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なぜ住宅ローンの事前審査は不動産会社を通した方がいいのか?【不動産売買仲介営業】

#不動産仲介#住宅ローン#営業

不動産仲介営業の現場で、お客様へ住宅ローン事前審査のお願いをすると、お客様からこんな言葉が返ってきます。

「自分で銀行に相談してみます。」
「ネット銀行の方が金利が安そうなので。」
「給与口座のある銀行で申し込もうと思っています。」

どれも、おかしなことは何も言っていません。

だから新人営業マンの多くは、ここで黙ってしまいます。

「そうですよね、分かりました。」

そう言って引き下がる。

 

しかし、これはお客様の意向を尊重したのではありません。

説明できる材料を持っていなかっただけです。

この記事では、その説明できる材料を解説します。

 

いちばん誤解されやすいこと

事前審査を自社で預かりたいと言うと、お客様からこう思われることがあります。

「会社の利益になるからでしょう。」

ただ、ハッキリさせておくと
住宅ローンの事務代行をしても、基本的には不動産仲介の営業マンには一円も入りません。

融資事務手数料は金融機関に支払われるものであり、仲介会社の売上ではありません。
(自社やグループ内に金融会社を持つ一部の大手を除けば、業界全体としてはこれが実態です。)

 

つまり、営業マンにとって事前審査の代行は、

  • 書類の説明をして
  • 必要書類を揃えていただき
  • 金融機関に持ち込み
  • 進捗を追いかけ
  • 決済日から逆算して調整する

という、報酬ゼロの実務です。

 

それでもなぜ、営業マンは「うちを通させてください」と言うのか。

理由は一つしかありません。

その方が、お客様の住宅購入が成功する確率が上がるからです。

新人営業マンは、まずここを自分の中で腹落ちさせてください。
自分が一円も得をしないと分かっていれば、この提案は堂々とできるはずです。

 

銀行は「融資のプロ」・不動産会社は「住宅購入のプロ」

銀行の担当者は、住宅ローンの専門家です。

金利、審査基準、返済方法、団体信用生命保険。
これらについては、営業マンより遥かに詳しく説明してくれます。

ただし、銀行の役割は融資を実行することです。

  • この物件は相場より高いのか
  • 今申し込むべきなのか
  • 他に比較すべき物件はあるのか
  • 売主との交渉状況はどうなっているのか

こうしたことを判断する立場にはありません。

 

一方、不動産会社が見ているのは、物件探しから引渡しまでの全工程です。

だから営業マンは、

「この銀行を使ってください」ではなく、
「このお客様には、この銀行が合っている」という順番で考えます。

 

 

同じ条件でも、結果は変わる

例えば、転職したばかりで、勤続3ヶ月のお客様。

A銀行は、勤続1年未満という理由で否決。
B銀行は、同業界・同業種からの転職であれば前職と通算可、という取扱いで可決。

年収も、購入したい物件も、まったく同じです。

 

もしこのお客様が一人でネット銀行に申し込んでいたら、 手元に残るのは「否決」という結果だけかもしれません。

 

そして、多くの場合こう思います。

「うちは住宅ローンが組めないんだ。」

そうして、購入そのものを諦めてしまう。

 

これは大げさな話ではなく、現場では実際に起きます。

同じことが、自営業のお客様、車のローンが残っているお客様、 収入合算を希望する共働きのお客様にも起こります。

金融機関ごとの取扱いの違いを知っているかどうかで、 買えるはずの人が買えなくなることがあるのです。

 

「どこで審査を出すか」と「どこで借りるか」は、別の話

ここが、この記事でいちばん重要です。

お客様が事前審査を渋るとき、頭の中ではこうなっているケースも多いです。

事前審査を出す = その銀行で借りることが決まる

しかし、実際はそんなことはありません。

 

住宅ローンの事前審査は、

  • 費用はかかりません
  • 複数の金融機関に同時に出せます
  • 通しても、そこで借りる義務はありません

つまり、事前審査は「決定」ではなく「比較材料の取得」というものなのです。

 

だから営業マンが言うべきことは、
「自分でネット銀行で審査を出すのはやめてください」ではありません。

「まず一本審査を通しておきましょう。比較するのは、その後で構いません。」

これです。

 

お客様の選択肢を奪う提案ではなく、最適な選択肢を持つための提案に変わります。

新人営業マンが押し負けるのは、たいてい 「うちを通してください」という取りに行く言い方をしているからです。

言い方を変えるだけで、断る理由がなくなります。

 

金利だけで比較すると、見落とすもの

「ネット銀行の方が金利が安い」

これは事実です。否定する必要はまったくありません。

ただし、お客様にお伝えすべきことがいくつかあります。

 

1. 実質負担は、金利だけでは決まらない

融資事務手数料が借入額の2.2%かかる商品が多くあります。 4,000万円を借りるなら、およそ88万円です。

保証料型・手数料型のどちらを選ぶかでも総額は変わります。

金利だけを並べた比較表は、比較になっていません。

 

2. 審査に時間がかかる

来店不要で完結する分、書類のやり取りは郵送やアップロードが中心になります。

物件を申し込んでから逆算すると、間に合わないことがあります。

住宅購入では、「安いが遅い」は選択肢にならない場面があります。

 

3. 書類収集を、お客様が全部一人でやることになる

源泉徴収票、課税証明、既存借入の残高証明。

どこで何を取るのか、何が足りないのか。 それを自分で調べながら進めることになります。

 

4. 団信の引受条件が違う

健康状態によっては、金利より団信の方が決定的な条件になることがあります。

 

 

これらを踏まえて、お客様にはこう伝えます。

「安いのには理由があります。その理由が、お客様の条件と噛み合うかどうかを一緒に確認しましょう。」

ネット銀行を否定せずに、比較の土台を作る側に回る。 これが、この場面での正しい立ち位置です。

 

事前審査を預かれないと案件が「見えなくなる」

ここからは、営業マン側の実務の話です。

 

お客様が事前審査を自身で進めた場合、営業マンには審査の進捗を知る手段がありません。

つまり、審査の進捗や結果をお客様に聞くしかなくなります。

そして、お客様から言われない限り、何も分からない状態になります。

 

否決をお客様は言わない

もし仮に、何かしらの理由で秘訣になったとしましょう。

住宅ローンの否決は、お客様にとって非常に言いづらい出来事にもなりえます。

年収や借入状況を否定されたように感じる方もいます。

だから、営業マンには伝えたくない心理も働きます。

すると、連絡が途絶える。 返信が来なくなる。 理由が分からないまま、案件が消える。

これは、現場で起こり得ることです。

 

否決の「本当の理由」は誰にも分からない

不動産会社を通しても、銀行が否決の厳密な理由を教えてくれることはありません。

これは金融機関の原則であり、どこを経由しても変わりません。
お客様がご自身で行っても、同じです。

 

ただし、差は出ます。

普段からやり取りのある金融機関の担当者であれば、

「今回は、お借入の状況が少し影響しているようです」
「勤続年数のところで難しかったようです」
「金額を少し落とせば、可能性はあるかもしれません」

といったニュアンスは伝えてもらえることもあります。

 

これは制度ではなく、担当者との関係性の中で得られる情報です。

そして営業マン側にも蓄積があります。

何十件、何百件と審査を見ていれば、 「この条件でこの結果なら、原因はおそらくここだ」という見立てが立ちます。

つまり、

  • 銀行から得られるニュアンス
  • 営業マンが持つ経験則

この二つを合わせることで、次の一手が打てるようになります。

 

・金額を下げるのか。
・別の金融機関に出し直すのか。
・既存借入を整理してから再度出すのか。

お客様が一人で申し込んで否決された場合、 手元に残るのは「ダメでした」という結果だけです。

ここに具体的かつ有効的な次の一手が、存在しません。

 

事前審査を預かるということは、 書類を代わりに出すことではなく、お客様の状況を把握し続けることです。

把握できていれば、動ける。 把握できていなければ、待つことしかできません。

 

事前審査をお預かりする説明の型

現場では、理屈より言葉が必要です。 断り文句ごとに、そのまま口に出せる形にしておきます。

 

ケース1:「自分で銀行に相談してみます」

「もちろん大丈夫です。 ひとつだけお願いがあって、その結果だけ私にも共有していただけますか。 と言うのも、審査の状況が分からないと、私の方でご紹介できる物件の価格帯が決められないんです。 良い物件が出たときに、すぐ動けるようにしておきたいので。」

ポイント:止めない。共有だけ確保する。

 

ケース2:「ネット銀行の方が金利が安そうなので」

「そうですね、金利は確かに低いです。良い選択肢だと思います。 ひとつだけお伝えしておくと、事務手数料が借入額の2.2%かかるところが多くて、4,000万円だと約88万円になります。 ここまで含めた総額で比べないと、実際どちらが安いかは出てこないんです。 あと、審査に少しお時間がかかるので、良い物件が出たときに間に合うかどうかも見ておきたいところです。 なので、まず当社の提携先で一本だけ通しておきませんか。 通しても借りる義務はありませんし、ネット銀行と比べる材料になります。 比較して、安い方を選んでいただいて構いません。」

ポイント:否定しない。総額と時間軸を足す。比較の土台に回る。

 

ケース3:「給与口座のある銀行で申し込もうと思っています」

「いいと思います。取引実績があると有利に働くこともあります。 ただ、住宅ローンは金融機関ごとに取扱いがけっこう違っていて、 勤続年数や既存のお借入の見方も、銀行によって変わるんです。 一行だけだと、その結果が良いのか悪いのかを判断する基準がないので、 比較用にもう一本、こちらでも出しておきませんか。 結果を並べて、条件の良い方を選んでいただくのがいちばん確実だと思います。」

ポイント:一行だけでは「基準」ができない、という切り口。

 

いちばん伝えたいこと

新人営業マンは、「自社で事前審査を取ること」を目的にしないでください。

事前審査の代行で、営業マンが得るものは何もありません。 手間だけがかかる仕事です。

それでも預からせていただきたいのは、

  • 金融機関ごとの違いを踏まえて、通る可能性の高いところに出せる
  • 否決されたときに、次の一手を用意できる
  • 審査の進捗を把握し、契約日・決済日から逆算して調整できる

からです。

銀行は、住宅ローンという一つの工程の専門家です。

不動産会社は、住宅購入というプロジェクト全体を設計する立場にあります。

問われているのは「どの銀行を使うか」ではなく、「誰が全体を設計するか」です。

この視点を持てるようになったとき、 事前審査のお願いは、お客様から何かを取る行為ではなくなります。

お客様が、良い物件に出会ったその瞬間に迷わず動ける状態を、 先に作っておく仕事になります。

この記事の著者

関根 祐太

株式会社Re-Branding 代表取締役
不動産 売買仲介営業 専門/研修講師
 
不動産をはじめ10業種以上の営業現場経験を経て、2023年に株式会社Re-Brandingを設立。1on1などを通して社員一人ひとりの本音や課題に向き合い、組織力を強化する支援を行う。離職率40%削減や売上140%向上といった成果を創出。
 
【専門分野】
不動産売買仲介/離職防止と組織力強化/営業プロセス改善
  
「一人ひとりの本音に向き合い、課題の本質を共に探り、解決へ導く」ことを信条に、企業の未来を共に形作るパートナーとして活動中。

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