物件のネガティブなことは言わない方がいいのか? 営業マンが見失いがちな”本当の目的”【不動産売買仲介営業】
先日、新人営業マンからこんな質問を受けました。
壁紙の汚れなどを気にされているお客様に対して「汚い」「狭い」「遠い」などと伝えるのを避け、表現をマイルドにした方がいいのでしょうか?
ネガティブな言葉は使わない方が良いですよね?
お客様のタイプによって、ネガティブな部分をストレートに伝えた方がいい人と、オブラートに包んだ方がいい人がいるのでしょうか?
お客様に不快な思いをさせないよう、言葉遣いや伝え方を工夫することは大切です。
営業マンの不用意な一言が、お客様の気持ちを変えてしまうことも、当然あるでしょう。
実は、過去にも、似た悩みは複数寄せられました。
「強く伝えると、お客様に引かれるのではないか」
「これを言ったら意欲が下がるのではないか」
「これ以上質問すると、不快に思われるのではないか」
これは、お客様への配慮から生まれた考え方かもしれません。
しかし、そこばかりに意識が向くと、営業マンとして本来果たすべき役割を見失ってしまいます。
今回は、ネガティブな言葉の使い方を入口に、営業マンが本当に考えるべきことを解説します。
そもそも、ネガティブな言葉は本当にマイナスなのか?
「言葉の印象」と「購入判断」への影響は別問題
例えば、中古戸建を見学しているお客様が壁紙の汚れを気にしていたとします。
そこで営業マンが「確かに、この壁紙は汚れていますね」と伝えたら、これはお客様にとってマイナスなのでしょうか?
「汚い」「汚れている」は一般的な言葉の解釈だけ言えばネガティブな表現です。
しかし、私は必ずしも不動産売買仲介営業において、マイナスだとは思いません。
なぜなら、言葉が持つ印象と、その言葉がお客様の意思決定に与える影響は、別の話だからです。
明らかに誰が見ても汚れていると感じる部分に対して、営業マンが事実を認めることで「物件の悪い部分もきちんと説明してくれるんだな」と感じるかもしれません。
反対に、誰が見ても汚れている壁紙を前に「多少の使用感はありますが、これは綺麗な状態ですよ!」と説明すれば、かえって不信感につながる可能性もあります。
お客様は、気持ちの良い言葉を聞くために物件を見学しているのではありません。自分たちにとって購入するに値する物件かどうかを判断するために見学しているのです。

だから、「ネガティブな言葉を使うこと」と、「購入判断にネガティブな影響を与えること」は、必ずしもイコールではありません。
このことを理解しておくことが大切です。
例えば、壁紙が汚れていることをお客様も認識しているのであれば、それを営業マンが認めることは、同じ事実を共有することにもなります。
一方、まだ気づいていない汚れの部分を伝えるなら、その情報によってお客様は何を判断するか、何を比較する必要があるかまで、我々は考えなければなりません。
単に「ネガティブをオブラートに伝える」「良い印象を与える言葉」だけを探して伝えても、お客様の役に立つとは限りません。
そもそも「汚い」「古い」「狭い」の基準は何なのか?
そもそも「汚い」とは、何をもって汚いのでしょうか?
- 壁紙に少し汚れがある
- 床に埃が溜まっている
- 水回りに使用感があって水垢が残っている
- 室内全体に経年劣化が見られる
これらをすべて「汚い」の一言で片づけてよいのでしょうか?
少しの埃や傷も許容できないなら、中古住宅を選ぶこと自体が難しくなるかもしれません。
「古い」も同様です。
築20年以上の物件でしょうか? 30年以上でしょうか?
築30年でも、フルリノベーションされ、内装や設備が綺麗な状態だったらどうでしょう?
もちろん、リノベーションされて内装が綺麗でも奥の構造まですべて新しくなるわけではありません。
重要なのは、お客様が何に対して「古い」と感じ、何を懸念するのかということです。
「狭い」「遠い」も同じです。
70㎡を狭いと感じる人もいれば十分だと感じる人もいます。
駅徒歩15分を遠いと感じる人もいれば、車中心の生活だから駅距離が気にならない人もいるでしょう。

「汚い」「狭い」「古い」「遠い」など、これらの言葉には、お客様によって異なる判断基準が存在します。
「”汚い”と言ってもいいのか?」
「”狭い”という表現は避けるべきか?」
と単語の使い方ばかり考えても、本質は理解できません。
「その言葉を使っても大丈夫か?」
ではなく、
「お客様はどれほど気にするることなのか?」
「何を基準に汚い・古いなどと感じるのか?」
を考える必要があります。
ネガティブな言葉は共感的・具体的に言い換えられる
とはいえ、何でもストレートに伝えればよいわけではありません。
表現は工夫できます。
「汚い」
→ちょっと汚れが目立ちますね
「古い」
→新しいとは言えないですよね
「狭い」
→空間的にあまり余裕はなさそうですね
「遠い」
→通勤時間はかかりそうですね
「暗い」
→日中でも電気は必要そうですね
「使い勝手が悪い」
→生活動線には少し工夫が必要そうですね
相手に共感しながら、物件の状態を伝える方法はいくらでもあります。
ただし!言葉を言い換えることが営業の目的ではありません。
例えば、こんな会話です。
お客様:「この物件、ちょっと狭いですね」
営業:「そうですね。空間的にあまり余裕はなさそうですね。」
お客様:「そうですよね……」
これで会話が終わったら、果たして何が明らかになったのでしょうか?
お客様は何を判断できたのでしょうか?
もしも
「どのあたりが狭いと感じられましたか?」
「今のお住まいと比較して、もう少し広さが必要ですか?」
と質問を続けたら、その広さが判断にどの程度影響するのかを確認することもできます。
だから、重要なのは質問のフレーズではありません。
その発言をきっかけに、何を明らかにし、次のどんな判断へつなげるのか。
言葉を柔らかくすることも、ストレートに伝えることも、そのための手段です。

共感的な言い換えは、相手の気持ちを受け止める入口として有効になりますが、そこで会話を止めず、お客様の認識を確かめる。
そうして初めて、言葉の工夫が営業上の価値につながります。
「5人家族に3LDKは手狭では?」と質問した営業マン
こんな事例がありました。
ある営業マンが、5人家族で3LDKを検討しているお客様に
「5人でお住まいになるには手狭なのではないですか?」
と質問したそうです。
その営業マンは、マイナスなイメージを与えてしまい、次の見学がキャンセルになるかもしれないと、この発言を反省していました。
確かに、見学前の物件に営業マンから「手狭では?」と伝えることが適切でない場面もあるでしょう。
しかし、私が気になったのは、何のために「手狭では?」と質問したのかということです。
5人家族だから3LDKでは足りないと決めつけたのでしょうか?
希望する生活に部屋数が足りるか確認したかったのでしょうか?
例えば、同じ5人家族でも、
- 子ども3人にそれぞれ個室が必要なのか
- 子ども部屋は共有でも問題ないのか
- 仕事部屋が必要なのか
- 現在の住まいの広さに不満があるのか
によって、必要な間取りも気にする部分も変わります。
こうしたことを確認する質問であるならば「手狭では?」という質問は重要なヒアリングです。
一方、根拠もなく「5人家族だから狭いだろう」と考えて「手狭では?」と聞いたなら、改善が必要でしょう。
問題は「手狭」という言葉自体ではありません。
何を確認し、その情報をどう物件選びに結びつけるつもりだったのか?
ここに、営業としての思考が表れます。
もしお客様が「子どもには一人一部屋必要です」と答えたなら、3LDKで生活できるかを具体的に検討すべきでしょう。
反対に「今も3LDKで同じ部屋数だから不自由していません」と答えるなら、営業マンが先回りして「狭い」と決めつける必要はありません。
つまり、マイナスに聞こえるかどうか以前に、お客様の暮らしを理解するための質問になっていたかが重要なのです。

中古物件に「マイナスのない物件」はほとんど存在しない
住宅購入には「予算」という現実的な制約がある
住宅購入で、すべての希望条件を満たせるお客様はどのくらい居るでしょうか?
駅から近い。築年数が浅い。室内が綺麗。リビングが広い。駐車場が2台。日当たりも周辺環境も良い。
もちろん、すべて叶えられるなら理想的です。
しかし、現実には「予算」という制約があります。
物件予算3,000万円のお客様が、希望条件に合う物件がないからといって、突然5,000万円の物件を買えるようになるでしょうか・・・?
基本的には難しいですよね。
年収や住宅ローンの借入可能額には限界があります。
最初に予算を決めた上で物件探しをしているならば、予算を上げられるわけではありません。
つまり、お客様が購入できる価格帯は、ある程度決まっているということです。

予算の上限がある以上、立地・広さ・築年数・室内の状態などのすべてを理想どおりにすることは難しくなります。
何を優先するかによって、選べる物件も変わってきます。
では、限られた予算内に希望をすべて満たす物件がなかったら、どうするのでしょうか?
ここで必要になるのが「判断基準を整理する力」です。
同じ予算で探す以上、何かしらの懸念点は存在する
特に中古物件には、何かしらの懸念点が存在するものです。
例えば、同じ3,000万円の予算で、次の3軒を比較するとします。
【A物件】
徒歩10分 築30年 経年劣化あり 駐車場1台
【B物件】
徒歩25分 築10年 比較的綺麗 駐車場2台
【物件C】
徒歩15分 築20年 リフォーム済み 駐車場なし

どれが一番良い物件でしょうか? 正解はありません。
駅距離を優先するならA。
築年数や駐車場を優先するならB。
室内の状態や立地のバランスを重視するならC かもしれません。
物件の良し悪しは、物件の条件だけでなく、お客様が何を優先するかによって変わるのです。
予算もエリアも希望条件も変わらなければ、新しい物件が出ても別の懸念点が出てくる可能性があります。
「古いから悪い」「遠いから悪い」という評価だけでは、その物件がお客様に合うかどうかは分かりません。
駅距離を優先する人にとっての物件Aと、駐車場を優先する人にとっての物件Aでは、価値の感じ方が違います。
物件のマイナスを隠す必要はありません。
同時に、マイナスだけを並べて終わるのでもありません。
条件の違いを理解したうえで、お客様が自分たちの選択として比較できる状態をつくることが大切です。
なお、中古不動産には設備の故障リスク、擁壁、ハザードリスク、建て替えの制約など、購入前に確認すべき事項もあります。
これらは「気にするか、気にしないか」だけの問題ではありません。必要な調査・説明を行い、内容と影響を、ポジティブなこともネガティブなことも、お客様に正しく理解していただくことが前提です。
ネガティブな言葉の意味は営業展開によって変わる
同じ言葉でも、お客様の検討状況によって意味は異なる
ここからは、実際の営業現場でどう考えるべきかを見ていきましょう。
例えば、駅徒歩20分の物件で「この物件は、ちょっと駅から遠いですね」と伝えるとします。
この発言が適切かどうかは、お客様が今、どの検討段階にいるかによって変わります。

ケースA|まだ物件探しを始めたばかり
希望条件や優先順位が明確でない段階なら、
「〇〇様にとって、駅徒歩20分という距離はいかがですか?」
と質問し、通勤への影響を確認できます。
「毎日、電車通勤なので少し大変ですね」
という回答なら、さらに
「同じ予算で駅に近づくと、広さが少しコンパクトになる可能性があります。駅距離と広さならどちらを優先したいですか?」
と展開することもできます。
この段階では「遠い」という情報が、希望条件や許容範囲を整理する材料になるのです。
ケースB|希望エリアに候補が3軒しかない
一方、ほかの2軒も見学済みで、選択肢が限られているお客様ならどうでしょう?
すでに遠いと認識している物件に、改めて「遠いですね」と伝えても、欠点を指摘しただけで終わるかもしれません。
この段階なら、
「ほかの2軒より駅距離はありますが、広さには余裕があります。3軒を比較して、〇〇様は駅距離と広さをどう感じられますか?」
といった比較が判断につながります。
同じ「駅から遠い」という情報でも、希望条件を明確にする、物件を比較する、購入前の懸念を確認するなど、役割は異なります。
大切なのは、今のお客様に対して、その言葉がどのような役割を果たすのかです。
さらに、すでに購入直前まで検討が進んでいるお客様なら、同じ発言が最後の不安を確認するきっかけになる場合もあります。
大切なのは、お客様の検討段階を無視して、覚えた言い回しを当てはめないこと。
今どこまで整理できていて、次に何を判断する必要があるのかによって、会話の設計は変わるのです。
お客様から出てきたネガティブな言葉も、重要な判断材料になる
「ネガティブな発言をされると購入が難しくなるので、言わせないようにする」
という振り返りをした営業マンがいました。
ここで考えてみましょう。
お客様のネガティブな発言は、本当に避けるべきものなのでしょうか?
「ちょっと狭いですね」
「思っていたより古いですね」
「駅から遠いのが気になりますね」
こうした発言があっても、それだけで購入意欲が下がると判断するのは早計です。
何を問題だと感じ、購入判断にどの程度影響するのかが、まだ分からないからです。

例えば「狭い」には、リビング、子ども部屋、収納、家具を置いた後の生活空間など、さまざまな意味があります。
お客様自身も、何となく狭いと感じているだけかもしれません。
ならば、
「どのあたりが狭いと感じられましたか?」
「今のお住まいと比べて、どのくらいの広さが理想でしょうか?」
「収納を増やせるとしたら、今の懸念は解消されそうですか?」
と質問し、気にしている部分を明らかにできます。
聞いたからと言って懸念を解消できるわけではありません。
支障があるなら、その物件を見送る判断も必要です。
しかし、それも判断が前進した結果です。
ネガティブな発言は、お客様の判断基準を知る重要な情報になり得るのです。
もし営業マンが「そんなことを言わせてはいけない」と考えてしまえば、せっかくお客様が口にした懸念を深掘りする機会まで失うかもしれません。
お客様が気にしていることを把握できなければ、それが解決可能な問題なのか、購入を見送るほど重要な問題なのかも判断できません。
ネガティブな部分を伝えた事実より、その後の会話の方がはるかに重要なのです。
その言葉を伝えた後、どんな営業展開を考えているのか?
「汚いと言っていいか?」
「古いという表現は避けるべきか?」
こう聞かれたら、私はまずあなたに聞き返したいと思います。
「そもそも、何のためにその言葉を言おうとしてるのですか?」と。
例えば「確かに、ちょっと汚れが目立ちますね」と伝え、お客様が「気になりますね」と答えたら、その後はどうするのでしょう?
- 壁紙を張り替えれば問題ないか確認したいのか?
- リフォーム費用を含めて予算を考えてもらいたいのか?
- 室内の状態と立地の優先順位を整理したいのか?
目的によって、次の質問も提案も変わります。
反対に、その場で「壁が汚い」と言わない選択にも意図が必要です。
お客様がすでに認識しているからなのか、別のタイミングで具体的に説明する予定なのか。
もちろん、建物の不具合や安全性、取引上重要な事項は、営業上の都合で隠したり説明を避けたりしてよいものではありません。
発言することにも、発言しないことにも、目的があるべきです。
それが明確なら、必要な言葉や質問も変わってくるはずです。
例えば「汚れが気になる」と言われたとき、張り替えで解決できる問題かを確認したいなら、その費用や施工範囲の話につながります。
汚れそのものより「中古住宅への抵抗感」が強いと分かったなら、別の比較軸が必要になるかもしれません。

同じ話題でも、お客様の返答によって次の展開は変わります。だからこそ、言葉を選ぶ前に、何を確認したいのかという仮説を持っておく必要があるのです。
お客様のタイプに合わせるべきなのは言葉の強さだけではない
ストレートに伝えるか、オブラートに包むかは本質ではない
冒頭の質問には「お客様のタイプによって、ストレートに伝えるか、オブラートに包むかを変えるべきか」というものもありました。
もちろん、ストレートな表現を好む人もいれば、柔らかい表現を好む人もいるでしょう。
ただし、考える順番が違うように感じます。
そもそも何を印象づけ、何を理解してもらいたいのでしょうか?
駅から遠い物件なら、「駅から遠いです」と明確に伝える場面もあれば、「毎日の通勤を考えると、少し時間はかかりそうですね」と生活に置き換えて伝える場面もあります。
どちらが優れているかではありません。何を理解してもらい、どの判断につなげるか。

その目的があって初めて、伝え方を選ぶ意味が生まれます。
お客様によって判断しやすい情報の届け方は異なる
「ソーシャルタイプ」という考え方を学んだ人もいるかもしれません。
・結論を先に伝えた方が判断しやすい人
・根拠や数字があると納得できる人
・一つずつ自分のペースで整理したい人
人によって、コミュニケーションの傾向はさまざまです。
しかし、
「ストレートな性格だから、何でもハッキリ言おう」
「慎重なタイプだから、ネガティブなことは柔らかく伝えよう」
と決めつけるのは違います。
お客様の性格と、物件購入の判断基準は必ずしも同じではありません。
普段は即断する人でも住宅購入は慎重かもしれませんし、穏やかな人でも欠点はハッキリ説明してほしいかもしれません。
考えるべきなのは、「どの情報を、どの順序で届ければ、このお客様は理解し、納得して判断できるのか?」 ということです。

結論から伝える、比較材料を示す、図で説明する、一つずつ質問する。
いずれも判断基準と優先順位を明確するための方法です。
お客様に合わせることと、顔色をうかがうことは違う
お客様に合わせることは大切ですが、嫌がりそうな話を避けることと同じではありません。
例えば、「もう少し駅に近ければいいんですけどね」と言われたとします。
「そうですよね。近い方がいいですよね」と共感することはできます。
しかし、それだけでは何も分かりません。
・本当に通えない距離ないのでしょうか?
・15分まで頑張れると言ってたのは嘘なのでしょうか?
・それとも買うほどの魅力を感じていないのでしょうか?
理由によって、確認すべきことも提供すべき情報も変わります。
ところが「この話を続けると嫌がられる」「押し売りだと思われる」と、顔色ばかり気にして必要な質問を避けてしまえば、本当の悩みを理解できません。

私は、相手が嫌がりそうなことを聞かないことは、本当の優しさではないと考えています。
必要な情報を理解しやすく届け、時には踏み込んで質問し、その理由や背景もきちんと説明する。それも配慮です。
お客様に合わせるとは、気分や機嫌に合わせることではなく、判断しやすい方法に合わせて営業を展開することなのです。
もちろん、相手の反応を無視して強く言い切ればよいという話でもありません。
お客様に対する配慮と営業としての主導権は両立できます。
「お客様にどう思われるか」ではなく「お客様にどう判断してもらうか」
「嫌われたくない」という心理
「強く伝えると、お客様に引かれるのではないか」
「言うべきことを伝えると嫌われそうで、飲み込んでしまう」
「これ以上質問すると、不快に思われるのではないか」
ある社員は、過去の経験から「嫌われないこと」を優先し、不快に思われそうな質問を避けていたと、自分の課題を振り返っていました。
営業経験が浅ければ、どこまで踏み込むべきか分からず不安になることもあるでしょう。悩むこと自体は悪くありません。
しかし、お客様に嫌われないことが、営業の目的なのでしょうか?
予算に誤解があっても説明しない。
物件に懸念点があっても伝えない。
迷っている理由が分からなくても質問しない。
これでは会話は穏やかに進んでも、疑問や不安は解消されず、判断基準も明確になりません。

接客の視点と、営業の視点は違う
もちろん営業には、丁寧な言葉遣いや気配り、相手への配慮は必要です。
ただし、営業にはその先に役割があります。
お客様にどう思われるか
↔︎お客様にどう判断してもらうか
不快にさせないか
↔︎必要な情報を正しく届けられるか
嫌われないか
↔︎判断基準を明確にできるか
どんな言葉なら響くか
↔︎何を理解してもらう必要があるか
どう言えば受け入れてもらえるか
↔︎どうすれば納得して決断できるか
「どう思われるか」と「どう判断してもらうか」は、似ているようでまったく違います。
不快にさせないために言葉を選ぶこと自体は大切ですが、その配慮によって本来伝えるべき事実まで曖昧になったら本末転倒です。
言葉遣いは判断を支えるためのものであって、判断から遠ざけるためのものではありません。

営業マンは、判断基準をつくり、意思決定を導く存在
私は、不動産売買仲介営業を単なる「物件紹介屋さん」だとは考えていません。
お客様の問題を解決し、実現したい暮らしや願望を叶えるために、住宅購入を通じて支援する仕事です。
しかし、お客様自身も最初から希望条件や優先順位を明確にできているとは限りません。
「駅から近い方がいい」
「築浅がいい」
「広いリビングがほしい」
と希望していても、実物を見て比較する中で
「駅距離は思ったほど気にならない」
「築年数より室内の状態が大切」
「広さより駐車場の有無を優先したい」
と変わることがあります。
それは、自分たちにとって何が重要なのかを理解できたということです。
営業マンはその思考整理を支援します。
何を優先し、何を許容できるか。
何が購入の懸念で、解決できるものなのか。
それらを明確にして、納得できる判断へ近づけるのです。
判断するのはお客様。
しかし、判断できる状態をつくることは営業マンの重要な仕事です。
言葉を選ぶ前に、その先の営業展開を考える
最後に、冒頭の質問へ戻りましょう。
「ストレートに伝えるべきか」
「オブラートに包むべきか」
「タイプごとに使い分けるべきか」。
言葉遣いを考える前に、次の4つを確認してほしいのです。
① なぜ今、その言葉を伝えるのか?
② その言葉によって、何を理解してもらいたいのか?
③ その後、どんな質問や提案につなげるのか?
④ 最終的に、何を判断してもらいたいのか?
これが明確なら、必要な言葉や伝え方も考えやすくなります。
曖昧なままでは、どれほど言葉を工夫しても目的のない会話になりかねません。
自分の言葉に目的を持ち、その言葉によってお客様の思考や判断をどう前進させるのかを考えること。

これこそ、身につけてほしい営業の思考です。
まとめ|その一言の「次」まで考えられる営業マンになろう
ネガティブなことを言うべきか、言わないべきか。
ストレートに伝えるべきか、オブラートに包むべきか。
考えること自体は悪くありません。
しかし、言葉の選び方にばかり意識が向くと、本来考えるべきことが見えなくなります。
「その一言を伝えた後、あなたはどのように営業を展開するつもりなのか?」
何を理解し、比較し、判断してもらいたいのか?
その先にどのような意思決定を支援したいのか?
そこまで考えて初めて、言葉を選ぶ意味が生まれます。
お客様に嫌われないことも、良い印象を持ってもらうことも大切です。
しかし、それ自体がゴールではありません。
営業とは、お客様にどう思われるかを考える仕事ではなく、お客様がどうすれば納得して判断できるかを考える仕事です。
これから営業デビューする皆さんには、ぜひ、この違いを理解していただきたいと思います。
