営業トーク、暗記したのに話せない?その原因と解決策を解説 | 株式会社Re-Branding

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営業トーク、暗記したのに話せない?その原因と解決策を解説

#セールス#営業#研修#能力開発

はじめに:トークは“覚える”だけでは足りない

営業職として配属されたばかりの新人が最初に直面する課題のひとつに、「営業トークが覚えられない」「覚えたはずなのに本番で言葉が出てこない」という悩みがあります。

トークスクリプトを必死に暗記しても、いざお客様を前にすると頭が真っ白になる——。

こうした現象は多くの営業パーソンが経験することであり、珍しいことではありません。

本記事では、英語学習法として実績のある「シャドーイング」や、脳科学に基づいた「歩行×発話」の効果を応用し、営業トークを“記憶から実践へ”とつなぐ方法を紹介します。

 

目次

なぜトークが「頭に入ったのに、口から出てこない」のか?

多くの新人営業が最初につまずくのは、“覚えたのに話せない”という壁です。この現象の根本には、「インプット」と「アウトプット」の仕組みの違いが存在します。

「記憶している」と「使える」には大きな隔たりがある

私たちは、テキストを何度も読み返すことで「覚えた気」になります。

しかし、これは脳内に情報が“存在している状態”に過ぎず、“取り出して使える状態”ではありません。営業トークにおいて重要なのは、まさにこの「情報を取り出す瞬間の再現性」です。

これは、心理学の分野で「再生(recall)」と「再認(recognition)」という用語で区別されます。

多くの人は、台本を見れば「見たことある」「わかる」と思える=再認、はできていても、相手を前にして自発的に話す=再生、ができていないのです。

情報は“使う行為”によって初めて定着する

記憶の定着には、「アウトプットを伴うインプット」が極めて重要です。

実際に声に出す、誰かとロールプレイする、質問に答える——こうした“使う”経験を重ねることで、脳は情報を「重要だ」と判断し、長期記憶として保持しやすくなります。

つまり、「覚えたのに出てこない」という現象の本質は、記憶が定着していないのではなく、「記憶を呼び出す訓練が不足している」ことにあるのです。

 

英語学習のプロが推奨する「シャドーイング」はなぜ効くのか?

「シャドーイング」とは、音声で流れてくる英文や会話を、ほんの少し遅れてそのまま“影のように”復唱していく学習法です。

英語学習者の間では、リスニング力とスピーキング力の向上に高い効果があるとして知られており、実際にプロの通訳者や英会話スクールでも広く活用されています。

実はこのシャドーイング、営業トークの習得にも驚くほど応用が可能です。以下にその理由を解説していきます。

“聞いて、真似して、話す”ことで記憶回路が強化される

シャドーイングは、次の3つの要素を同時に鍛えるトレーニングです。

  1. 聴覚記憶の強化:耳から入ってきた音声情報を即座に処理し、記憶に留める
  2. 発話反射の強化:聞こえた内容を即座に口に出すことで、反射的な言語反応が育つ
  3. 実践再現力の向上:自然な文の構造やリズムを身体で覚えることができる

この3つはそのまま、営業トークにも必要なスキルです。

特に「とっさに返す力」や「言い回しの定着」は、机の上でスクリプトを読むだけでは身につきません。

英会話も営業トークも「瞬発力」と「身体化」がカギ

営業トークでは、話す内容だけでなく「間の取り方」「語尾のトーン」「滑らかな流れ」も重要です。これらは“知識”ではなく、“身体に染み込ませる”ことでしか習得できません。

まさに英会話におけるシャドーイングと同様、営業トークも音声とリズムの再現が極めて重要なのです。

つまり、「覚える」から「話せる」へと変換する最も有効な手段として、シャドーイングは非常に理にかなった方法だと言えるでしょう。

 

ウォーキングしながら話すことで脳が覚醒する科学的理由

シャドーイングが営業トークの習得に有効であることは前章で述べましたが、その効果をさらに引き上げる方法として注目されているのが、「歩きながらシャドーイングをする」というトレーニングスタイルです。

一見すると単なる“ながら作業”のように思えるかもしれませんが、実はこの方法には脳科学的に裏付けられた記憶定着の効果があるのです。

歩行が脳に与える3つの好影響

ウォーキングは単なる運動ではなく、脳に次のような恩恵をもたらします。

  1. 脳の血流が増加し、前頭前野が活性化する
     歩くことで心拍数が上がり、脳への血流が増加します。これにより、記憶や思考、判断力を司る「前頭前野」の働きが活発になり、集中力や学習効率が向上します。
     
  2. セロトニン分泌が促進され、記憶定着が安定する
     セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、感情の安定と深く関わります。歩行はこのセロトニンの分泌を促し、リラックスした状態で学習ができるようになります。
     
  3. リズム運動が記憶と発話の連動を助ける
     一定のテンポで歩くことは、脳にとって非常に心地よい刺激です。このリズムが、音声のリズムや言葉の流れとシンクロしやすくなり、より自然にトークが口から出やすくなるのです。

「動きながら覚える」は原始的かつ効果的な学習法

脳は「行動と結びついた記憶」を優先的に定着させると言われています。
たとえば、「車を運転しながら自然とラジオCMのセリフを覚えていた」とか、「通勤中に聞いていた音楽の歌詞が頭に残っている」経験はないでしょうか?

これは、身体の動き(運転・歩行)と音声情報が結びつくことで、記憶が強化される現象です。

この点で、「歩きながら」「声に出しながら」「営業トークを反復する」という学習は、極めて理にかなったアプローチなのです。単に座って暗記するのでは得られない、“身体で覚える感覚”を得ることができます。

 

営業トークのシャドーイングトレーニングのやり方

ここまでで、「営業トークが話せない理由」や「シャドーイングの有効性」、そして「歩行×発話の脳科学的効果」について解説してきました。ここからは、それらを踏まえた実践的なトレーニング方法について紹介します。

基本ステップは4つだけ

営業トークの定着に効果的な「歩行×シャドーイング」は、以下の4ステップで構成されています。

ステップ1:営業トーク音声を用意する

まず、自社の営業トーク(スクリプト)を音声化します。
自分で録音しても構いませんし、上司や先輩にお願いして「話し方ごと」録ってもらうのも効果的です。営業で重要なのは“セリフ”だけでなく、“間”や“語尾のトーン”なども含めた「音の情報」です。

ステップ2:イヤホンで聞きながら少し遅れて口に出す(シャドーイング)

音声を再生し、1~2秒遅れてそのまま復唱します。
文字を見るのではなく、耳からの情報だけで真似することがポイントです。このとき、内容を完璧に覚えていなくてもかまいません。「意味より音の再現」を優先しましょう。

ステップ3:歩きながら行う(ウォーキング×音読)

慣れてきたら、通勤中や社内の廊下などを歩きながらシャドーイングを行ってみましょう。
軽い運動を伴うことで、記憶の定着率が高まり、より自然に話す感覚が身につきます。リズムに乗ってトークを口に出すことで、発話のテンポや抑揚も身体にしみこみやすくなります。

ステップ4:録音して聞き返す(自己フィードバック)

一通りできるようになったら、自分の声を録音して聞き返してみましょう。
ここで初めて、「自分の話し方のクセ」「言い回しの抜け」などに気づくことができます。さらにブラッシュアップするために、理想の音声と比較しながら練習を重ねてください。

“声に出す回数”が、営業現場での瞬発力を決める

営業現場で言葉が自然に出るようになるには、「どれだけ声に出して練習したか」が決定的に重要です。
頭の中で繰り返しただけでは足りず、実際に声に出した経験値こそが“反射力”を育てます。

このトレーニングは、筋トレに近いイメージです。「腕立てについて100回考えた」だけでは筋肉はつかないように、「トークを頭で繰り返しても」実戦力は育ちません。“声に出した分だけ強くなる”のです。

 

なぜこの方法が新人営業に特に向いているのか?

営業トークの習得において、いわゆる“座学的な暗記”が得意な人ばかりではありません。「机に向かって黙々と覚えるのが苦手」という人も多いですが、その点「歩きながら口に出す」という方法は、これから営業トークを覚えたい人にとって非常に親和性の高い学習スタイルなのです。

身体を動かすことで“考えすぎ”を防げる

営業トークを覚えられない最大の要因は「ミスを恐れて言葉を止めてしまう」ことです。頭で考えすぎるあまり、言葉が出てこなくなる——

これはある種、思考過多による“脳のブレーキ”状態です。

歩きながら声に出すことで、脳が「リズムと運動」に集中し、余計な思考の介入が減少します。結果として、「とりあえず口を動かしてみる」というポジティブな“言語習慣”が形成されていきます。

「ながら学習」なので続けやすい

このトレーニングのもう一つのメリットは、継続しやすいことです。
通勤時間、休憩中の散歩、帰り道など、「ながら」で実践できるため、負担感が少なく、日常に組み込みやすいのです。

「完璧じゃないと練習しちゃいけない」という心理的ハードルを下げることができるため、習慣化もしやすく、結果としてアウトプットの量が自然に増える構造が出来上がります。

成功体験が積み重なりやすい

「昨日よりスムーズに言えた」「録音を聞いたら思っていたより自然だった」など、成長が実感しやすい点も、人にとっては大きなモチベーションとなります。

特に「まだ成果を出せていない」「評価される自信がない」という新人ほど、小さな成功体験の積み重ねが重要です。営業トークの“言えるようになった”という実感は、日々の自信形成に直結します。

 

1日15分の“営業脳トレ”で1週間後には「トークが自然に出る」状態に

営業トークの習得において重要なのは、「完璧を目指して動けなくなる」ことではなく、「まずは毎日少しずつ“話す”経験を積む」ことです。
ここでは、“歩きながらシャドーイング”を営業トレーニングに落とし込んだ7日間の実践スケジュールを紹介します。

実践スケジュール例:1日15分(通勤時や昼休みも活用可能)

日数内容
1日目音声を聴いて流れを把握(意味は意識せず、声に出してみる)
2日目一文ごとに止めながらシャドーイング。音をしっかり真似る
3日目歩きながらシャドーイング(短めのトークでOK)
4日目録音して聞き返す。理想の音声と比較して違いを確認
5日目一度トークを「見ずに」話してみる(暗唱)→録音する
6日目歩きながら“自分の言葉で”言ってみる(自然なアレンジ)
7日目トークの流れを整理し、2本以上続けて練習してみる

「たった15分」で記憶が“反射”に変わっていく

重要なのは、長時間の勉強よりも「短時間の反復」

特に、歩きながらシャドーイングすることで、自然と体と脳がトークのリズムを覚え、「セリフ」ではなく「呼吸の一部」として言葉が出るようになります。

また、録音して聞き返すことで、発話の質も上がっていきます。聞き返すのが恥ずかしいと思うかもしれませんが、自分の成長が最も実感できる瞬間でもあるので、ぜひ習慣にしてみてください。

よくあるつまずきとその対処法

課題対処法
人前で声を出すのが恥ずかしいまずは自宅、または人が少ない道で実施
途中でつまずくと嫌になる完璧を目指さず、流れを止めずに“ごまかしてでも続ける”が大切
続かない時間を決めるよりも「場所」で決める(例:駅から会社まで)

このように、1日15分の積み重ねが、1週間後には「自然に出てくる営業トーク」をつくり出します。

 

まとめ:営業は「情報」ではなく「反射」で勝てるようになる

営業トークは「覚えたかどうか」ではなく、「出てくるかどうか」で勝負が決まります。
つまり、営業という現場では、知識よりも“反射”こそが成果を左右する本質的な力なのです。

今回紹介した「歩きながらのシャドーイング」は、まさにその“反射”を鍛えるための実践的かつ再現性の高い方法です。

  • 暗記が苦手でも、体を動かしながら自然に身につく
  • 机に向かわなくても、日常の中に組み込める
  • 声に出す習慣が、自信と実力を同時に育ててくれる

営業におけるスクリプトは、「丸暗記するもの」ではなく、「身体に染み込ませるもの」です。

ぜひ、今日から1日15分の“営業脳トレ”を始めてみてください。数日後には、自分でも驚くほどスムーズに言葉が出てくるはずです。

トークは、努力の蓄積がそのまま成果に直結する数少ないスキルです。あなたが「自然に話せる人」になる未来は、想像よりずっと近くにありますよ。

この記事の著者

関根 悠太

株式会社Re-Branding 代表取締役
社外1on1研修トレーナー/顧問編集者
 
経営者の言葉を最高のカタチに変える専門家であり、中小企業の離職率改善や売上拡大を支援する実践派コンサルタント。顧問編集者として、経営者の志を深掘りし、ブランドメッセージやストーリーを構築する一方で、営業コンサルタント・社外1on1研修トレーナーとして、社員一人ひとりの本音や課題に向き合い、組織力を強化する支援を行う。
 
コンサル・不動産など10業種以上の現場経験を経て、2023年に株式会社Re-Brandingを設立。Webメディア立ち上げや顧客インタビュー、社内外での研修プロジェクトに携わり、離職率40%削減や売上140%向上といった成果を創出してきた。
 
これまでに執筆したブログ記事は200本以上、インタビュー記事は50本、ライティング経験は合計1000通以上。独自のアプローチで経営者のビジョンを言語化し、企業ブランディングや課題解決に貢献している。また、「社長と社員の翻訳機」として、双方の橋渡し役を担い、信頼関係の構築を通じて企業成長を加速させる。
 
【主な実績】
・離職率を40%削減し、年間2000万円の採用育成コストを削減
・営業改革により売上140%向上を達成
・セミナー販売成約率70%超、クライアントが国際的大会でグランプリ獲得
 
【専門分野】
離職防止と組織力強化/営業プロセス改善/言語化を通じた企業ブランディング
  
「一人ひとりの本音に向き合い、課題の本質を共に探り、解決へ導く」ことを信条に、企業の未来を共に形作るパートナーとして活動中。

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