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営業の聞き方が変わる!なぜヒアリングに“比較”が必須なのかを脳科学から解説

#セールス#ヒアリング#営業#研修

はじめに:営業のヒアリングがうまくいかない理由

「お客様がなかなか決めてくれない…」
「条件を聞いても、結局どうすればいいかわからない…」
「『とりあえず考えます』と言われてしまう…」

営業の現場では、こんな悩みを抱えている方が多いのではないでしょうか?
実は、これらの原因の多くは 「比較がないヒアリング」をしてしまっていること にあります。

人間は 「絶対的な価値」ではなく「相対的な違い」によってしか判断できない」 ということが、脳科学や心理学の研究で明らかになっています。

つまり、「Aエリアに住みたい」「3LDKがいい」というお客様の希望も、比較対象がなければ 本当にそれが最適なのか?」 を深く考えることができないのです。

本記事では、 なぜ比較がヒアリングに必須なのかを脳科学的に解説 し、実際に現場で使える 「比較を活用したヒアリングテクニック」 を紹介します。

人間は「比較なしで判断できない」

脳は“差”を基準にしか物事を判断できない

脳科学の研究によると、人間の脳は 「絶対的な基準」ではなく、「相対的な違い」によって物事を認識する」 ことがわかっています。

例えば・・・

「2500万円の家は高いのか?安いのか?」
  → 比較対象がなければ、高いか安いか分からない
 
「東京駅から電車で30分の場所は近いのか?遠いのか?」
 → 何と比較するかで感じ方が変わる

脳が何かを判断するときには、まず 「基準となる情報(アンカー)」 を探します。
この現象は 「アンカリング効果」 と呼ばれ、最初に提示された情報が、その後の意思決定に大きく影響を与えることが分かっています。

アンカリング効果の具体例

  • 5,000万円の物件を見た後に、3,500万円の物件を見ると「安く感じる」
  • 20㎡の狭い部屋を見た後に、50㎡の部屋を見ると「広く感じる」

つまり、 比較を提供することで、お客様の判断を助けることができるということなのです。

 

「選択肢のない質問」は、お客様の決断を妨げる

脳科学的に、人間は 「自由な選択肢を与えられると、むしろ決められなくなる」 という特性を持っています。

この現象は 「決定回避のパラドックス」 と呼ばれています。
与えられた選択肢が1つしかない場合、人は「本当にこれでいいのか?」と疑問を持ち、決断を先延ばしにしてしまうのです。

ヒアリングの悪い例(比較なしのヒアリング)

営業:「希望エリアはどこですか?」
お客様:「Aエリアがいいです」
営業:「なるほど、Aエリアですね!わかりました!」

この会話では、お客様自身も 「なぜAエリアなのか?」 を深く考える機会がありません。

ヒアリングの良い例(比較を使ったヒアリング)

営業:「AエリアとBエリアなら、どちらの方が生活しやすいと感じますか?」
お客様:「Aエリアの方が買い物が便利だからいいですね」
営業:「なるほど!では、買い物の便利さが最優先条件ですね。他の要素はどれくらい重視しますか?」

→ このように、比較によってお客様の本音と優先順位が明確になるのです。

 

比較でお客様の心理的負担を減らす

人間の脳が最も避けたいことは「考えること」と提唱する研究者がいます。この研究に紐づいて「Yes / No で決めるより、A or B で選ぶ方が楽」 という特性が人間の脳にあると言われています。

これは認知心理学の 「選択肢の負荷理論」 に基づいており、人は選択肢が多すぎると決断できないが、2択にすると脳の負担が減り、スムーズに答えられることが分かっています。

【例】「もし、Aの物件とBの物件が同じ価格だったら、どちらを選びますか?」
 →限られた選択肢を与えることで、お客様は「選ぶこと」に集中できるため、決断しやすくなるのです。

人は比較すると本音が引き出される

ヒアリングで 「A or B」 の比較を提示すると、お客様は 「どちらの方が良いか?」 を考え始めます。
この時、お客様は 自分の中で優先順位を整理するため、結果的に本音が引き出される のです。

例:比較を活用したヒアリング

  • 「3LDKと4LDKなら、どちらの方が生活イメージが付きやすいですか?」
  • 「駅近で狭めなお家と、駅は遠いが広さが十分にあるお家なら、どちらの選択を優先されますか?」
  • 「予算2,500万円で少し妥協が残るのと、3,000万円でより理想に近い物件なら、どちらが納得感がありますか?」

このように「比較を使う」ことで、お客様が 自分でも気づいていなかった本音 を話しやすくなるのです。

実践!比較を活用したヒアリングテクニック

ここまで「比較がないとお客様は決断できない」ことを脳科学の観点から説明しました。

しかし、 比較の仕方が甘いと、単なる選択肢の提示に終わり、お客様の本質的なニーズを引き出せません。

ここからは、 実際の営業トークで「比較」をどのように活用するのかを解説していきます。

「ありきたりな質問」と「本質を突く質問」の違い

比較を活用したヒアリングには、 「浅い比較」と「本質を引き出す比較」 の2種類があります。

悪い例(浅い比較)

営業:「A駅とB駅、どちらがいいですか?」
お客様:「うーん…A駅ですかね」
 
 → お客様が深く考えずに答えてしまい、結局理由が分からないまま終わる

良い例(本質を引き出す比較)

営業:「A駅は駅近に商業施設が多くあり便利ですが、B駅は落ち着いた街である代わりに価格が抑えられます。長く住むお住まいとして考えると、どちらが現実的でしょうか?」
お客様:「うーん…確かに価格は抑えたいので、B駅も検討の余地がありますね」
 
 → お客様が「何を重視しているのか?」を考えるきっかけを作れる

比較は「ただの選択肢」ではなく、お客様の優先順位を明確にするために使うことがポイントです。

究極の問いかけ:「もし~だったら?」を活用する

脳科学的に、人間の脳は 「未来を想像する力(メンタル・シミュレーション)」 を持っています。
「もし~だったら?」という仮の状況を提示されると、脳はリアルな未来のシナリオを無意識に作り始めます。

【例】「もしも、生涯と通した支払額で見て、この中古物件にかかる費用と同じ費用で新築に住めるとしたら、どちらを選択されますか?」

 → お客様は「同じ支払額で新築に住む想像をする」ことになり、これまで気づいていなかった価値を再認識するキッカケとなる。

これは 「未来の可能性を考えさせることで、より現実的な選択ができるようになる」という人間の特性を活用しています。

「認知の固定化」を崩し、新しい視点を与える

多くのお客様は、すでに 「なんとなくの希望条件」 を持っています。
しかし、これは過去の経験や思い込みに基づいたものであり、必ずしもこれからの生活に対して最適な選択肢とは限らないのです。

【例】「もし、ご実家から車で10分圏内ではなくても、0歳から入園できる保育園やスーパー・公園などが充実しているエリアがあったら、そこは検討に入りますか?」
 → お客様の頭の中には「実家の近くが絶対条件」という固定観念があるが「子育てが楽な場所があるならOKかも」という新たな視点が生まれることで、選択肢が広がります。

このような問いかけには「認知の固定化」を崩す効果があり、「お客様が気づいていなかった選択肢」を意識させることができるのです。

比較を活用した「本質的な問い」10例

以下のような質問を意識することで、お客様の「本当の決断理由」 を引き出すことができます。

カテゴリ浅い質問(表面的)深い質問(本質を引き出す)
エリア「どのエリアを希望していますか?」「今お考えなのはエリアAですが、路線は変わるけど同じ位の時間で通勤できるエリアBは検討に入りますか?」
価格「ご予算はいくらですか?」「ご予算内で出てきた条件の物件と、ご予算を200万円上げて毎月支払いが3,000円増えるけど、より理想に近づくな物件。どちらが納得したお買い物になりそうですか?」
間取り「3LDKで大丈夫ですか?」「例えば、乗り換え1回すれば4LDKの物件があった場合でも、この駅の3LDK物件を選ばれますか?」
日当たり「日当たりは気にされますか?」「日当たりと広さ、どちらを優先されますか?」
徒歩距離「駅まで何分以内が希望ですか?」「駅まで徒歩10分の物件と、徒歩20分でもその分庭付きで広い物件、どちらがいいですか?」
生活スタイル「どんな暮らしをイメージしていますか?」「休日を家で過ごすことが多いのであれば、リビングを広くする方が快適かもしれませんね?」
将来設計「今後の家族計画はありますか?」「もし仮にご家族が増えた場合でも、このお家は快適に住めそうですか?」
ローン「月々の支払いはどれくらいを想定していますか?」「固定金利と変動金利、それぞれのメリットデメリットはお調べされたことはございますか?」
住環境「静かな環境が良いですか?」「多少騒がしくても利便性がある場所と、静かだけどやや不便な場所、どちらが生活スタイルに合いそうですか?」

まとめ

本記事では、営業のヒアリングにおいて「比較」がなぜ重要なのかを、脳科学・心理学の観点から解説しました。

  1. 人間は比較なしでは判断できない
    • 「アンカリング効果」により、比較対象があることで意思決定がしやすくなる
    • 「決定回避のパラドックス」により、選択肢がないとお客様は決断を先延ばしにしてしまう
       
  2. 比較を活用することで、お客様の本音を引き出せる
    • 「A or B」の質問によって、優先順位を整理しやすくなる
    • 「もし~だったら?」の仮説質問を使うと、新たな視点に気づける
       
  3. 営業の現場で実践できる比較ヒアリングの技術
    • 「ただの選択肢提示」ではなく、「本質的な比較」を行うことで、より深いニーズを引き出す
    • 比較によってお客様の認知の固定化を崩し、最適な選択肢を提案できる

これらを実践するためには、常に実際の営業現場で使えるスキルを、体感しながら習得する必要があります。

  • 「駅近がいい」と言われたら、どんな比較質問ができるか?
  • 「予算内で探したい」と言われたら、どう深掘りできるか?

このような思考を持ち、比較を意識したヒアリングを行うことで、お客様が納得しやすくなり、営業の成約率も大きく向上します。

ぜひ、日々の商談で「比較ヒアリング」を実践してみてください。

この記事の著者

関根 悠太

株式会社Re-Branding 代表取締役
社外1on1研修トレーナー/顧問編集者
 
経営者の言葉を最高のカタチに変える専門家であり、中小企業の離職率改善や売上拡大を支援する実践派コンサルタント。顧問編集者として、経営者の志を深掘りし、ブランドメッセージやストーリーを構築する一方で、営業コンサルタント・社外1on1研修トレーナーとして、社員一人ひとりの本音や課題に向き合い、組織力を強化する支援を行う。
 
コンサル・不動産など10業種以上の現場経験を経て、2023年に株式会社Re-Brandingを設立。Webメディア立ち上げや顧客インタビュー、社内外での研修プロジェクトに携わり、離職率40%削減や売上140%向上といった成果を創出してきた。
 
これまでに執筆したブログ記事は200本以上、インタビュー記事は50本、ライティング経験は合計1000通以上。独自のアプローチで経営者のビジョンを言語化し、企業ブランディングや課題解決に貢献している。また、「社長と社員の翻訳機」として、双方の橋渡し役を担い、信頼関係の構築を通じて企業成長を加速させる。
 
【主な実績】
・離職率を40%削減し、年間2000万円の採用育成コストを削減
・営業改革により売上140%向上を達成
・セミナー販売成約率70%超、クライアントが国際的大会でグランプリ獲得
 
【専門分野】
離職防止と組織力強化/営業プロセス改善/言語化を通じた企業ブランディング
  
「一人ひとりの本音に向き合い、課題の本質を共に探り、解決へ導く」ことを信条に、企業の未来を共に形作るパートナーとして活動中。

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