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不動産売買仲介の営業マンが“返答に困る言葉”の正体とは?

#コミュニケーション#不動産仲介#営業

「何て言葉を返せばいいですか?」
と悩む営業マンが見落としていること・・・

 

【第1章】営業マンは「何を返すか」を考えている

今回の記事を書くきっかけになったのは、
3年間蓄積してきた不動産売買仲介の営業マン達の日報です。

私は不動産売買仲介の営業研修を行っていますが、
その中で営業マンたちに、

「お客様から言われて返答に困った言葉」

を記録してもらっていました。

すると、

  • 「今は急いでいない」
  • 「もう少し他も見たい」
  • 「親に相談します」
  • 「事前審査は後でいいです」
  • 「個人情報は言いたくありません」

など、本当にたくさんの言葉が集まりました。

数だけで言えば数百件あります。
どれも実際にお客様が発した言葉です。

そして、それに対して営業マンは、
「何て返せばよかったんだろう…?」
と悩んでいました。

最初は私も、お客様ごとに個別の問題が起きていると思っていました。

しかし、何十人、何百人分と見ていくうちに、あることに気づきました。

営業マンは、お客様ごとにそれぞれ違う問題だと思っている。
でも実際は、そうではない。

多くの営業マンが、同じところでつまずいているんです。


営業マンは「返答」を探している

例えば、

お客様からこう言われる。

「今は急いでないんですよね」

すると営業マンは考えます。

  • どう切り返そう。
  • 何て言えば前に進むだろう。
  • 急いでいない理由を聞こうか。
  • 今買うメリットを伝えようか。
  • 相場が上がっている話をしようか。

また別なお客様からは

「もう少し他も見たいです」

と言われます。そこで営業マンは考えます。

  • 何て返そう。
  • この物件の希少性を伝えるべきか。
  • 今まで見た物件との違いを説明するべきか。
  • 売れてしまうリスクを伝えるべきか。

さらに別のお客様からは

「事前審査は後でいいです」

そして営業マンは考えます。

  • 事前審査の重要性を説明しよう。
  • ローン特約の話をしよう。
  • 住宅ローンの仕組みを説明しよう。

つまり営業マンは、
いや、売れない営業マンは

常に

「何を返すか」

を考えている。


それは悪くない、でも・・・

返答を考えること、これ自体は決して悪いことではありません。

むしろ真面目です。営業として熱心です。
向上心があります。

だからこそ、営業研修でもよく質問されます。

  • 「こう言われたら何て返しますか?」
  • 「こう言われたらどう切り返しますか?」
  • 「こう言われたらどう説得しますか?」

実際、現場でもよくあります。

そして、営業マンが提出した日報や相談内容を見ても、
ほとんどが同じです。

  • 「今は急いでないと言われました」
  • 「他も見たいと言われました」
  • 「親に相談すると言われました」
  • 「事前審査は後でいいと言われました」
  • 「ピンと来ないと言われました」

そして営業マンは「返答」を探します。


本当に困っているのは返答なのか?

でもここで一つ、立ち止まって考えてみてほしいんです。

本当に営業マンが困っているのは、お客様から言われたことに対する「返答」なのでしょうか。

例えば、あなたがお客様から

「今は急いでないです」

と言われたとします。

では、ここで質問です。

そのお客様は、なぜ急いでいないのでしょうか?

返答に詰まる人のほとんどが、これを答えられません。
なぜなら、お客様に聞いていないからです。


営業マンの頭の中では、お客様から言われた・聞かれた言葉に対して
すでに次の思考が始まっています。

  • どう返そう?
  • 何て言おう?
  • どう説得しよう?
  • どうやって前に進めよう?

つまり、お客様の言葉を
「理解する前」に「対応しよう」
としているんです。


同じ言葉でも意味は違う

例えば、

「今は急いでないです」

という言葉ひとつとっても、
その背景や中身は全く違うかもしれません。

  • ある人は、本当に急いでいない。
  • ある人は、ローンが怖いだけ。
  • ある人は、奥様が乗り気じゃない。
  • ある人は、今買う理由が分からない。
  • ある人は、実は他社で検討している。
  • ある人は、単純に決断が苦手。

でも営業マンは、全部まとめて

「急いでないと言われた」

として処理してしまう。


だから返答がズレる

背景も内容も違う言葉かもしれないのに、
その場で取ってつけたような返答をしても、
全くもって、相手に刺さるハズがないのです。

ローンが怖い人に、相場の話をしても意味がない。
奥様が反対している人に、物件の魅力を伝えても意味がない。
今買う理由がない人に、値上がりの話をしても意味がない。

つまり、

返答が悪いのではなく、
そもそもお客様の問題を特定できていないんです。


お客様の言葉は「症状」である

これを医者に例えると分かりやすいでしょう。

患者さんが来て、

「頭が痛いです」

と言った瞬間に、薬を渡す医者はいません。
まず聞きます。

  • いつからですか?
  • どこが痛いですか?
  • 熱はありますか?
  • 他に症状はありますか?

なぜなら、頭痛という言葉だけでは、
原因が分からないからです。

  • 風邪かもしれない。
  • 偏頭痛かもしれない。
  • 脳の病気かもしれない。
  • 睡眠不足かもしれない。

原因によって、対処法が全く変わる。

営業も同じです。
お客様の言葉は、ある種、「症状」です。

本当の原因は、その言葉の奥にあります。


営業マンが見るべきもの

でも新人営業マンほど、症状に反応してしまう。
だから、切り返しの言葉を覚えようとする。

しかし、現場で真に必要なのは、
症状に反応した切り返しではありません。

「その言葉の奥に何があるのか」

を考えること、聞くこと、想像することです。


実は今回集まった何百件もの
「返答に困った言葉」も
よく見ていくと、ある共通点があります。

一見バラバラに見えた悩みのほとんどが、
実は5つのパターンに集約されていました。

次章では、
営業マンが詰まった言葉の正体を整理しながら、
お客様が本当に悩んでいることを見ていきます。


【第2章】詰まる言葉は、実は5種類しかない

第1章では、営業マンは「何を返すか」を考えている。
でも本当に見るべきは、言葉の奥にある理由だ。

という話をしました。

では実際に、3年間で集まった
「お客様に言われて返答に困った言葉」
を分類してみるとどうなったのか。

私っは最初は、それらの言葉は
100種類以上あると思っていました。

お客様は一人ひとり違う。
悩みも違う。
状況も違う。

だから営業マンが困る理由も、
全部バラバラだと思っていたんです。

しかし、
何百件もの日報を整理していくと、
意外なことが分かりました。

一見バラバラに見える言葉の多くが、
実は5つのパターンに集約されていたのです。

実際の言葉と共に深めていきましょう。


パターン① 今買う理由がない

「今は急いで探していないんです」
「無くなったらまた探すからいいよ」
「無ければ、良い物件が出るまで待ちます」
「売れちゃった時は縁がなかったってことですよね」
「急いではないしずっと賃貸で行く事も考えてる」
「物件がなかったらないで購入しなくても良い」
「即決するタイプじゃないから売れたら自分たちの買う物件じゃないって諦めるから大丈夫」
「物件に対して懸念点はないが、即決できるほど気に入ってはないので、一回持ち帰りたい」
「今物件の価格が上がっているので落ち着いたらまた考える」

こう言われると、営業マンは考えます。

  • 今買うメリットを伝えよう
  • 相場が上がり続けている話をしよう
  • 良い物件は無くなると伝えよう

とにかく、今買った方がいい方向へ導こうとするでしょう。

でも本質はそこではありません。

このお客様は、
家を買わない理由があるのではなく、
家を買う理由が固まっていない状態です。

まだ、大きな決断をできるだけの状態になっていない。

購入という行動を起こすだけの動機や優先順位が、
まだ整理されていない。

だから動けないし、動かない。

この状況において営業マンが見るべきなのは、
「なぜ今買わないのか?」
ではなく、

「何があれば家を買おうと思えるのか?」
「今買う理由は何なのか?」
なんです。


営業マンはお客様が物件を探していると思いがちですが
実際は、半分正解で半分違うと私は考えています。

実際、お客様が探しているのは、
「家を買う理由」
だったりします。

口では「欲しい」とは言いつつ
本当は、まだ買う意欲が100%になっていないケースは多いです。

だから、
どれだけ物件を紹介しても、
買う理由が固まっていない人は決まりません。

逆に、
買う理由が明確な人は、決断します。

だからこのタイプのお客様に対して、
営業マンが見るべきなのは、物件ではありません。

「今買う理由」です。

もっと言えば、

・なぜ家を探し始めたのか?
・なぜ賃貸ではダメなのか?
・本当はどんな暮らしがしたいのか?
・何を手に入れたいのか?
・何を避けたいのか?

そこを整理していく必要があります。


パターン② 比較したい・判断基準がない

これも代表的です。

「もっと他も見たい」
「どの物件も良い物件でしたね」
「正直、この物件にはピンと来ない」
「さっきの物件と今の物件、どっちもどっちかな」
「色々見てから決めたいし、そんなに焦っていない」
「今まで見た中で1番いいと思ったけどもう少し他の物件もみたい」
「たとえ今良い物件があってもいろんな物件を見て回らないと最終的な購入の判断はできない」
「この物件しかないし、気に入ってるけど、言語化できない何かがある気がする」

例えば、
・今まで見た中で一番良い
・本人もそう言っている
・営業マンもそう感じている

それでも、
「もう少し見たい」
と言われる…

こうなると営業マンは、
「まだ見る物件数が足りないのか」
とも思いがちです。

だから、

  • 別の物件を紹介しようとする。
  • もっと条件に合いそうな物件を探そうとする。
  • この物件の希少性を伝えようとする。
  • 売れてしまうリスクを伝えようとする。

でも実は、
ここで起きている問題は、
物件の問題ではないことが多いんです。


例えば家電量販店に行ったとします。

テレビを10台見ました。
20台見ました。
30台見ました。

では30台見れば決められるでしょうか?
必ずしもそうではありません。

なぜなら、

比較する基準がなければ、
何台見ても決められないからです。

家探しも同じです。
物件を見れば見るほど決められる人もいます。

でも、
比較基準がない人は、
10件見ても決められない。
20件見ても決められない。

むしろ迷いが増えることもあります。

だから、明確な比較軸を持たずに迷った挙句
「ピンと来ない」という、
酷く曖昧な言葉で片付けられてしまったりするのです。


実は、比較できない人ほど、
我々が想像する「比較」をしていなかったりします。

実際は比較ではなく、
「安心材料」を探しているだけのケースも多いです。

お客様が本当に知りたいのは、
「この物件が良いかどうか」
ではなく、
「この物件に決めても後悔しないか」
である場合が多いからです。

ここでいう比較とは、
AとBをただ並べて、比べることではありません。
AとBを評価する基準を持つ、ということです。

例えば、

駅距離を重視するのか、広さを重視するのか。
学区を重視するのか、予算内の新築を優先するのか。
親の意見を重視するのか、子供の意見を重視するのか。

その優先順位が決まっていない。
だから比較できない。
比較できないから決められない。

この基準がないと、どんな物件を見ても
「どっちも良いですね〜」
のような言葉で終わります。

つまり、「他も見たい」という類の言葉が出てきた時に
この場面で営業マンが考えるべきことは、
「あと何件見せるか?」
ではありません。

目を向けるべきは、
お客様が何を基準に判断しようとしているのか?
ここです。


パターン③ 信用が足りない

もはやもうなると、どんな言葉を返しても難しくなるので
そもそも最初から信用を積み上げ続ける必要はありますが
代表的な言葉はこちら。

「個人情報教えたくありません」 
「名前は教えたくありません」
「予定は教えられない」
「条件は言いたくないです」
「詳細について教える義理はない」
「喋る必要がありますか?」
「予算や、事前審査や、エリアはプライバシーだから教えない」
「個人的なことなので、そこまで踏み込まないでほしい」

こう言われた営業マンは、
どうやって聞き出そうかを考えます。

でも、お客様の立場で考えてみてください。

会ったばかりの人に、
年収や貯金額や借入状況
自分の予定や、希望する条件を
易々と話したいでしょうか?

普通は話したくありません。

だから、
お客様がおかしいのではなく、
むしろ自然な反応なんです。


ここで大事な視点は
お客様が拒否しているのは
あなたの質問ではないんです。

問題は、信頼関係構築の前に
重要な個人情報に関する質問に入っている。
個人情報に踏み込もうとしていることです。

お客様からすると、
まだ信用していない相手から
個人情報だけ聞かれている状態になると
警戒心はさらに強くなります。

ここで必要なのは、
「どう切り返そうか」という質問力ではなく、
信頼を増やすことです。


例えば、
「なぜその質問をするのか?」
それを先に伝えるだけでも変わります。

「ご予算を聞きたいんです」
ではなく、

「無理のない資金計画をご提案したいので、差し支えない範囲で教えていただけますか?」
この方が自然です。

「ご家族構成を教えてください」
ではなく、

「お住まいになった後の生活をイメージしたいので、お聞きしてもよろしいですか?」
の方が受け取り方は変わります。

つまり、
お客様が拒否しているのは、
質問そのものではありません。

質問の意図が分からないこと。

そして、

質問している相手をまだ信用できていないこと。

だから、信用が足りないことによる
お客様から拒否される言葉を受けた際の本質は、

単なる個人情報拒否ではなく、信頼不足です。

そして信頼不足を、
質問テクニックで解決しようとすると苦しくなります。

営業マンが見るべきなのは、
「どう聞くか」ではなく、

「なぜこの人はまだ自分を信用できていないのか?」
ここに目を向ける必要があるです。


パターン④ 購入プロセスに納得していない

信用が足りないにも紐付いて来ますが、
営業マンが特に詰まっていたのが事前審査や住宅ローンに関するやり取りです。

「自信ないので事前は怖いです」
「事前審査は自分で家でやります」
「自分でSBI銀行に住宅ローンの相談しています」
「CICなんて取らなくても事前審査したら通るかわかる」
「通らないわけないので事前審査は物件見つけてからでいいです」
「知り合いにやってもらうから今日は審査までやらなくて良いかな」
「そこまで急いでいないし。買う家も決まってないから審査はやらなくても良い」

こうした言葉です。

営業マン側からすると、

「なぜ事前審査を嫌がるんだろう」

と思います。

そして、
事前審査の重要性を説明しようとする。
団体信用生命保険の話をする。
事前審査を通しておいた方が有利だと説明する。

でも、それでも前に進まない。
なぜでしょうか?

それは、お客様が拒否しているのは事前審査そのものではないからです。


営業マンは、
「事前審査を断られた」
と捉えます。

でもお客様の頭の中は違います。

お客様は、
「なぜ今それをやる必要があるのか分からない」
だけかもしれません。

まだ物件も決まっていない。
購入するかも決めていない。
住宅ローンのイメージも湧いていない。

そんな状態で、
「まず事前審査をしましょう」
と言われても、

お客様からすると、

「え、まだそこまで考えてないんだけど」

なんです。


営業マンは毎日にように住宅購入に関する情報に触れています。

だから、
事前審査の重要性が分かっています。
住宅購入の流れも分かっています。

しかしお客様は違います。

住宅購入は人生で数回しか経験しません。
初めての人も多いです。

つまり、
営業マンから見れば当たり前のプロセスも、
お客様からすると当たり前ではないんです。

だから営業マンが見るべきなのは、
事前審査をやるか、やらないかではありません。

見るべきなのは、

「なぜそのプロセスに納得できていないのか」

です。

  • 必要性が分からないのか
  • タイミングに違和感があるのか
  • なぜ自分でやりたいのか

ここを整理しない限り、
どれだけ事前審査の重要性を説明しても前には進みません。


パターン⑤ 本当の決裁者が別にいる

「親に相談しないといけない」
「知り合いの不動産に聞いてから決める」
「子供が出来てから購入したら?と親に言われた」
「私は買いたいけど、息子に決定権がある」
「妻が言ってるからきただけで、僕は家を買いたいとは思ってない」

新人営業マンほど、

「親に相談するなら仕方ない」
「奥様が決めるなら仕方ない」
「知り合いの不動産屋がいるなら仕方ない」

と考えてしまいます。
でも、本当にそうでしょうか。

営業マンの目の前にお客様は、
1人、2人だけを見ています。

でも実際には、家を買うという意思決定は、
その人だけで完結しないことがほとんどです。

夫婦。親。子供。親戚。知人。友人。

ひょっとしたら、最近だと
なんでも相談できるAIもこの対象に含まれるかもしれません。

とにかく、様々な人や要素が関わります。

つまり、営業マンが説得すべき相手は、
目の前のお客様だけではないのです。

本当の決裁者が見えていなければ、
どれだけ説明しても前に進みません。


例えば、目の前にご主人がいる。
だから営業マンは、ご主人に向かって一生懸命、
物件予算・住宅ローン・周辺環境…について説明します。

しかし家に帰った後、奥様が一言。

「私はあんまりあの物件、好きじゃないな」

たったこの一言だけで、全ての話が終わることがあります。


営業マンからすると「えっ?」という感じですが、
最初から奥様の意見は重要だった。

ただ営業マンが、そこに気づいていなかっただけというケースは多いです。


営業マンは案内中の2〜3時間だけを見がちで
目の前にいる時に十分に検討してくれているように見えますが

お客様の意思決定は、
案内が終わった後に、密かに、始まります。

  • 帰宅後に、夫婦で話し合う。
  • 親に電話する。
  • LINEで写真を送る。
  • 知り合いに相談する。

ここで話が一気に変わってしまうのです。

だから、ここで重要なのは、
「親に相談します」
への切り返しを覚えることではありません。

大事なのは、その相談相手が意思決定に
どれくらい影響するのかを把握することです。

例えば、

・奥様はどう考えているのか
・ご主人は本当に購入したいのか
・親御さんはどこまで関与するのか
・他社にも相談しているのか
・知り合いの不動産屋からは何と聞いているのか

ここを理解しないまま進めると、
営業マンは目の前のお客様だけを相手にしているつもりで、
実際には見えていない決裁者に負けることになります。

営業マンからすると、

・順調だった…
・感触も良かった…
・物件は気に入っていた…
・だから決まると思っていた…

ところが翌日、

「親と相談した結果、今回は見送ります」
「妻が反対しているのでやめます」
「知り合いの不動産屋にお願いすることになりました」

と言われる。

そして営業マンは、「なぜ?」となる。

でも実際は突然起こったことではありません。
最初からその人たちは、別に決裁者が存在していたのです。

ただ、営業マンがその存在を見えていなかっただけなんです。

本当の決裁者の意見がどれほど重要で
当人たちにどれほどの影響を与えるのかを
営業マンは常に把握しておく必要があること
覚えておきましょう。


【第3章】営業の仕事は「返答」ではなく「意思決定支援」

ここまで読んでいただいた方なら、
もうお気づきかもしれません。

第2章で見た5つのパターン。

あれらは、
お客様が営業マンを困らせようとして言っている言葉ではありません。

お客様自身が迷っている、困惑している中で出てきた言葉です。

「今は急いでいない」
「他も見たい」
「親に相談します」
「事前審査は後でいい」
「個人情報は言いたくない」

どれも、お客様の中にある迷いや不安、
整理できていない何かが言葉として出てきているだけです。

でも営業マンは、
その言葉を聞いた瞬間に反応してしまいます。

「今は急いでいない」

今買うメリットを伝えよう

「他も見たい」

物件の希少性を伝えよう

「親に相談します」

どうやって今日決めてもらおう

「事前審査は後でいい」

事前審査の重要性を説明しよう

こうして、
相手の言葉を理解する前に、返答を探し始めます。

第1章でもお伝えしたように、
営業マンは、「何を返すか」を考えているんです。

それ自体は悪いことではないですが・・・


なぜ反応してしまうのか

理由はシンプルです。

契約を取りたいからです。

当然ですが営業マンは、
契約に繋がる方向へ話を進めたい。
前に進めたい。
停滞させたくない。

だから、
お客様の言葉を聞いた瞬間に、

「どう返せば前に進むだろう」

を考えてしまうんです。

もちろん、
それ自体は悪いことではありません。
真面目です。熱心です。

売上を上げたい。
お客様を契約まで導きたい。

その気持ちは大切です。

ただ、そこで一つ問題があります。


あなたはまだ営業の猛者ではない

少し厳しい現実を言います。

新人営業マンほど、
気の利いた一言を探します。
正解の切り返しを探します。
魔法の言葉があると思っています。

でも、
もし相手の問題を理解していないなら、

その返答は、当たるでしょうか・・・?
的を得た回答になるでしょうか・・・?

おそらく、かなりの確率で外れます。

なぜなら、お客様の問題を
正確に把握・理解していないからです。

ローンが不安な人に、
相場上昇の話をしているかもしれない。

奥様が反対している人に、
物件の魅力を説明しているかもしれない。

判断基準がない人に、
さらに物件を紹介しているかもしれない。

信頼関係が築けていない人に、
もっと踏み込んだ質問をしているかもしれない。

本人は良かれと思って話している。
前に進めようと思って切り返してる。
こうした方がいいと習ったから伝える。

でも、お客様からすると、

「この人、私の話を聞いていないな」

になることがあります。

そして、お客様にとっての的外れな説明は、
時として信頼を失います。


だから「返答集」では限界がある

もし営業が、
言われた言葉に対する返答ゲームなら、
返答集を暗記すれば終わりです。

でも現実は違います。

同じ「他も見たい」でも、
お客様によって意味が違う。

同じ「今は急いでいない」でも、
背景が違う。

だから、返答を覚えるだけでは限界がある。

大事なのは、
その言葉の奥にある
「何を決められていないのか?」
を見ることです。


だから先に理解する

営業マンがやるべきことは、
まず返答することではありません。

相手を理解することです。

なぜ急いでいないのか?
なぜ他も見たいと思うのか?
なぜ事前審査を嫌がるのか?
なぜ親に相談する必要があるのか?
なぜ自分に個人情報を話したくないのか?

その理由を理解する。
そのために、聞く。
解消できる方法を、考える。

ここを飛ばしてしまうと、
どれだけ営業トークを覚えても、
どれだけ切り返しを学んでも、
ズレ続けます。


営業マンの仕事は答えを言うことではない

ここで、改めて考えてみてください。

今回集まった何百件もの
「返答に困った言葉」の中で、

不動産知識があれば解決するものは、
どれくらいあったと思いますか?

実は、ほとんどありません。

「今は急いでいない」
に必要なのは物件知識ではない。

「親に相談します」
に必要なのも物件知識ではない。

「他も見たい」もそうです。

必要なのは、
お客様の頭の中を把握し、一緒に整理する力です。


お客様は情報不足で悩んでいるわけではない

新人営業マンほど、説明しようとします。

良い物件はすぐに無くなってしまうことを説明する。
事前審査をやった方がいい理由を説明する。
親に相談するより自分達で決めた方がいい理由を説明する。
ただ物件を比較しても意味がない理由を説明する。

でも・・・

お客様は説明不足で止まっているわけではありません。

むしろ、情報過多です。

今はネットがあります。

SNSがあります。
YouTubeがあります。
ポータルサイトもあります。
AIにも相談できます。

情報だけなら、
営業マンより先に調べている人も珍しくありませんし、

AIの方が、よほど一般認識からすると
新人営業マンよりもまともな返答をしてくれる可能性が高い。

だからお客様は、
情報が足りなくて困っているわけではないんです。

何を優先するべきか。
どちらを選ぶべきか。
本当に今買うべきなのか。
誰の意見を優先するべきなのか。
この選択で後悔しないのか。

そこが、本人だけで整理できていない。
だから歩みが止まるんです。


営業は意思決定支援業である

私は、不動産売買の仲介営業とは、
意思決定支援業だと思っています。

お客様の代わりに家を決める仕事ではありません。
説得する仕事でもありません。
押し売りする仕事でもありません。

何に悩んでいるのか。
何が不安なのか。
何を優先したいのか。
誰が決裁者なのか。
何と何を比較しているのか。

それらを整理する。

そして、
お客様自身が納得して決断できる状態を作る。

それが、真の不動産売買仲介営業の役割です。


最後に

今回、
3年間蓄積してきた営業マンたちの日報を整理してみて、
改めて感じたことがあります。

営業マンは、
「何て返せば良かったんだろう」
と悩んでいる。

でも本当に考えるべきことは、
「なぜその言葉が出たんだろう」
だったということです。

お客様の言葉は、答えではありません。
ヒントです。

「今は急いでいない」
という言葉の奥には、
購入理由が固まっていないのかもしれない。

「他も見たい」
という言葉の奥には、
判断基準がないのかもしれない。

「親に相談します」
という言葉の奥には、
本当の決裁者が別にいるのかもしれない。

だから営業マンは、
その言葉に反応してはいけない。

その言葉の奥を見なければいけない。

そして、
お客様が何に迷い、
何に不安を感じ、
何を決められずにいるのかを整理していく。

私は、
それこそが不動産売買仲介営業の本質だと思っています。

物件を売る仕事ではない。
説得する仕事でもない。
お客様が納得して意思決定できる状態を作る仕事です。

もし明日から、
お客様の言葉を聞いた時に、

「何て返そう」

ではなく、

「なぜそう思うんだろう?」

と考えられるようになったら。

営業の景色は、きっと変わります。


そしてその時、
営業は単なる物件紹介業ではなく、
人の人生の意思決定を支える仕事になるのだと思います。

この記事の著者

関根 悠太

株式会社Re-Branding 代表取締役
不動産 売買仲介営業 専門/研修講師
 
不動産をはじめ10業種以上の営業現場経験を経て、2023年に株式会社Re-Brandingを設立。1on1などを通して社員一人ひとりの本音や課題に向き合い、組織力を強化する支援を行う。離職率40%削減や売上140%向上といった成果を創出。
 
【専門分野】
不動産売買仲介/離職防止と組織力強化/営業プロセス改善
  
「一人ひとりの本音に向き合い、課題の本質を共に探り、解決へ導く」ことを信条に、企業の未来を共に形作るパートナーとして活動中。

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