「良い物件がない」は本当か?不動産仲介営業が勘違いしやすい”良い物件”の正体
新人の不動産仲介営業マンから、よくこんな言葉を聞きます。
「条件に合う物件がありません。」
「良い物件がないので案内できません。」
「お客様が気に入る物件がありません。」
でも、本当にそうでしょうか。
私は違うと思っています。
もちろん、タイミングによっては、希望条件に該当する物件数が少ないことはあります。
しかし、多くの場合、
「良い物件がない」のではなく、「良い物件の定義を間違えている」
これが原因です。
今回はそんな「いい物件とは何なのか?」について深掘りしていきます。
誰が見ても良い物件なら、誰でも売れる
そもそも、営業マンであるあなたが考える良い物件とは何でしょうか。
・予算より少し安く収まる
・駅が近いけど音は静か、日当たりがいい
・駐車場は広い、バルコニーも広い
・築浅でリノベーションされている
・希望のエリア内、又は人気のエリア
・間取りが大きい、収納スペースが多い
・希望条件が完璧に揃っている
おそらくこのような物件を思い浮かべるでしょう。
もちろん、それは良い物件です。
しかし、その物件ならあなたが存在する必要はありません。
おそらく、誰が案内しても、お客様は「これ欲しい」となり、勝手に売れます。
ポータルサイトを見れば、お客様自身でも見つけられます。

だから、不動産仲介営業マンが存在する価値は、そこではないところにあります。
本当に「良い物件」とは何か?
不動産仲介営業のプロとして考える良い物件とは、
「お客様が住宅購入の意味を理解し、購入に向き合ったタイミングで購入できる予算内の物件」
です。
つまり、
その目の前に居るお客様にとって、市場にある物件の中で、最も条件に合致している物件。
それが、お客様にとっての良い物件です。
決して、
「誰が見ても一番人気の物件=いい物件」ではないということ。
これを理解しておく必要があります。
「一番」を追い続ける営業は、お客様の時間を奪う
営業をしていると、
「もっと良い物件ありませんか?」
と言われます。
そのたびに、
またレインズから物件を探す
また資料を送って紹介する
また案内する
また次の宿題をもらう
また来週。また来月・・・
そして、
「気になる物件があればご連絡ください。」
と伝える・・・

これ、本当に意味がありますか。
この状態で、お客様がお家を決められる想像がつきますか。
結局のところ
・再案内が切れない
・宿題だけ増える
・返事が来ない
・連絡が取れなくなる
この流れになっていませんか。
今回の記事では、この点を今一度、見つめなおして欲しいと思っています。
答えを出せるお客様なら、営業はいらない
よく、営業成績が振るわない営業マンや、現場に出始めてから数ヶ月たった頃の新人営業マンが言う言葉があります。
「条件に合う物件がないから…」
でも、
その「条件に合う物件がない」と言う状況を作っているのは営業マン自身なのです。
自分自身で「購入する物件はこれだ!」と答えを出せるお客様なら、
営業マンから説明を受ける前に、ネットだけで情報を見て、そのまま一気に購入申し込みをしているハズです。
しかし、現状として私が知る限り、一般の居住用物件の市場において、そのように流通する仕組みにはなっていません。
その証拠に、不動産ポータルサイトには、数多くの物件情報が掲載されていますが、
ネット通販のように「今すぐ購入する」というボタンは存在せず
「見学予約をする」「資料請求をする」というボタンです。

ポータルサイトを見ても、購入意思決定には至らず
我々、営業マンの存在が必要なのは、
お客様自身で
・この物件が最適なのか?
・他に条件に当てはまる物件があるのでは?
・もっと安いのはないのか?
・隠れた問題はないか?
・もう少し待てば価格が下がるのでは?
という答えが出せないからではないでしょうか。
住宅購入には常に
- 不安や迷い
- 相場の変動
- 購入するタイミング
- 住宅ローンの可否
- 家族の希望
これら、たくさんの判断材料があります。
これらの判断材料を1つひとつ整理し、不安なくご購入できるようにするために、我々、営業マンが存在しています。
もしも、これらすべてをAIが解消してくれるなら、私たち不動産仲介営業マンの存在意義はなくなりますが、
不動産購入には、お金・仕事・家族・タイミング・嗜好性・気になるポイントが千差万別であり、理屈では説明しきれない感情なども伴うため、不動産仲介営業はAIでも代替できない仕事だと、私は考えています。
「○年間、家を探しています」は、本当に探しているのか
「なかなかいい物件が無くて、3年間ずっと探しています。」
「希望条件が厳しいのは分かってるんですけど、諦めたくなくて去年からずっと探してるんです。」
よく、こんなお客様に出会うことがあります。
でも、考えてみてください。
営業マンは、ここで一度考える必要があります。
そのお客様は、本当に3年間探しているのでしょうか…?

毎日、欠かさずポータルサイトを見て来たのでしょうか。
毎日、新着物件を確認して来たのでしょうか。
実際は・・・
週に一回。気が向いた時だけ。
なんとなくポータルサイトを検索。
住宅購入の評論家になっているだけ。
そんなケースも決して少なくありません。
このようなお客様に、
- 住宅を購入する意味と目的
- 相場の成り立ち
- 購入の最適なタイミング
これが伝えられなければ、
営業をしている意味がありません。
実際にあった事例
実際にあった事例です。
あるお客様から問い合わせがありました。
実はその方、
1年前に同じマンションの別住戸を買い逃していました。
しかも、1年経ってお問い合わせがあった物件は、
・同じマンション
・同じような条件
・リフォーム済
1年前とほぼ同じ内容です。
唯一、1年前と違ったのは価格だけ。
買い逃して1年間待ったことにより、
価格が約300万円高くなっていました。
そして、そのお客様はご案内前の時点で、
「値下げ交渉したい。」
と言っていました。

1年前に買い逃したマンションとほぼ同じ条件で
価格だけ300万円上がっているから
「300万円も上がって、ぼったくってるのか?」
「同じ物件なのに、1年でそんなに価格が上がるはずがない!」
ひょっとしたら、そう思っていたのかもしれません。
気持ちとしては理解できます。
お客様にとっては、条件が合致しているのにも変わらず、
1年前と比較して「価格が高い」と感じていることで
「いい物件」と呼べるには足りなかったのかもしれません。

しかし、結果的にそのお客様は、満額で物件の買付をいただくことになりました。
一体、なぜでしょうか・・・?
これこそ、今回の「いい物件とはなにか?」に通じてくる視点です。
結論、担当した営業マンが、
・なぜ今真剣に向き合うべきなのか
・この一年で失ったものは何か
・今後さらに失う可能性はどのくらいか
・一番大切にしなければいけないことは何か
・そもそも誰のために買う家なのか
・値下げ交渉することのリスクは何か
これを整理して伝えたからです。
買う意味が理解できれば、人は明確に判断できます。
つまり、「いい物件がない」という言葉の裏には、
本当に物件が存在しないのではなく、
お客様が購入を判断できる状態まで整理されていない
という問題が隠れていることが少なくありません。
営業の役割は、誰もが欲しがる物件をレインズから探し続けることではなく、
目の前のお客様にとって「今、買う意味のある物件」を一緒に見つけることです。
物件そのものではなく、お客様の考え方や判断基準が整理された瞬間、
それまで2番手、3番手に見えていた物件が「一番良い物件」に変わることも珍しくありません。
いい物件を作る準備
では、改めて、お客様にとって「いい物件」を見つけるには
どうすれば良いのでしょうか。
①まずは予算を決める
・月々いくらまで払えるか
・これ以上は払えない金額
・自己資金はいくらまで出せるか
・管理費・修繕費・駐車場代も含める
・将来修繕費が上がる前提で考える
・借入可能額を明確にする
ここが曖昧だと、物件は永遠に決まりません。
②エリアを広げる
次に、エリアです。
営業マンは、希望のエリアだけ聞いて終わってはいけません。
少しでも通勤できる可能性があるなら、足を伸ばせる可能性があるなら、エリアを広げ、該当する物件は全部お見せし、比較してもらうことが重要です。

その上で
- AとBなら、どちらが良いと感じたか?
- BよりもCが良いと感じたのはなぜか?
- 通勤が40分・築25年・3300万円のAと、通勤は50分・築30年・3000万円のB、どちらが今後の生活に合ってそうですか?
と優先順位を付ける。これが重要です。
比較対象が増えるほど、一番良いと感じている物件は、より良く見えて一番になります。
逆に、案内件数を減らし、お客様が比較できる材料を減らす営業ほど、お客様は自分にとって最適な物件を決めらないのが、常です。
面倒なことをやる営業マンほど売れている
不動産仲介の営業経験を積んでくると、
「この人はこの物件かな〜」
と勝手に物件を絞り始めます。
しかし、営業マンの予想と、お客様が気に入る物件は違います。
中途半端に予測をして、中途半端に準備をして、
目の前のお客様がお家を買えない未来に導いてしまう。
お客様は、住宅を買えないまま、時間だけが過ぎる。
お客様の希望条件を元に徹底的に準備する。
物件を見ていただき、比較をして、購入する意味は何なのかを明確にする。
そして、その場で判断できる状態を作る。
どちらが営業としての結果につながるかは、言うまでもありません。
最後に
「良い物件がない。」
そう思った瞬間、不動産仲介の営業の足は止まります。
我々、不動産仲介の営業は、お客様の言う「良い物件」が出てくるのを待つ仕事ではありません。
今ある物件の中で、お客様にとって一番になる理由を一緒に整理する仕事です。
誰が見ても良い物件を売るのではなく、
お客様にとって良い物件を見つける。
そして、その物件の価値を理解していただく。
それが不動産仲介営業の仕事です。
だから私は、営業マンに伝えたいのです。
良い物件を探すのではなく、お客様にとっての良い物件の定義を変えてください。
そこが変われば、
案内も、
提案も、
契約も、
すべて変わっていきます。

