営業未経験者が覚えるべきヒアリングの3ステップ【不動産売買仲介営業】
営業を始めたばかりの頃、多くの人がこんな悩みを抱えます。
「何を聞けばいいのか分からない。」
「質問はしているのに会話が深まらない。」
「お客様の希望を聞いたはずなのに、結局よく分からない。」
実はこれは、質問の数が少ないからではありません。
問題は、「質問の深さ」です。
前回の記事では、「ヒアリングが下手な営業マンの3大原因」について解説しました。
- 深掘りする習慣がない
- 勝手に解釈してしまう
- 嫌われることを恐れて踏み込めない
では、実際にはどう深掘りしていけば良いのでしょうか。
今回は、その答えとなる「ヒアリングの3ステップ」をご紹介します。
ヒアリングは3段階で深くなる
ヒアリングには、次の3つの段階があります。
- 事実を聞く
- 理由を聞く
- 本質を聞く
一見シンプルですが、この順番を理解している営業マンと、そうでない営業マンでは、お客様から引き出せる情報量がまったく変わります。
多くの新人営業マンは、①の「事実」を聞くだけで終わってしまいます。
一方で成果を出している営業マンは、そこから②「理由」、さらに③「本質」まで掘り下げています。

では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
第1ステップ 事実を聞く
最初に確認するのは、現在の状況や事実です。
例えば、
- 今はどちらにお住まいですか?
- 間取りは何LDKですか?
- 最寄り駅はどこですか?
- ご家族は何人ですか?
こうした質問には、事実としての正解があります。
「船橋市に住んでいます。」
「2LDKです。」
「徒歩5分です。」
これは「解釈」ではなく「事実」です。
営業では、この「事実」を集めることからスタートします。
これは言い換えれば、「現在地」を確認する作業です。
地図を見るときも、最初に現在地が分からなければ目的地まで案内できません。
営業も同じです。
まずは、お客様の現在地を正確に把握する必要があります。
ただし、事実だけでは何も分からない
ここで新人営業マンがよく陥る失敗があります。
例えば、
営業)希望エリアはどちらですか?
お客様)柏か松戸あたりがいいです。
営業)かしこまりました。
これで終わってしまうケースです。
確かに希望エリアという”事実”は聞けています。
しかし、この会話だけでは本当に重要なことが何も分かっていません。
- なぜ柏か松戸なのか。
- 他のエリアではダメなのか。
つまり、その事実になった「理由」がまったく分からないのです。
だから事実を聞いたら、そこで満足してはいけません。

次のステップへ進む必要があります。
第2ステップ 理由を聞く
事実が分かったら、次は理由を聞きます。
例えば、
「なぜそのエリアを希望されるのですか?」
「なぜ今のお住まいに不満を感じているのですか?」
「なぜその予算に設定されたのですか?」
この「なぜ?」が、お客様の価値観を知る入口になります。
例えば先ほどの例、
「今、船橋に住んでいます。」
これは事実です。
では、
「なぜ船橋に住むことになったのですか?」
この質問をすると、
・総武線で通勤ができて便利だから
・実家が近いから
・学生時代に住んでいたことがあるから
など、その人が当時何を重視していたのかが見えてきます。
つまり、「過去の選択理由」は、その人の価値観を映す鏡なのです。
営業マンが知りたいのは住所ではありません。
その住所を選んだ理由です。
「理由」を聞いて終わってはいけない
ここで、多くの営業マンは満足してしまいます。
例えば、
お客様)柏市内が希望です
営業) なぜですか?
お客様)通勤しやすいからです。
営業)なるほど。
ここで終わってしまう。
しかし、本当に通勤だけが理由なのでしょうか。
実は、この段階でもまだ見えていないことがあります。
理由というのは、お客様自身も答えやすい質問です。
少し考えれば説明できます。
だからこそ、営業マンはもう一歩踏み込まなければなりません。
その先にあるのが、「本質」を聞く質問です。
ここから先は、お客様自身もまだ言葉にできていない判断基準を探していく段階になります。
第3ステップ 本質を聞く
本質を聞くとは、お客様の本当の判断基準を確認することです。
ここで大切なのは、お客様が最初に答えた内容を、そのまま本音だと思わないことです。
実は、お客様自身も自分の考えを整理できていないことが少なくありません。
「何となくそう思っている。」
「今はそう考えている。」
その程度の状態で答えているケースは、営業現場ではよくあります。
だから営業マンは、
「なぜですか?」
だけで終わらず、
「もし○○だったらどうされますか?」
という質問を投げかけ、本当の優先順位を確認していく必要があります。
事例① 希望エリアを深掘りする
例えば、お客様との会話です。
営業)ご希望のエリアはどちらですか?
お客様)柏か松戸あたりですね。
と返ってきました。
ここで終わってしまう営業マンは少なくありません。
しかし、この時点で分かったのは、
希望エリアは柏か松戸
という事実だけです。そこで続けて聞きます。
営業)なぜ、そのエリアをご希望なんですか?
お客様)職場まで通勤しやすいからです。
という返答が返ってきました。
ここまで来ると、「理由」は分かりました。
しかし、まだ終わりではありません。
さらに、
営業)もし同じ価格で、同じ広さの物件が別のエリアにあったら、そちらも検討されますか?
お客様)同じ広さで同じ金額なら検討するかも。
と答えるかもしれません。
この瞬間に分かるのは、
本当に優先しているのはエリアではなく、価格や広さかもしれない。
ということです。

最初は「柏・松戸が希望」と話していましたが、本質はそこではなかったのです。
事例② 予算を深掘りする
もう一つの例を見てみましょう。
営業)ご予算はどのくらいでお考えですか?
お客様)3,000万円くらいです。
営業)わかりました、3,000万円ですね
これで終わってしまう営業マンは少なくありません。
しかし、ここ話を続けます。
営業)なぜ3,000万円なのですか?
お客様)毎月の住宅ローンの支払いを考えると、そのくらいかなと思って。
こんな理由が出てきます。これでもまだ本質ではありません。
さらに、
営業)もし本当に気に入った物件が3,200万円だった場合は、予算を少し上げることも検討されますか
お客様)本当に気に入った物件なら考えます。
という返答が返ってくることがあります。
つまり、3,000万円という数字は絶対条件ではなかった、ということです。
逆に、
「絶対に3,000万円以内です。」
という返答なら、それが本当の判断基準になります。
この違いを確認するためにも、本質を聞く質問は欠かせません。
事例③ 本当の希望条件を見つける
例えば、
お客様)船橋駅周辺で探しています。
営業)なぜ船橋なんですか?
お客様)職場が錦糸町なので、通勤しやすいからです
こんな答えが返ってきました。
ここで終わってしまえば、
「通勤重視のお客様なんだ。」
という解釈になります。
しかし、さらに、深掘りしてみます
営業)市川駅や本八幡駅でも通勤しやすいですが、そのあたりはいかがですか?
お客様)いや、実家に子どもを預けやすいので船橋がいいんです。
こんな答えが返ってくることがあります。
すると、本当に大切だったのは、
通勤ではなく、
実家との距離だった。
ということが分かります。
営業マンが提案すべき内容も、この瞬間に大きく変わります。
理由と本質は違う
ここで整理しておきたいことがあります。
理由と本質は似ていますが、同じではありません。
理由とは、お客様がすぐに答えられる内容です。
「通勤しやすいから。」
「価格が手頃だから。」
「駅が近いから。」
これは、お客様自身も自覚しています。
一方、本質とは、
お客様自身もまだ整理できていない判断基準です。
だから、
「もし○○だったら?」
という質問をされた時に、お客様は少し考えます。
少し考えて出てきた答えこそ、本当に大切な価値観であることが多いのです。

営業マンは、この本質を見つけるために質問をしています。
お客様の答えが、そのまま本音とは限らない
営業経験が浅いうちは、
「お客様が言ったことが正しい答え。」
と思ってしまいがちです。
しかし実際は、お客様も頭の中が整理されていません。
「何となく買うなら柏かな。」
「3,000万円くらいかな。」
「駅近がいいかな。」
そんな曖昧な状態で来店される方も多くいます。
だから営業マンの役割は、答えを聞くことではありません。
答えを一緒に整理することです。

質問を重ねることでお客様自身も、
「自分は本当はそこを重視していたんだ!」
と気付くことがあります。
これこそが、ヒアリングの価値なのです。
おわりに
ヒアリングは、質問の数を増やすことではありません。
大切なのは、
事実を聞き、理由を聞き、本質までたどり着くこと。
そして、そのためには、
「なぜですか?」
で終わるのではなく、
「もし○○だったらどうされますか?」
という仮説の質問を活用することが重要です。
お客様が少し考え込む質問ほど、本当の価値観や優先順位が見えてきます。
営業マンは物件を紹介する仕事ではありません。
お客様自身も気づいていない本当の判断基準を一緒に整理し、最適な意思決定を支援する仕事です。
この「事実 → 理由 → 本質」という3ステップを意識するだけで、ヒアリングの質は大きく変わります。

