「100%条件を満たす物件はない」は、本当に正しいのか?【不動産売買仲介営業】
不動産売買仲介の営業現場にいると、一度は耳にしたことがある言葉があります。
「100%条件を満たす物件なんてありませんよ。」
「どこかは妥協しないといけません。」
一見すると、現実的で正しいアドバイスのように聞こえます。
しかし、私は新人営業マンにこの言葉だけは使わないよう伝えています。
なぜなら、この一言は、お客様の希望を整理するどころか、「諦めること」を勧めてしまう言葉だからです。
営業の仕事は、お客様に妥協をさせることではありません。
「この家で良かった」と思える100点の住まいを、一緒に見つけることです。
今回は、不動産売買仲介営業の現場でよく起こり得る「100%条件を満たした物件はない」ということについて深掘りしていきます。
「妥協してください」と言われて嬉しい人はいない
少し立場を変えて考えてみてください。
もし、あなたが家を探していて、営業マンからこう言われたらどう感じるでしょうか。
「100%条件を満たす物件なんてありません。」
「どこかは妥協してください。」
「そういうものなのか。」
と納得する人もいるかもしれません。
しかし、心のどこかでは、
「結局、希望は叶わないんだな。」
そんな気持ちになってしまうのではないでしょうか。
一方で、こんな営業マンがいたらどうでしょう。
「お気持ちはよく分かります。ただ、私はできれば妥協してほしいとは思っていません。一緒に100点だと思える物件を探していきましょう!」
同じ物件を紹介していたとしても、受ける印象はまったく違います。
不動産売買仲介の営業マンが売っているのは、物件だけではありません。
お客様の未来への期待や安心感も提供しているのです。

「100%条件を満たす物件」ではなく、「合計で100点の物件」を探す
ここで大切なのは、考え方を少し変えることです。
確かに、希望条件を一つひとつ並べれば、すべて満たす100%希望通りの物件は簡単には見つからないかもしれません。
しかし!それは
「100点の物件が存在しない」
という意味ではありません。
総合的な価値として考えてみると、見え方は変わります。
例えば、
- 駅から遠い
- 築年数が少し古い
このようなマイナス要素があったとしても、
- 広いリビング
- 希望エリア
- 広い庭
- 駐車場2台
- 子育てしやすい住環境
こうした魅力が、それを大きく上回ることもあります。
人は、単純に条件の数だけで満足するわけではありません。
マイナスを上回る大きな価値があれば、その家は「100点」と感じられるのです。


私たちも人生で「妥協」して生きているのだろうか?
この考え方は、家探しだけではありません。
例えば、結婚相手にも当てはまるかもしれません。
誰にでも「短所」と呼ばれるところはあります。
趣味も価値観も、自分と100%一致する人は、なかなかいないでしょう。
だからといって、
「70点の人だから結婚しました。」
そう考える人はほとんどいません。
多少、相手の気になる部分があったとしても、
それ以上に一緒に過ごしたい理由があり、
この人と一緒にいると幸せだと思える価値があるから結婚するはずです。
仕事もそうです。
趣味もそうです。
友人もそうです。
人は欠点がないものを選んでいるのではなく、
欠点を上回る魅力があるものを選んでいます。

住宅購入においてもまったく同じ考えです。
営業は「マイナス」を説明する仕事ではない
例えば駅から少し離れた物件があったとします。
同じ物件でも、営業マンによって伝え方は大きく変わります。
ある営業マンは、
「駅から少し離れているので、その点は妥協するしかないすね。」
と言います。
一方で、別の営業マンはこう伝えます。
「駅から少し距離があるからこそ、この静かな住環境や広い土地を手に入れることができました。この距離だからこそ出会えた家なんです。」
物件は同じです。
変わったのは伝え方だけです。
営業マンは相場を変えることはできません。
駅を近づけることもできません。
土地を広げることもできません。
しかし、
お客様がその物件をどう受け止めるかは変えることができます。

ここに、真なる不動産売買仲介の営業マンの提案力があると思います。
予算という「枠」の中で100点をつくる
ここで忘れてはいけないのが、物件の予算です。
以前の記事でもお伝えしたように、予算を決める目的は、お客様を縛るためではありません。
迷わず、自分たちに合った選択をするための基準をつくることです。https://note.com/embed/notes/nb51a1bb28f8a
そして、予算が決まっているからこそ、
「何を優先し、どこに価値を感じるか」
を整理することができます。
不動産仲介営業の仕事は、
予算を超えて理想を追いかけることではありません。
限られた予算の中で、
どうすれば100点になる組み合わせを一緒に見つけられるか。
そこを提案することです。
「100点」を超えるために、予算を上げてはいけない
ここは非常に重要な考え方です。
不動産売買仲介の営業マンとして絶対に忘れてはいけない原則があります。
それは、
100点以上を目指して、無理に予算を上げないこと。
なぜなら、
100点とは、
「安心して支払い続けられる予算」を前提とした100点、だからです。
もし予算を大きく上げてしまい、
住宅ローンの返済に追われ、家族旅行にも行けず、
子どもの教育費にも不安を抱える生活になったらどうでしょう。
その家は、本当に100点と言えるでしょうか。
ついつい営業マンは、契約を取ること、住宅を購入いただくことをゴールとしがちですが、お客様にとって家を買うことがゴールになっている人はいません。
その後も安心して暮らし続けられることが、本当の成功であり、住宅購入の目的です。
だから営業マンは、
「もう少し予算を上げれば理想に近づきます。」
ではなく、
「安心して暮らせる範囲で、一番満足できる住まいを一緒に探しましょう。」
と言える存在であるべきなのです。

最後に
私たちは、不動産業界に属する、いち営業マンです。
相場を変えることはできません。
物件そのものを変えることもできません。
他社も、私たちも、紹介できる物件は基本的に同じです。
だからこそ差が生まれるのは、
「何を紹介するか」ではなく、「どう伝えるか」です。
「100%条件を満たす物件なんてありません。」
そう言って、お客様に諦めてもらう営業になるのか。
それとも、
「一緒に100点の住まいを見つけましょう。」
そう言って、お客様を前向きな気持ちにできる営業になるのか。
選ばれる営業マンは、後者です。
営業の価値は、条件を並べることではありません。
同じ物件でも、お客様が「この家で良かった」と思える未来を提案すること。
その提案力こそが、営業マンにとって最大の武器になると思っています。

