎてしまい、どれが本当に自分に合っているのかが分からなくなり、結局選べない、というケースです。こうした状況に対処するためには、営業担当者がその都度一つひとつの選択肢を整理し、顧客の優先順位を明確にするサポートが重要です

 

リフレーミング:別の視点で顧客の感情を動かす

顧客が理性と感情の狭間で悩んでいる時、営業側の対応として有効な手法が「リフレーミング」です。これは、顧客が抱える不安や疑念を、別の視点から解釈し直すことで、その感情に新しい意味を与え、行動を促すアプローチです

高額商品や重要な決断を伴う場面では、顧客が「失敗を避けたい」「後悔したくない」という感情を強く持ちがちですが、リフレーミングを活用することで、顧客の感情をポジティブに変化させ、購買行動へとつなげることができます。

前向きな意味づけを行う

リフレーミングの基本は、まず顧客が抱いている不安や恐怖をしっかりと認め、共感を示すことから始まります。顧客が「高すぎる」と感じている場合や、「後悔するかもしれない」と心配している場合、その感情を軽視することなく、逆にそれを価値の証としてリフレーミングすることが効果的です。

たとえば

「この家電を使って短時間で健康的な食事を作ることができれば、家族と一緒に食卓を囲む時間が増え、その時間が家族の絆を強める機会なるかもしれません。家事に対するストレスも軽減され、より心に余裕が持てそうですね」

「確かに、新品は中古商品と比べると高いですし贅沢かもしれませんが、これまでお仕事を頑張って来られたご自身へのご褒美として贈るのも良いかもしれませんね」

といった形で、顧客の不安を前向きな再解釈へ変えることができます。

リフレーミングを成功させるためには、顧客の感情に寄り添いながら、現実的かつポジティブな選択肢を提供することが重要です。これにより、顧客は感情的な不安を和らげつつ、理性に基づいた判断をしやすくなります。 

 

損失回避バイアスを逆手に取るリフレーミング

前章で述べた損失回避バイアスは、顧客が「利益よりも損失を避けたい」と感じる強い感情を示すものです。これは営業において障害となることが多いですが、リフレーミングを活用すれば逆にこのバイアスを利用して購買行動を促すことが可能です。

例えば、顧客が「高すぎる」と感じて購入をためらっている場合、次のようにリフレーミングすることができます。

「確かに、この商品は初期費用が高いですが、購入後に追加でコストがかかる商品ではありません。他の安価な選択肢では、後々に追加コストがかかる可能性が高く、長期的には50万円程度のコスト増になる可能性があります。ですから、長期的に見ると、この価格は先行投資だと考えることができます。」

このように、「将来的な損失を回避するための投資である」という選択肢として商品価値を再解釈することで、顧客は今すぐの損失を恐れるよりも、将来のリスクを避けるために「今」行動する必要があると感じるようになります。ここで重要なのは、顧客にとって長期的に安心感を得られることを示すことです。

顧客の不安を和らげる具体的な対応策を提示

リフレーミングを行う際には、抽象的な理論だけでなく、顧客が具体的にどのように不安を解消できるかを提示することも重要です。

たとえば、返金保証やアフターサポートを提示することは、顧客の不安を和らげるための有効な手段です。しかし、この手法を誤って使用すると、顧客に対して押し売り感を与えてしまうリスクもあります。

そこで、次のように顧客の不安に寄り添い、控えめにオファーを提示することが大切です。

「ご心配な点も理解できますので、もし商品がご期待に沿わなかった場合は、全額返金の保証も設けています。これは、私たちがこの商品に自信を持っているからこその提案ですので、どうぞご安心ください。」

「この商品を購入していただいた後も、もし何か気になる点がございましたら、いつでもサポートいたします。長期的に安心してご使用いただけるよう、私たちはしっかりとフォローさせていただきます。」

このように、リスクを減らしながらも強引な印象を与えないオファーの提示が、顧客の心に余裕を持たせ、前向きな決断を後押しするのです。

営業マンとして常に頭に置いておかなければいけないこととして、顧客が最も恐れることの一つは購入後に「後悔」することだ、ということです。高額な商品やサービスを購入した場合、特に「もし期待通りでなかったらどうしよう」といった感情が強くなります。このような不安を和らげるためには、顧客をしっかりサポートする姿勢を見せることが有効です。

顧客は自分が一人でリスクを背負うわけではないと感じることができ、安心して購入を決断することができます。長期的な視野で後悔しないための具体的な支援を示すことで、顧客はリスクを感じることなく、安心して商品を選べるのです。

理屈っぽくなりがちな営業マンが陥る「理論偏重」の罠

特に理系的な思考を持つ営業マンは、製品の技術的な優位性や数値データを強調することが多く、その説明自体には間違いはありません。

しかし、問題は「理屈だけでは顧客の心が動かない」という点にあります。購買行動には、データや理論だけでなく、感情の動きが大きな影響を与えます。もし営業マンが顧客の感情面に十分な注意を払わなければ、どれだけ優れた製品や商品提案であったとしても、いざ意思決定の淵に立った顧客は「なぜ買うべきか」ではなく、「今、買うべきではない理由」を考え始めます。

「数字が示すメリット」だけでは足りない理由

営業マンが「この商品は月1万円の費用削減が見込めます」といった論理的な説明に頼る場合、特に高額商品や長期間使用する製品では顧客が感じる不安が解消されないことがあります。

なぜなら、顧客の頭の中には不安や恐れが根付いているためです。数字が正しくても、購入後の自分の生活がどう変わるかが想像できなければ、「本当に、今、買うべきか?」という疑問が残り続けてしまうのです。

例えば、自動車を販売する営業マンが「この車は2年前の車種に比べて燃費が15%向上しました」と説明しても、顧客は「それは分かったけど、果たしてこの車に乗ることが本当に私のライフスタイルに合うのか?」という感情的な不安を抱えているかもしれません。

これは、理論だけでは顧客の個別の生活や感情をカバーしきれない典型的なケースです。

顧客の感情的な不安を聞き出す方法

感情面を無視して理論だけで進めようとすると、顧客は話に参加していないように感じます。そこで、営業マンがやるべきことは、まず顧客がどのような不安や懸念を抱いているのかを、しっかりと引き出すことです。

具体的には、次のような質問を通じて感情面に踏み込むことが必要です。

  • 「この商品について何かご不安な点はありますか?」
  • 「実際にご使用になったときのことを考えた際、どんなことが心配になりますか?」
  • 「Aの物件と比較したとき、どこが一番気になるポイントですか?」

これらの質問により、顧客が抱えている本当の不安を浮き彫りにすることができます。たとえば、顧客が「高すぎる」という懸念を抱えている場合、それは価格自体の問題ではなく、購入後にその製品が本当に自分にとって価値あるものかどうかを確信できないからかもしれません。

感情面を刺激しつつ、安心感を提供する

顧客の感情的な不安を把握したら、次に重要なのは、その不安を解消するための具体的なアプローチです。

ここで大切なのは、理屈っぽい説明をするのではなく、顧客の不安に寄り添いながら、共感と安心感を提供することです。たとえば次のようなアプローチが有効です。

「たしかに高額な投資ですね。先月ご購入いただいたお客様も最初は同じように迷っていらっしゃいました。しかし、最終的には『妻がこれを手に持った時に嬉しそうにしていたから』と、奥様の喜ばれる姿が決め手だったようです。結果として、家計に余裕が生まれたので、この機会に車も乗り換えられて、新生活を満喫されていらっしゃいました。」

このように、他の顧客の体験談を引用することで、購入後のポジティブな体験を具体的にイメージさせることができます。

顧客が購入後に安心できる要素を強調し、前章で記したような保証やアフタサポートなども適切に伝えることで、顧客が抱える「もし後悔したら?」という不安を軽減することができるでしょう。

表面的に顧客が「高い」と感じるものであっても、単に価格を下げるような交渉に持ち込むのではなく、長期的なメリットや価値を強調することで、価格や不安への抵抗感を緩和します。感情的な側面をしっかりと押さえつつ、理論的な説明を組み合わせることで、顧客が安心して購買決定を下せるようになるのです。

 

まとめ

ここまでお伝えしてきたように、営業マンがリフレーミングを使って顧客の感情に働きかけることで、より高い成果が期待できます。リフレーミングのステップを簡単にまとめると以下の通りになります。

ステップ1:顧客の不安を特定する

顧客が何に不安を感じているのかを質問や対話を通じて明確にします。価格が高い、投資額が大きい、将来のリスクが心配など、具体的な懸念点を引き出します。

ステップ2:その不安を新しい視点で解釈する

不安を取り除き、別の価値を提供するためにリフレーミングを行います。「この価格は高いが、長期的に見れば大きな利益をもたらす投資」というように、新しい価値観を提示します。

ステップ3:感情に訴求する新しいイメージを作る

その商品やサービスが顧客にどういった感情的な利益をもたらすのかを強調します。単に機能を説明するのではなく、「これを選ぶことで得られる安心感や喜び」など、感情面に焦点を当てます。

 

最終的に、営業の成功は理性と感情のバランスをどれだけうまく取るかにかかっています。特に高額商品の販売においては、リフレーミングを活用することで顧客の感情的な障壁を取り除き、理屈だけではカバーできない部分を感情で補うことが重要です。

明日の接客においても、顧客が抱えている不安や疑問をリフレーミングし、新たな視点を提供することで、営業の成果を飛躍的に向上させることができるでしょう。

この記事の著者

関根 悠太

株式会社Re-Branding 代表取締役
  
中小企業の利益を増やす:営業コンサルタント
AIには真似できない:ブランディングクリエイター
  
1990年生まれ、福島県出身。大学中退後、10業種以上にわたる多彩なキャリアを積み、現場経験を通じて培った問題解決力を武器に2023年に株式会社Re-Brandingを設立。
 
「パートナー型コンサルティング」の手法を用いて、クライアント企業と深い信頼関係を築き、持続的な成長を支援。独自の「眼前可視化」というコンサル技術を駆使し、クライアントが自らの課題の本質を理解し、納得のいく解決策を導き出すプロセスに定評がある。
 
従来のコンサルの枠を超え、クライアント企業やチームの一員として深く関わることで、買取店を出店10ヶ月で売上1億超、60万円の講座販売成約率が70%超、ミスコン世界大会でグランプリ獲得、不動産会社の離職率を40%減少させ採用育成費を2000万円削減するなどの成果を創出している。

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