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プロ失格!その気遣いが、営業マンとしての価値を下げている。【不動産売買仲介営業】

先日、営業研修で物件予算設定に関するロープレをしていたとき、こんな言葉が出てきました。

「少し、お金の話をしても大丈夫でしょうか?」

一見すると、丁寧で礼儀正しい言葉遣いです。

しかし、私はたったこの言葉だけでも、違和感を覚えました。

これは敬語の使い方の話ではなく、営業マン自身が、お客様に対して必要以上に遠慮・気を遣いながら、相手の機嫌を損ねないように会話している様子を感じたからです。

私は、これを「御用聞き営業」(お客様から言われた希望や要望をそのまま受け止めて、こなすだけの営業)と呼んでいます。

この御用聞き営業をやっているうちは、少なからず不動産売買仲介営業では、本当の意味でお客様から信頼される営業にはなれません。

今回の記事では、この「御用聞き営業」が、なぜ不動産営業マンとしての価値を下げることになるのか。営業マンがお客様に対して持つべきスタンスについて解説します。

 

なぜ「御用聞き営業」ではダメなのか?

御用聞き営業はお客様に主導権を渡してしまう

御用聞き営業の最も大きな問題は、「営業の主導権がお客様に移ってしまうこと」です。

例えば、予算設定をする場面で、

「お金の話をしても大丈夫ですか?」
「ご年収をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

と、必要以上に遠慮しながら質問する。
もちろん、丁寧な言葉遣いやプライバシーへの配慮は必要です。

 

しかし問題は、その言葉の裏側にある営業マンの意識です。

「こんなことを聞いたら嫌がられるかな?」
「まだお金の話をするのは早いかな?」
「お客様が嫌そうだったら、やめておこうかな?」

こうした意識で接客していると、お客様の反応によって営業の進め方が決まってしまいます。

お客様が乗り気なら話す。でも、嫌そうなら話をやめる・・・
「事前審査はまだちょっと」と言われ、それ以上何も踏み込まない・・・
「帰る」と言われたからそのまま帰してしまう・・・

これでは、営業マンが主導権を持っているとは言えません。

 

そもそも、営業マンは何のために存在しているのでしょうか?

お客様から言われた物件を紹介して、現地の鍵を開けて、物件の説明をする。それだけでは、以前の記事でもお伝えした「物件頼りの営業」と本質的に変わりません。

お客様の反応や顔色を伺うことが営業の中心になってしまう。
これが御用聞き営業の問題です。

 

 

お客様は、そもそも住宅購入の進め方を知らない

ここで、もう一つ考えてほしいことがあります。

そもそも、お客様は住宅購入について最適な進め方を知っているのでしょうか?

例えば、初めて住宅購入を検討しているお客様。

家を買いたいという気持ちはあっても、

  • 何から始めればよいのか
  • いくらまでの住宅を購入できるのか
  • 何を基準に物件を比較すればよいのか
  • いつ購入を決断すればよいのか

こうしたことを、最初から理解しているとは限りません。

だからこそ、不動産会社に相談に来ているわけです。

にもかかわらず、

「どうされたいですか?」
「次はどうしましょうか?」
「どんな物件がよろしいですか?」

と、ひたすら御用聞きをしていたらどうなるでしょうか。

 

住宅購入の進め方を知らないお客様に、その進め方を委ねていることになります。

例えば、お客様から、
「とりあえず、いろいろな物件を見てみたいです」
と言われたとします。

そこで、
「かしこまりました。では、いろいろご案内しますね!」
と答えて、本当に気になる物件を見にいくだけでは、ただの御用聞き営業です。

 

本来であれば、

「もちろん、物件を比較することは大切ですから見に行きましょう!
 ただ、その前に、購入物件の予算を決めてしておくと、あれこで見る必要がなくなり、判断しやすくなります。まずは物件予算から一緒に考えていきましょう!」

と、営業マンが道筋を示す必要があります。

 

 

御用聞き営業では、お客様の問題は解決できない

今回の研修では、新人営業マンにこんな例え話をしました。

例えば、営業の仕事で悩んでいる新人がいたとします。

「お客様への伝え方が分からないんです」
「なかなか自信が持てないんです」

そんな相談を受けたとき、研修担当である私が、

「そうだよね〜」「分かるよ〜」「うんうん、大変だよね〜」

と、ひたすら話だけを聞いていたらどうでしょうか。

 

もちろん、相手の話を聞くことは大切です。

しかし、話を聞くだけで、その新人の悩みは改善するのでしょうか?

本人が気づいていない問題や、間違った考え方を修正するためには、時に、

「その考え方は違うよ」
「まずはここから変えていこう」

と、指導する側が方向性を示さなければなりません。

不動産営業でも同じです。

お客様の話を聞くことは必要ですが、聞くだけでは不十分です。

お客様自身が気づいていない問題を発見し、必要な情報を提供し、住宅購入に向けて進めていく。

御用聞き営業の本質的な問題は、お客様の問題を解決するための主導権を、営業マン自身が持てていないことなのです。

 

営業マンは「聞いて当然・話して当然」という意識を持て

年収を聞くことに、なぜ遠慮するのか?

今回の研修で、私が特に強調したのが「当然意識」という考え方です。

例えば、住宅購入でローンを検討しているお客様に、年収を確認する場面。

 

相手の機嫌を損ねないように、とても丁重に、

「昨年のご年収についてお伺いしたいのですが、お答えいただいてもよろしいでしょうか?」

という言葉が出てきたとき、私は新人営業マンにこう伝えました。

「そもそも、年収を聞くことに何の遠慮があるの?」

お客様は、何のために不動産会社に、物件の見学に来ているのでしょうか・・・?

答えは一言、住宅を購入したいからです。

では、住宅を購入するためには何が必要でしょうか。

当然、予算を決める必要があります。

予算を決めるためには、住宅ローンの借入可能額や、無理なく返済できる金額を把握する必要があります。

そのためには、年収や既存の借入状況などを確認しなければなりません。

つまり、年収を聞くという行為は、営業マンが好き勝手に聞きたいから聞いているわけではなく、無造作に個人情報を取得したいからではなく、

お客様の住宅購入という目的を実現するために、必要だから聞いているのです。

 

例えば、

「住宅購入を進める上で、まず大切なのが予算設定です。無理のない資金計画を一緒に考えていきたいので、昨年のご年収を教えてください」

と伝えればよいわけです。

もちろん、年収は個人情報ですから、確認する目的を説明し、適切に取り扱うことは当然です。

 

しかし、「個人情報への配慮」と、「必要以上に遠慮する」ことは別の話です。

私は、営業マンにはこの「当然意識」を持ってほしいと考えています。

 

朝、会社に出社したら「おはようございます」と挨拶しますよね。

「おはようございますと言ったら嫌がられるかな?」

なんて、いちいち考えないはずです。

不動産営業における必要なヒアリングも、意識としてはそれくらい当たり前のものであってほしいのです。

予算を決めるのは当然!
年収について確認するのも当然!
購入動機や不安を確認するのも当然!

それらはすべて、お客様の住宅購入という人生の大イベントを成功させるために必要なことだから聞くのです。

 

医者が診察に遠慮していたら、患者はどう思うか?

この「当然意識」を理解してもらうために、こんな例も共有しておきます。

例えば、あなたが腹痛で病院に行ったとします。

医者が診察を始めるときに、

「すみません、ちょっと…
 こんなこと急に言い始めて申し訳ないんですけど…
 お腹を見せてもらっても、大丈夫でしょうか…?」

と、必要以上に言葉を選び、遠慮しながら聞いて来たらどう思いますか?

「この医者、大丈夫か?」

と、少し不安、むしろ不審、もっと言えば気持ち悪い、と思うでしょう。


一方で、

「では、お腹を診ますので、服を少し上げてください」

と、言われたらどうでしょうか。特に違和感はないはずです。

 

患者は自分の体の問題を診てもらうために病院に来ており、医者は診断に必要なことをしているだけだからです。

普段の飲酒量を聞くことも、生活習慣を確認することも、普段飲んでる薬も、患者の状態を正しく把握するためです。

 

不動産営業も同じです。

お客様の問題を把握する。
住宅購入に対する不安を確認する。
購入可能な予算を整理する。

これらは、住宅購入の専門家として必要な仕事です。

 

専門家が必要なことを堂々と行う姿勢は、お客様の安心感にもつながります。

逆に、営業マンが必要以上に遠慮していると、

「そんなに聞きづらいことなのかな?」
「何か営業側の都合があるのかな?」

と、余計な疑問を生んでしまうこともあります。

丁寧であることと、自信がないことは違います。

お客様への配慮は必要ですが、必要なことを聞くたびに申し訳なさそうにする必要はありません。

 

問題は言葉遣いではなく「何のために聞くのか」

ここまで読んで、

「では、『お伺いしてもよろしいですか?』という言葉を使わなければよいのか」

と思った方もいるかもしれません。

しかし、そういう話ではありません。

 

言葉遣いだけを変えても、根本的な問題は解決しないからです。

例えば、

「年収を教えてください」

と言ったとしても、営業マン自身が、

「本当は聞きづらいけど、会社に聞けと言われているから聞こう」

と思っていたら、その遠慮は表情や声のトーンに表れます。

 

逆に、

「お客様の資金計画を考えるために必要だから、しっかり確認しよう」

という意識があれば、自然と伝え方も変わります。

ここで大切なのは、何のために、その質問をしているのか?ということです。

「年収を聞くこと」自体が目的になると、

「どうやって聞こう?」
「嫌がられたらどうしよう?」

と、質問することばかりに意識が向きます。

しかし、本来の目的は年収を聞くことではありません。
お客様の住宅購入を実現するために、適切な予算を設定することです。

 

年収を聞くことは、そのための手段でしかありません。

聞くことが目的なのではなく、お客様の問題を解決し、願望を実現することが目的なのです。

 

「御用聞き営業」の反対とは何か?

営業マンはお客様を引っ張る存在でなければならない

では、ここまでお伝えしてきた「御用聞き営業」の反対にあるものは何でしょうか。

私は、それが「リーダーシップを持った営業」だと考えています。

御用聞き営業は、お客様の反応を待ちます。

一方、リーダーシップを持った営業マンは、お客様に進むべき道筋を示します。

例えば、予算設定の場面。

御用聞き営業では、

「ご予算はどうしましょうか?」
「この中で気になる物件があったらご連絡ください」

と、お客様の回答を待つだけになりがちです。

 

しかし、リーダーシップを持った営業マンであれば、

「まずは無理のない予算を一緒に決めていきましょう!そのために、現在の収入や毎月の支払いについて確認していきますね」
「この中で一番気になるものから一緒に見に行きましょう!」

と、次に何をするべきかを示します。

我々営業マンは

「一緒に行きましょう!一緒にやりましょう!一緒に決めましょう!」

というリーダーシップを発揮した言葉は常に発せられるようになって欲しいのです。

これは、強引に営業を進めろという意味ではありません。お客様の目的を達成するために必要なことを、営業マンが自信を持って提案するという意味です。

お客様に合わせることだけが、良い営業ではありません。

お客様が望む未来に向かって進めるように、営業マンが先導して引っ張っていくことも必要なのです。

 

リーダーシップとは強引に売り込むことではない

リーダーシップを持つということは、営業マンがすべてを勝手に決めるという意味ではありません。

「この物件がいいので、これにしましょう」
「今買った方がいいので、今日決めてください」

と、お客様の意思を無視して進めることは、リーダーシップではありません。

それは単なる押し売りです。

住宅を購入するかどうかを最終的に決めるのは、お客様です。

では、営業マンは何を主導するのでしょうか。

それは、お客様が納得して意思決定できるようになるまでのプロセスです。

 

例えば、お客様が物件選びで迷っているなら、

  • 何に迷っているのかを明確にする
  • 判断に不足している情報を確認する
  • 希望条件の優先順位を整理する
  • 比較するべきポイントを示す

こうしたプロセスを営業マンがリードすることで、お客様は納得できる判断をしやすくなります。

ヒアリングも、そのために行うものです。

お客様の言うことを何でも聞くためではなく、現状を理解し、問題を発見し、願望実現に必要なことを明確にするために行います。

リーダーシップとは、お客様を無理やり動かすことではなく、お客様が自分の意思で前に進めるように導くことなのです。

 

住宅購入という一大プロジェクトの”キャプテン”になれ!

住宅購入はお客様の人生を左右する一大プロジェクト

「あなたは、お客様の住宅購入という一大プロジェクトのキャプテンなんだよ」

研修で、私は新人営業マンにこんな話をしています。

 

住宅購入は、多くのお客様にとって人生で何度も経験するものではありません。

数千万円という大きなお金が動き、住宅ローンを組み、これから何十年と暮らす場所を決める。

家族にとって、非常に大きなライフイベントです。

お客様には、

「こんな家に住みたい」「こんな暮らしをしたい」
「家族とこんな生活を送りたい」

という希望があります。

 

しかし、その希望を実現するために、何をどの順番で進めればよいのか、わかっている人は少ないでしょう。
なぜなら、初めての経験である場合がほとんどだからです。

だからこそ、不動産営業マンが必要なのです。

営業マンは単に物件を紹介するだけではありません。

お客様の希望を整理し、資金計画を考え、物件を比較し、購入までの道筋を示す。

住宅購入という一大プロジェクトを成功に導くことが、営業マンの役割なのです。

 

 

キャプテンがチームメンバーの御用聞きだけをしていたら?

例えば、野球部のキャプテンが、ずっとメンバーの顔色をうかがうだけで、

「最近調子が悪いから、佐藤には声かけにくいな…」
「あいつに話かけて大丈夫かな、嫌われないかな…」
「俺が前に出て話したら、皆になんて思われるかな…」

そんなキャプテンがいたら、チームはどうなるでしょうか?
そのキャプテンと一緒に戦っていけそうでしょうか?

もしも、チームが苦しい状況になったとき、ずっとチームメンバーの顔色を伺うキャプテンだったら、他に誰がチームを引っ張るのでしょうか。

 

キャプテンは苦しいときこそ声を出しているはずです。

「まだ大丈夫だ!」
「次のプレーに集中しよう!」
「ここから立て直そう!」

そうやって、チームを前に進めようとします。

 

不動産営業も同じです。

お客様が迷っているとき。
お客様が不安になっているとき。
どうすればよいか分からなくなっているとき。

営業マンまで一緒になって不安そうにしていたら、お客様は安心してついていけません。

お客様の顔色をうかがうだけではなく、お客様が前に進めるように引っ張る。

 

これが、営業マンに必要なリーダーシップです。

 

お客様にとっての「頼れるリーダー」になれ

私は、新人営業マンに対して、目の前のお客様にとってのリーダーにはなってほしいのです。

お客様が予算について悩んでいるなら、
「まずは無理のない支払い額を一緒に考えましょう」

物件選びで迷っているなら、
「一度、希望条件の優先順位を整理しましょう」

と提案する。

お客様が気づいていない問題があるなら、それを伝える。

間違った認識を持っているなら、正しい情報を提供する。

こうした一つ一つの行動が、リーダーシップです。

 

そして、そのためには営業マン自身の役割認識を変える必要があります。

自分を御用聞きだと思っていれば、お客様から言われることを待つようになります。

自分を物件案内係だと思っていれば、物件を紹介することが仕事の中心になります。

しかし、自分を住宅購入のリーダーだと認識していれば、

「このお客様が住宅購入を成功させるために、次は何をするべきだろう?」

と考えるようになります。

同じ営業マンでも、役割認識が変われば、考えることも行動も変わるのです。

 

まとめ|営業マンの役割を変えよう

今回は、御用聞き営業がなぜいけないのか、そして営業マンに必要なリーダーシップについて解説しました。

重要なのは、次の4つです。

  1. 御用聞き営業では、お客様に主導権を委ねてしまう。
    営業マンが必要なプロセスを示すことが大切。
  2. 必要なことは「聞いて当然・話して当然」。
    お客様の願望実現に必要な確認に、過度な遠慮はいらない。
  3. 営業マンに求められるのはリーダーシップ。
    お客様が納得して判断できるように、道筋を示す。
  4. 住宅購入という一大プロジェクトのキャプテンになる。
    物件を紹介するだけでなく、購入までを導く存在になる。

最後に、新人営業マンの皆さんに考えてほしいことがあります。

お客様に何かを質問するとき、提案するとき、迷っているとき。

「こんなことを聞いても大丈夫かな?」
「嫌がられないかな?」

と、お客様の顔色ばかりをうかがっていないでしょうか。

もちろん、お客様への配慮は大切です。

しかし、それ以上に大切なのは、自分は何のためにお客様の前にいるのかということです。

営業マンは、お客様の御用聞きではありません。

住宅購入という一大プロジェクトを成功に導く、リーダーであり、キャプテンなのです。

「お伺いしてもよろしいですか?」から、「一緒に進めていきましょう」へ。

まずは、その意識を変えることから始めてみてください。

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