お客様が「他で決めた」本当の理由【不動産売買 仲介営業】
〜”窓口”を取られた営業マンに起きること〜
一度、あの物件を案内した。
その後、何件か一緒に見た。
感触も、決して悪くなかった。
なのに、なぜか連絡が来なくなっていた。
そして、後から分かると、他社で決まっていた。
しかも、こちらでも普通に紹介できた物件で。
「なんで?」
ってなりますよね。
これ、不動産仲介営業をやっていれば、多くの人が一度は通る経験です。
でも、これが1組じゃなくて、数ヶ月で何組も続くなら、
単なる偶然ではなく、構造として考えないといけない。
今回は、「なぜ、他社で決まったのか」という点について考えています。
「物件が悪かった」だけでは、説明できない
他社で決まったと知った時、営業マンはこう考えがちです。
「タイミングが悪かった」
「他社の方が条件が良かった」
「向こうの営業マンと相性が合ったんだろう」
それもあるかもしれない。
でも、他決が何組も続くなら、それだけでは説明できません。
可能性を正直に並べると、こうなります。
① 最初から他を見ていた
会った時点で、すでに他社で案内を受けていた。その営業マンから連絡が来て、そちらで決めた。
② 人としての信用が足りなかった
「この人に頼もう」と思ってもらえるほどの信頼関係が、まだできていなかった。
③ 自分に頼む理由が分からなかった
どの不動産会社に頼んでも同じだと思われていた。不動産に関する相談窓口をどこにするかの判断基準が、お客様の中になかった。
④ 自分のコントロール外で話が進んだ
お客様が誰かに相談した。家族、知り合いの不動産屋、ネット記事。自分の知らないところで情報が入って、そっちに流れた。
この4つを並べた時に気づくことがあります。
どれも、お客様が不動産営業マンとしての自分以外の何かを頼った結果だ、ということ。
「お客様のお悩み相談窓口になれていなかった」
という問題があるでしょう。

案内が終わった後に、意思決定は動く
ここが、かなり重要です。
多くの営業マンは、案内中は頑張っています。
物件説明、周辺環境、ローンの話、ヒアリング・・・
本当に一生懸命やっている。
でも、お客様の意思決定は、案内中だけで完結しないんです。
むしろ、案内が終わった後の方が、いろんな情報が入ってきます。
- 帰り道に家族に電話する。
- 夜、夫婦で話し合う。
- お父さんに「どんな営業マンだった?」と聞かれる。
- お姉さんに「知り合いの不動産屋に聞いてみようか」と言われる。
- SNSで「中古マンション 失敗」と検索する。
- 他社から「先日ご連絡いただいた物件ですが」とメールが来る。
つまり
自分がいない場所で、意思決定が動いている。

これが現実なのです。
お家を買うことに、関係することが多すぎる
少し考えてみてください。
お客様がお家を買うにあたって、判断しないといけないことは、これだけあります。
住宅ローンの借入額、月々の返済、諸費用の計算、中古と新築の違い、住宅性能の見方、相続や税金の話、購入の手順とスケジュール、実家との距離、今後の仕事や通勤、学区や周辺環境、火災保険、子どもの意見、防災や犯罪リスク、親からの資金援助や承諾、住所の移動や引越し、将来の資産価値、・・・
全部、お家を買うことに関係してきます。

そしてお客様は、これらを1個1個クリアにしていかないと、前に進めないのです。
お客様は、悪気なく他へ相談する
悩んでいるお客様は、思いつく先へ相談の捌け口を求めます。
- 周辺環境のことはエリアの近くに住むママ友に。
- 購入の手順は先に家を買った経験があるお父さんに。
- 他の物件との比較は、たまたま連絡してきた他社の営業マンに。
- 相談するまででもないけど気になることはネット記事やSNSに。
これ、
お客様からしたら普通なんです。
分からないから、
知ってそうな人に聞いただけ。
でも営業側からすると、
ここで問題が起きます。
分からないことが出るたびに、
お客様は、何ら悪気なく、あちこち誰かに相談していきます。

「窓口を取られる」と、何が起きるか
自分のコントロールが届かない場所で、話が進んでいきます。
・お父さんに「そんな営業マン信用できるの?」と言われた。
・他社の営業マンに「今なら動けますよ」と先に背中を押された。
・ネット記事で「仲介手数料は値切れる」という情報を見て、不信感を持った。
・姉に知り合いの不動産屋を紹介された など
こうなったとき、自分はその場にいない。
何が起きているかも、リアルタイムでは分からない。
説明もできない。
修正もできない。
整理もできない。
気づいたら連絡が途絶えて、後から「他で決まりました」という結果だけが残る。
これが
「コントロール領域外で何かが起きた」
「コントロール領域外で負けた」
状態です。

そして問題は、これが起きている間、営業マン側は何も気づいていないことが多い。
「案内はうまくいったな」「感触は悪くなかった」と思ったまま、次のお客様の対応に移っている。
「案内中」しか営業していない人は、ここで負ける
多くの新人営業マンは、
案内中は頑張るんです。
- 物件説明
- 周辺環境
- ヒアリング
- ローン説明
もちろん大事です。
でも、
お客様の意思決定は、
案内中だけで終わりません。
むしろ本番は、
家に帰った後です。
家族会議。ネット検索。
他社比較。第三者へ相談。
そこで、お客様には自分が見聞きしていない
コントロール外の別の情報が入り始めます。
つまるところ、不動産仲介営業は、
「案内後に、お客様がどこへ相談するか」
までも設計しないといけないのです。
実は、お客様は「どこでも同じ物件が買える」を知らない
新築マンションや、一部新築戸建などを除いた
一般論にはなりますが、
基本的にSUUMOなどのポータルサイト上で
お客様が触れるできることができる物件は
90%以上が紹介可能でしょう。
ここは営業側は当たり前すぎて忘れがちですが、
実際、お客様は、こう思っています。
「SUUMOに載ってるこの物件は、この会社の物件」
「あの会社でしか買えない」
だから、
気になる物件ごとに、
ポータルサイトを経由して別会社へ問い合わせてしまう。

そして、そこでも営業される。
実際には、流通している物件の90%以上は、どの仲介会社を通しても購入できます。
でも、それをお客様はその事実を知らない。
結果、営業側からすると、
「それ、自分でも紹介できたのに…」
が普通に起きる。
知らないから、あちこちに問い合わせる。
いろんな営業マンから連絡が来て、わけが分からなくなる。
情報が散らばって、判断も散らばる。
これは、物件で負けたというより、窓口を取られたんです。
だから、
こちらが事実を教えないといけません。
「不動産のことは、まず自分に相談してください」という状態を作る
ここが本当に重要です。
答えはシンプル。
お客様の中で、
「不動産に関することは、全部この人に聞こう」
という状態を最初に作ること。
これが、「窓口になる」ということです。

結局、
他社で決まる人って、
「この人にまず相談しよう」
という状態になってないんです。
だから、
疑問が出た時に、
別の人へ聞きに行く。
逆に言えば、
- ローン
- 物件比較
- 手順
- 税金
- 周辺環境
- 他社物件
全部含めて、
「まずこの営業マンに聞こう」
になっていれば、
かなり変わります。
この状態を作るために
例えば、こういう伝え方ができます。
「不動産に関することは、何でも僕に聞いてください!すぐに答えられないことは調べてお答えします。専門家が必要なことは、信頼できる方をご紹介できます。
「今日見た物件以外でも、SUUMOとかネットで気になる物件が出てきたら、まず僕に送ってください。
基本的にほとんどの物件は、僕からもご紹介できます。」
「あちこち問い合わせすると、色んな会社から連絡が来て逆に整理しづらくなるので、不動産に関することはまず僕にまとめてもらえれば、整理してご提案します!」
これは営業トークではありません。
実際、お客様にとってもその方がラクなんです。
お客様にとっても、そうした方が本当にメリットがあるから伝えるべきことです。
「全部お任せください」が軽く聞こえる営業マンもいる
ただし、言葉だけでは刺さらないこともあります。
「全部お任せください!」と言っても、「営業トークでしょ」で終わる場合があります。
大事なのは言葉よりも、
- 人として信頼できるか、安心できるか
- 対応の速さはどうか
- 誠実さがあるか
- そもそも話しやすいか
お客様は、正しい人より、頼れる人に相談します。

「この人なら聞きやすい」「なんか安心する」「ちゃんと向き合ってくれる」
この感覚が先にあるから、窓口になれるのです。
「3回目だから大丈夫」は、危険
案内の回数を重ねると、営業側は安心し始めたりします。
「もう3回目だし、信用されてるだろう」
でも、お客様側はまだ比較しているかもしれない。
まだ不安かもしれない。
まだ他社と迷っているかもしれない。
だから、3回目だからこそ、
100の信頼を110に、110を120にして帰ってもらうつもりで向き合う。
案内の回数は安心の理由にならないことを肝に銘じておいてください。
まとめ
お客様が他で決まってしまう原因は、
「その場の接客がうまくいかなかった」
だけではありません。
案内が終わった後、自分のコントロールが届かない場所で、話が動いていることがほとんどです。
だからこそ、最初に伝える必要があります。
「不動産のことは、何でも僕に相談してください」

この一言が必要でしょう。
とはいえ、何度も言うように
選ばれる営業マンは、
「物件を紹介した人」ではなく、
「意思決定を一緒に整理した人」
です。
情報が多すぎる。
判断が難しすぎる。
だからお客様は、
相談相手を探している。
そんな時に、
「この人にまず聞こう!」
という存在になれるか。
そこが、
他社で決まる営業と、
選ばれ続ける営業の差なんだと思います。
