型を持ち、型を破る!マニュアルを活かして進化できる営業マンの特徴
営業の世界では、マニュアルに従うことが基本中の基本。
しかし、ただマニュアルに頼っているだけでは、成約率を上げることは実際のところ難しい場面も多いでしょう。お客様一人ひとりのニーズや状況に応じて柔軟に対応できる営業マンこそが、成功を手にするのです。
この記事では「型を持ち、そして、型を破る」その重要性について掘り下げ、営業の現場で実際に成果を上げた事例を通して、どのようにして営業スキルを進化させるのかを解説します。
顧客との信頼を築きながら売上を上げるための秘訣を学んでみましょう。あなたの営業スタイルに変革を起こす第一歩になるはずです。
マニュアルの本質を理解する
営業における「マニュアル」と聞くと、多くの人は即座に「これに従えばうまくいく」という固定されたガイドラインをイメージするかもしれません。
しかし、営業という仕事において、顧客は一人ひとり異なる背景やニーズを持っているため、単純にマニュアルに沿って進めるだけでは十分な成果を上げることはできません。ここでは、まず「マニュアルとは何か?」について深く考えてみましょう。
マニュアルは基礎
営業における「マニュアル」とは、新人営業マンが迷わないように、営業の基礎となる知識やトークスクリプトを整理したものです。この基礎を徹底的に理解し、マニュアル通りに進めることが、営業の第一歩です。
特に新人のうちは、経験が乏しいため、何が正解なのかが分かりにくい場面も多いでしょう。マニュアルは、迷うことなく確実に成果を出すための羅針盤とも言えます。
トークマニュアルは営業の土台
営業の現場は、毎回異なる顧客や状況に対して対応しなければならないため、混乱しやすいのも事実です。マニュアルがない状態で、いきなり現場に出されると、顧客とのコミュニケーションがスムーズに進まず、信頼関係を築く前に商談が崩れてしまうことがあります。
トークマニュアルは、そんな不安を取り除き、スムーズに進行するための土台となる存在です。
特に新人営業マンは、初めての商談で緊張することが多く、どう話を進めればよいのか迷うこともあります。トークマニュアルは、そのような状況で確実に進むための手助けをしてくれるのです。つまり、マニュアルは営業活動の基礎を築くものであり、その重要性をしっかり理解し、身につけることが営業の第一歩と言えます。
マニュアルを研究する
確かに、トークマニュアルには「このフレーズを言えば、契約が取りやすい」といった趣旨の文言が含まれているのは間違いないでしょう。その言葉自体はとても有用なものであり、契約へと導く言葉かもしれませんが、それをただ機械的に覚え、話すだけでは、顧客の心には何も伝わりません。
営業トークマニュアルには、上司や先輩たちが積み上げてきた成功のデータと経験が反映されていますが、何の意味もなくその言葉に行き着いたわけではなく、すべてのフレーズや流れには理由が存在しているのです。
だからこそ、営業マンは常に以下のような問いを持ちながらマニュアルを学ぶべきです。
- この一言を言うことで、どのような効果があるのか?
- この質問をここで入れることで、顧客にどんな印象を与えるのか?
- なぜこの順序で話が進められるのか?
- この言葉が後の展開でどこに作用してくるのか?
- この注意を入れておくことで、何の意思決定に影響を与えるのか?
トークマニュアルは、単なる言葉の羅列ではありません。
そのフレーズが商談全体にどのような影響を与え、どの場面で効果を発揮するかを深く理解することが必要です。言葉の意味をしっかり探究し、伝える背後にある意図を理解することが、トークマニュアルを理解することの本質です。
「型」を持つことの重要性
営業活動の初期段階において、すぐに柔軟な対応ができるようになることは簡単ではありません。そこで重要になるのが「型」を持つことです。
「型」とは、営業の基本的な流れや対応のスキルを確立した枠組みのことを指します。初めて営業に挑む人がこの「型」を持たなければ、現場での対応に迷いが生じ、顧客とのやり取りがスムーズに進まなくなってしまいます。
基礎を知らなければ応用はできない
「型」を持つということ。それは、基本的なトークマニュアルをしっかりと覚え、まずはその通りに対応することを指します。
特に新人営業マンにとっては、この基礎がしっかりしていなければ、応用が効かない場面で混乱しやすくなります。まずはマニュアルを隅々まで覚え込み、基本を徹底することが第一のステップです。
新人営業マンが最初から柔軟な対応をしようとすると、かえって効果的ではないことが多々あります。なぜなら、経験が浅いため、状況を正確に把握できず、どのようにアレンジすべきかが分からないからです。
まずはマニュアル通りに進め、その上で経験を積むことで、少しずつ応用力を身につけることが求められます。
「型」に従って進めることで、時間やエネルギーを無駄にすることなく、効率的に成果を上げることができるのです。
「型」を使いこなすことで信頼を築く
マニュアルという「型」をしっかりと使いこなすことは、顧客との信頼関係を築く上で非常に重要です。
前述の通り、トークマニュアルには、先輩営業マンたちの成功事例が詰まっています。そのため、それを基本にした営業トークを行うことで、自然と顧客からの信頼を得ることができるのです。
例えば、初めての商談で顧客から想定外の質問が飛んできた場合でも、トークマニュアルに沿って対応すれば、しっかりとした対応ができ、信頼感を与えることができます。この「型」を何度も繰り返すことで、自然と自分のスタイルが身につき、応用が効くようになるのです。
まずはマニュアル通りに進め、その後、少しずつ応用力を身につけていく。この段階を踏むことで、自然と営業スキルは進化していきます。
「型を破る」とは?
「型」を身につけた営業マンが次に向かうステップは、「型を破る」ことです。
誤解を招かないようにお伝えしますが、ここで言う「型を破る」とは、単にマニュアルを無視するという意味ではありません。
むしろ、顧客の状況や反応に応じて、時にはマニュアルを適切にアレンジし、最も効果的な対応を行うことを指します。つまり「型を破る」とは「顧客に合わせた対応力」を指すと言えるでしょう。
ここでは、この「型を破る」について詳しく掘り下げていきます。
マニュアルの限界
マニュアルは営業の基本を提供しますが、それをそのまま使い続けると、次第に限界が訪れるのも事実でしょう。顧客は一人ひとり異なり、同じトークが全員に通じるわけではありません。
特に、顧客が抱える個別の悩みや要望は時として複雑であり、マニュアル通りの対応では解決できない場合も多いのです。
例えば、ある顧客が「10万円以内で探している」と話したとしましょう。マニュアル通りであれば、その予算に見合った商品を提案することがセオリーかもしれません。
しかし、もしその顧客が予算内の商品で満足できる様子ではなく「もう少し価値のあるものが欲しい」と感じていたとするならば「予算内ではこの商品しかありません!」とするのではなく、あえて11万円の商品を提案することも選択肢に入れるべきです。
マニュアルに固執してしまうと、顧客にとっての最良の提案を見逃してしまうことがあるのです。
「型を破る」というのは、このような場面でマニュアルに囚われず、顧客の声や状況に応じて、柔軟に対応できる力を意味します。マニュアル通りに進めるのは一つの方法に過ぎず、営業において最も大切なのは「顧客にとって本当に価値のある提案をすること」「顧客にとって本当に価値あるものを選択いただくこと」です。
型を破るために必要な能力
「型を破る」ためには、顧客とのコミュニケーションにおいて、単に言葉だけでなく、相手の表情や言葉の裏に隠された意図を読み取る力が必要です。これが「行間を読む」「空気を読む」という能力と言われるものです。
例えば、顧客が「これ、悪くないですね。」と言った場合、それが「購入したい」という意思表示なのか、それとも「少し悩んでいる」というサインなのかを判断するのは簡単ではありません。
しかし、相手の表情や声のトーン、体の動きなどの微細なシグナルに注意を払えば、その裏にある本当の感情を読み取ることができます。
「型を破る」営業マンは、このような場面で顧客の本音を探りながら、柔軟にトークを展開します。「先ほどの〇〇について、どう感じますか?」などと追加で質問を投げかけ、顧客の本音を引き出すのです。
これにより、マニュアル通りでは対応しきれない顧客のニーズに応じた対応が可能になります。
成功する営業マンは「型を持ち、型を破る」
営業マンとして成功するためには、ただマニュアルに従うだけではなく、必要な時に「型を破る」ことが不可欠だと説明しました。
ここでは、成功する営業マンがどのように「型を持ち、型を破る」のかを解説します。
基本はマニュアル – 「型を破る」前に「型を守る」
当たり前な話ですが、営業マンが「型を破る」ためには、最初に「型」を徹底的に理解し、それを守ることが大前提です。型が何か分かっていない、あるいは型を無視したままの営業は、単なる「暴走」となり、最終的に顧客にも会社にも悪影響を及ぼします。
特に新人営業マンは、まずマニュアル通りに進めることで、商談をスムーズに進行させ、結果を出すことが求められます。
繰り返しになりますが「マニュアルに完全に依存するのではなく、その裏にある意図を理解する」ということです。各フレーズや手法に込められた意味を深く掘り下げることで、マニュアルが単なるルールブックではなく、柔軟な営業の基盤となることを再意識しましょう。
型破りステップ1 – 顧客の反応を観察する
型を破るための最初のステップは、顧客の反応をしっかりと観察することです。
これは、トークマニュアル通りに話している最中でも、相手の表情、態度、声のトーンなどをよく見て、どこのトークで顧客がどのように感じているかを常に確認するということです。
例えば、ある話の部分で、顧客が笑顔で頷いていれば、こちらの話に興味を持っている可能性が高いでしょう。一方で、ある言葉を伝えた途端に眉をひそめていたり、目線を逸らすなどの行動が見られた場合は、顧客が何かに不安や不満を感じているかもしれません。
このような状況を把握するために、顧客との対話を「聞く」姿勢で臨むことが重要です。トークマニュアルを覚えて話すだけでは限界が来る、と言うことの真意はここにもあります。ただ話すだけではなく、相手の反応を見ながら会話を進めることで、次のステップに進む準備が整うのです。
型破りのステップ2 – 型を少しだけアレンジする
顧客の反応に基づいて、マニュアルに沿ったトークを微調整する、つまり「アレンジ」することが次のステップです。ここでは、完全に型を破るのではなく、あくまでマニュアルを基にしながら“少しだけ”柔軟性を持たせる対応が求められます。
例えば、あるトークを話している際の顧客が「ふ〜ん」と言った表情の場合、その裏にある本音を引き出すために「もし、ご不安に思われている点があれば、ぜひお伺いしたいのですが…?」などの問いかけを入れてみることも考えられます。
このように、型の中で追加の質問や言葉を挟むことで、顧客の本音を引き出すことができるのです。
この時の注意点は、必ずしもすべてのマニュアルを無視して独自のアプローチに走らないことです。あくまでマニュアルに基づきながら、顧客に合った微調整を行うことが肝心です。
型破りのステップ3 – 自分の色を出す
マニュアルに基づいた型を守りながら、少しずつ自分の営業スタイルを織り交ぜていくことが、このステップの核心です。
これは、営業マンとしての個性を活かしつつ、顧客に合った提案を行うことを意味します。
例えば、マニュアルにあるセリフに少しユーモアを加えたり、自分の経験を交えて説明することで、顧客との距離を縮めることができます。マニュアルには無い例え話や、過去の事例、最新のデータなどを伝えてみることも検討できます。
ただし、この段階でも「基本はマニュアル」という姿勢を忘れないことが大切です。営業マンの個性が強すぎると、顧客によってはそれを負担に感じる場合もあります。そのため、自分の色を出す際にも、顧客の反応をよく観察し、常に適度な調整をすることが求められます。
型を破ることの臨界点
営業マンが型を破る際に陥りがちな問題は、マニュアルから完全に離れてしまい、独自のスタイルに偏りすぎることです。これが「暴走」となり、結果的に会社の営業方針から逸脱するリスクがあります。
あなたの会社内に「あの人は、型破りな営業マンだ!」と言われながら成績優秀な人がいるかもしれません。そんな人は、暴走機関車の如く、自由奔放で我が道を行っているかのように見えているかもしれません。
しかし、実はそのような営業マンほど基本に忠実であり、社内の規範をしっかりと守っていることが多いものです。彼らはただの「自由奔放」ではなく、しっかりとマニュアルを理解し、守るべきポイントは守りつつ、適切な場面で自分の色を出しているのです。
一方で、成績が上がらない営業マンほど、基本の「型」を無視し、自己流に走りがちです。これが顧客の不信感や、成果の低迷につながることが多いのです。
したがって、「型を破る」というのは、全てを壊すことではなく、マニュアルを基にした上で、顧客の状況に合わせた適切な対応を行うことです。マニュアルから完全に逸脱してしまうことがないよう、営業マンは常に基本に立ち返りながら、状況に応じた柔軟な対応を心がけるべきです。
型を守りつつ進化するための3つのポイント
この章の最後に、型を破りながらも成果を出すための重要な心構えを、改めて3つご紹介します。
- マニュアルを基にしたアプローチを常に忘れない
型を破る際にも、必ずマニュアルの基本に立ち返り、それを基に柔軟に対応することが重要です。
- 顧客の反応をよく観察し、状況に応じたアレンジを行う
相手の反応を見ながら、トークを微調整し、顧客の本音を引き出すことが大切です。
- 社内規範を守ることを最優先に
個性的なアプローチも大切ですが、最終的には社内の営業方針や規範を守ることが必要です。これを守らないと、チームの一員としての信頼を失いかねません。
このようにして、マニュアルをベースにしながらも、適切に型を破るための手順やポイントを詳しく説明しました。顧客にとって最善の提案をするためには、常に柔軟な対応が求められますが、そのためにはマニュアルという土台を忘れずに、しっかりと自分の色を加えていくことが肝心ということを忘れないでください。
結論: 「型を持ち、型を破る」ことで営業の幅を広げよう
ここまで、「型を持ち、型を破る」ことの重要性について解説してきました。
最後に、実際の現場で「型を破る」営業マンがどのように成果を上げているのか、一つの例をご紹介します。
新築住宅を探していた顧客と商談をしていました。顧客の予算は3,000万円でしたが、どれも気に入ることが出来ず、顧客は「もう少し考えたい」と言っていました。
ここで、この営業マンはマニュアルに従い、顧客の予算内の物件を再提案することもできましたが、彼はあえて「型を破る」選択をしました。
「実際に見ていただいたこの物件よりも少し価格が上がり、予算を超えてしまいますが…」と、3,000万円の物件よりも顧客にとって価値が見出せる可能性がある物件について、具体的に説明しました。
この時、彼は「予算を超えた提案は失礼にあたるかもしれない」という固定観念を破り、顧客にとっての家を買うことの本当の価値を見出そうとしたのです。
その結果、顧客は再考し、最終的には「3,150万円の物件を購入することは、将来にとって価値がある」と納得して購入に至りました。
このように、営業マンが顧客の希望条件に固執せず、真のニーズに応じた提案を行ったことで、顧客にとって最良の選択を提供できたのです。
営業マンとして成功するためには、トークマニュアルをしっかり覚え、基本を身につけることが重要です。しかし、その「型」に縛られていては、顧客の本当のニーズを見逃しがしてしまう可能性があります。
今回の記事では「型を持ち、型を破る」ことの重要性について解説し、実際に顧客に合わせた柔軟な対応が成約に繋がった事例を紹介しましたが、営業マンが本当に目指すべきは、ただのマニュアルの遂行者ではなく、顧客の心に響く提案を行うことです。
型を超えた提案が信頼を生み、成約率を高めます。今日からあなたも「型を持ち、型を破る」営業スタイルで成果を上げましょう。