後からトラブルにならない営業とは?売れる人ほど「前」を大切にしている【不動産売買仲介営業】
不動産仲介営業をしていると、こんな経験はありませんか。
- 「そんなに早く契約なんですか?」
- 「親に相談してからでもいいですか?」
- 「そんな話、聞いてません。」
- 「手付金って必要なんですか?」
- 「急かされている気がします。」
新人営業であれば、一度は経験する場面でしょう。
そして、その度に、
「え、なんで今さら?」
「もっと早く言ってくれれば…」
「そんなこと言い出すと思わなかった…」
と思ってしまいがちです。
しかし、私は現場で何年も営業を見てきて思うことがあります。
実は、このような問題の多くは、お客様に原因があるのではありません。
営業マンの伝え方に原因があります。
今回は、私が営業をする上で常に意識している考え方。
「前前前」の法則
について解説したいと思います。
これは不動産仲介営業だけではありません。
社内での報連相、家族との会話、友人との約束。
すべてのコミュニケーションに共通する、とても大切な考え方です。
「後から説明する営業」は必ず苦しくなる
まずよくあるケースを紹介します。
新人営業ほど、ことが必要になってから説明します。
例えば、購入申し込みが決まってから
「契約は今週中になります。」
と言う。
契約日が決まってから
「手付金が100万円くらい必要になります。」
と言う。
物件を押さえるためには事前審査が必要だから
「審査を先に進めましょう。」
と言う。
すると、お客様はどう感じるでしょうか。
「なんで、そんなに急なんですか?」
「そんなこと聞いてません。」
「そんな話、初めてです。」
こう思われるのも当然です。
営業マンにとって、不動産購入に関することは毎日やっている仕事です。
でも、お客様にとって住宅購入は人生で何度も経験するものではありません。
営業マンの”当たり前”は、お客様にとっては”初めて聞く話”なのです。
だから、営業マンにとっては当たり前でも、お客様は急に言われたように感じます。
しかし、お客様にとって、本当に「急な話」だったのでしょうか。
いいえ、違います。
営業マンが、必要になるまで伝えなかっただけなのです。
「前前前」の法則とは何か
営業では、何でも「前」に行うことが重要だと、私は伝えています。
私が大切にしているのは、3つの「前」です。
① 前提条件
② 前振り
③ 前置き
この3つです。
たったこれだけですが、これを意識するだけで、お客様とのコミュニケーションは驚くほど変わります。
まず、最も重要な一つ目、
「前提条件」
についてお話しします。
第1の「前」:前提条件を合わせる
営業マンとお客様では、持っている情報量が圧倒的に違います。
営業マンは、
住宅購入の流れを知っています。
契約までの日数も知っています。
住宅ローンも知っています。
手付金がどういうものかも知っています。
でも、お客様は知りません。
だから営業では、説明する前に、
まず
前提条件を合わせる必要があります。
例えば、営業マンは
「何十件も見ても決まらないし、気に入ったら3〜5日くらいで契約になる。」
思っています。
でも、お客様は
「物件は何件も見ながら半年くらいかけて探すもの。」
と思っているかもしれません。
この時点で、前提条件がズレています。
このズレを放置したまま営業を進めると、
後で必ず
「そんなに早いんですか。」
「何でそんなに急かすんですか。」
「もうちょっと見たいんですけど。」
になります。
他にも例はあります。
営業マンは、住宅ローンの事前審査は当然必要だと思っています。
でも、お客様は、
「契約が決まってから審査するもの。」
と思っているかもしれません。
営業マンは、契約日に手付金が必要だと思っています。
でも、お客様は、
「お金は最後に払うもの。」
と思っているかもしれません。
営業マンは、親への相談も案内前に済ませていると思っています。
でも、お客様は、
「購入する家を決めてから相談しよう。」
と思っているかもしれません。
このように、営業マンとお客様では、
住宅購入に対する”常識”が違います。
だからまず、お互いがどんな認識でいるのか、この前提条件を合わせることが大切なのです。
前提条件がズレると、すべてがズレる
営業中に起きるトラブルの多くは、
実は物件が原因ではありません。
価格が原因でもありません。
前提条件のズレ、認識のズレです。
例えば、営業マンは、
「今日は条件整理をして、気に入る物件があれば申し込みまで進む可能性もある。」
と思っています。
しかし、お客様は、
「今日は見るだけ。」
と思っています。
これでは、物件を気に入った様子で申し込みの話になった瞬間、空気が一気に変わります。
営業マンは、
「良い物件だから申し込みましょう。」
と言います。
でもお客様は、
「今日はそんなつもりじゃない。」
となります。
どちらも悪くありません。
最初の認識が違っていただけなのです。
前提条件を合わせると質問が変わる
前提条件を合わせる営業マンは、
説明ばかりしません。まず、確認します。
例えば、こんな質問です。
「今日はどこまで進めるイメージで来られましたか?」
「気に入る物件があれば、申し込みまで考えていますか?」
「親御様へのご相談は、どのタイミングで考えていますか?」
「住宅ローンの流れは、どのくらいご存じですか?」
「契約までのスケジュールは、どのようなイメージを持っていますか?」
この質問をするだけで、お客様の中の前提条件が見えてきます。
どのくらいの視点で考えているかが分かります。
そして、お客様との認識と自分が認識している情報にズレがあれば、最初に擦り合わせればいいのです。
営業とは、認識を揃える仕事
営業というと
説明が上手い人。
話が上手い人。
説得が上手い人。
そう思われがちです。
しかし、現場で成果を出し続けている営業マンを見ると、共通していることがあります。
それは、説明が上手いことではありません。
認識を揃えるのが上手い。
これです。
- お客様がどんな前提で来店しているのか。
- 何を知っていて、何を知らないのか。
- どこで勘違いしているのか。
そこを整理してから営業を進めています。
だから、後になって
「そんな話聞いてない。」
「急にそんなこと言われて、不信感を抱きました。」
と言われることが限りなく少ないのです。
第2の「前」:前振りをする
前提条件を合わせたら、次に大切なのが前振りです。
前振りとは、
「これから先、こういうことが起こりますよ。」
と、お客様の心の準備を作ることです。
映画やドラマでいうと”伏線”のようなものです。
物語の序盤で何気なく出てきた出来事が、終盤になって
「あの場面は、この為だったのか!」
と繋がることがあります。
だから、物語に違和感がなく、自然に受け入れられます。
営業も同じです。
これから起こる出来事を、あらかじめ伝えておく。
そうすることで、お客様は後から驚くことなく、
「以前聞いていた話だ。」
と自然に受け止めることができます。
例えば、
・気に入った物件があれば、購入申込書を書いていただきます。
・購入申込書を書いたら、契約までは3〜5日程度で進みます。
・契約日には手付金が必要になります。
・住宅ローンの事前審査は先に進めます。
これらは、起きてから伝えるのではなく、起きる前に伝える。
これが前振りです。
すると、お客様は予め、心の準備ができます。
前振りをして少なからず心の準備ができていると
例えば、気に入った物件があったとして契約日を決める時でも、
「以前お話しした通り、このくらいの日程で進みます。」
となるため、お客様からして、急かされている印象がありません。
「あ、前にも言ってたね。」となります。
逆に前振りがないと、営業マンにとっては当たり前でも、お客様にとっては唐突で突然です。
だから、
「なんでそんなに急なんですか?」
という反応になります。
営業とは、相手を驚かせない仕事とも言えます。
この先の未来に起こることを、一歩先に伝えておく。
これだけで、お客様の安心感は大きく変わります。
前振りは営業だけではない
これは日常生活でも同じです。
例えば、今夜、友人と食事の約束をしていたとします。
仕事が長引いてしまい、待ち合わせ時間になってから
「ごめん、あと15分遅れる。」
とLINEで連絡するのでは遅いでしょう。
仕事が長引きそうな事が分かった時点で
「今日の仕事が長引きそうだから、15分くらい遅れる。ごめん!」
と言われたらどうでしょうか。
同じ15分遅刻でも、受ける側の印象はまったく違います。
不動産営業も同じです。
「後から説明する」ではなく「先に伝えておく」
この違いだけで、人と人との信頼関係は大きく変わります。
第3の「前」:前置きを入れる
3つ目は、前置きです。
前置きとは、以前伝えた内容を思い出してもらうための言葉とも言えます。
例えば、
「以前お話ししたように…」
「最初にご説明した通り…」
「前回のご案内の際にもお伝えしましたが…」
この一言です。
営業では、いきなり本題の話に入ってしまう人が少なくありません。
例えば、
「契約日は明後日でできればと思うんですが…」
だけでは、お客様は急に感じます。
「以前お伝えしたように、気に入った物件は早めに契約へ進みます。その流れに沿って、契約日は明後日で調整したいと思っています。」
このように前置きを入れるだけで、相手の受け止め方は大きく変わります。
なぜなら、お客様は
「初めて聞いた。」
ではなく、
「そうだ、前に聞いてた話だった。」
と認識できるからです。
これは映画の例えで言えば “伏線回収” のようなものです。
最初に伝え、最後に思い出してもらう。
だから納得していただけるのです。
「前前前」ができる営業は信頼される
繰り返す通り、営業が上手い人とは、
話が上手い人でも、
説得が上手い人でもありません。
相手が安心して判断できる状態を作れる人です。
そのためには、
▶︎前提条件を合わせる
お客様が何を知っていて、何を知らないのかを確認する。
▶︎前振りをする
この先、何が起きるのかを事前に伝える。
▶︎前置きを入れる
以前伝えたことを思い出してもらってから本題へ入る。
この3つが自然にできる営業は、
「聞いていません。」
「そんな話でしたっけ?」
「急かされてるように感じる。」
と言われることが圧倒的に少なくなります。
「前前前」は営業だけの話ではない
私はこの考え方は、不動産営業だけの話ではないと思っています。
社内の報告でも同じです。
部下への教育でも同じです。
家族との会話でも同じです。
例えば上司への報告も、結果だけ伝えるのではなく、
事前に
「こういう方向で進めようと思っています。」
と共有しておく。
部下へ仕事を依頼する時も、目的や完成イメージを最初に共有しておく。
夫婦でも、大きな金額の買い物や、外せない予定があるなら、
当日ではなく事前に話しておく。
人間関係のトラブルの多くは、価値観の違いではなく、認識のズレから生まれます。
だからこそ、「前」を意識することが大切なのです。
まとめ
営業が上手い人ほど、特別なテクニックを使っているわけではありません。
やっていることは、とてもシンプルです。
- 前提条件を合わせる。
- 前振りをする。
- 前置きを入れる。
この「前前前」を徹底しているだけです。
お客様が「聞いていない」と感じる場面をなくし、安心して判断できる状態をつくる。
それが、不動産仲介営業の本来の役割です。
契約を急がせる営業ではなく、判断しやすい環境を整える営業。
その積み重ねが、お客様からの信頼につながり、結果として契約にもつながっていきます。
今日からぜひ、自分の営業を振り返ってみてください。
「今説明していることは、本来もっと前に伝えるべき内容ではなかったか。」
そう考えるだけでも、あなたの営業は大きく変わり始めるはずです。
