申し込みに至らない本当の理由と”前前前”の法則【不動産売買 仲介営業】
不動産営業をしていると、
「案内の感触は悪くなかった」
「物件も気に入っていたように見えた」
「質問もたくさん出ていた」
それなのに、申し込みに至らない。
そんな経験はないでしょうか。
- 「もう少し考えます」
- 「他も見てみたいです」
- 「家族と相談してみます」
もちろん、それぞれ理由はあります。
価格の問題かもしれない。
タイミングの問題かもしれない。
家族の事情かもしれない。
でも、現場で若手営業マンを見ていると、
実はもっと手前に原因があることがあります。
それは、
お客様が”買う意欲”を持てていない状態のまま、案内が終わってしまっていることです。
「買う意欲」はなぜ生まれないのか
営業マンは、お客様の購入意欲が上がらないとき、何らかのせいにしがちです。
- 家族の同意がまだ得られていないから
- 条件があやふや過ぎるから
- まだ買うタイミングになっていないから
- そもそも物件がよくなかったから
もちろん、それもあるかもしれません。
でも、購入意欲が上がらない理由として
プロセスが見えていないから、足が止まっている。
これが、もう一つの大きな原因としてあります。
物件は悪くない。条件も悪くない。
でも、進め方が分からないから止まる。
- どうやって家を買うのか
- 何から始めるのか
- 次に何が起こるのか
- どのくらいの期間で進むのか
これが見えていない。
だから、足が止まることがあるです。

ここを見落としてはいけません。
申し込みをしたら次に何があるのか。
契約はどのくらいのタイミングで来るのか。
その間に何を準備すればいいのか。
道筋が見えないから、「買う」という実感が持てない。
自覚が持てないから、次の比較物件に行こうと思わない。
申し込みまでのステップに至らない。
これが、足が止まる構造です。
ニューヨークに行きたい。でも…
少し想像してみてください。
「ニューヨークの自由の女神を見てみたい」と思っている人がいます。
夢のある話です。でも、
・旅費がいくらかかるのか
・飛行機は成田空港から乗るのか羽田からなのか
・フライトは何時間か
・ホテルは1泊いくらか
・空港から市内への移動はどうするのか
全部わからなかったら、ニューヨークに行くイメージが湧きますでしょうか。
湧かないんです。
「よく分からないな」
「調べるの面倒だな」
「いつか行けたらいいな」
で終わってしまうかもしれません。

でも、誰かがこう教えてくれたらどうでしょう。
「千葉から京成電鉄で成田空港まで行って、ユナイテッド航空で約14時間のフライトです。
航空券は往復で50万円前後。
現地のホテルは日本円で1泊5万円くらい。
現地で3泊するなら現地滞在費込みで70-80万円は見ておいてください。
5日間のお休みがあれば十分楽しめますよ。
ちなみに、空港から市内への移動はUberタクシーが安心です」
これだけ分かれば、急に現実味が出てきます。
あとは、
「お金どうするか」「休みをいつ取るか」
という話になり目標が明確になります。
やるべきことが見える。だから動ける。
プロセスが見えると、人は動けるようになります。
お客様が不動産を購入する時も、まったく同じです。
お客様は、買い方を知らない
ここで確認しておきたいことがあります。
お客様は、不動産を購入する「手順」を知りません。
申し込みからどのくらいで契約になるのか?
契約から引き渡しまで何が起きるのか?
その間に住宅ローンの本審査があって、金銭消費貸借契約があって、司法書士のやり取りがあって、引き渡し時の立会いがある。
こういうことを、お客様は知らないんです。
しかも不動産購入には、物件以外に考えることが大量にあります。
ーー住宅ローン、自己資金、税金、ハザードマップ、通勤距離、子供の学区、親の意見、将来の資産性——
これらを一つひとつクリアしていく必要があります。

多くの人にとって、不動産購入は人生で何回も経験することではありません。
だからこそ、先の流れが見えていないと、不安がどんどん積み重なる。
お客様は分からない。
分からないから、不安になる。
不安だから、止まる。
「このまま進んで大丈夫なのか」
「何か見落としていないか」
「本当に今決めていいのか」
先が見えないから、止まってしまうのです。
我々は、
- 申し込み
- 契約
- ローン本審査
- 金銭消費貸借契約
- 決済
- 引き渡し
という流れを知っています。
でも、お客様は知らないから、
「申し込みから3日以内に契約です」
と言われても
「なんでそんなに急なの?」
となる。
何も知らないから、
「今月中に動けますか?」
と言われると
「なんか、急かされている…」
と感じる。
それはお客様が悪いのではなく、前提が違うだけなんです。
お客様は、単に「聞いていなかった」だけです。
「購入の流れ」を先に話すと、何が変わるか
例えば、こんな説明ができるとします。
「もし購入される場合は、次は申し込みになります。」
「申し込み後は、売主様との調整があります。」
「条件が整えば、数日以内に契約になります。」
「他にも検討されている方がいるケースが多く、早く権利を確保するため申込から3日以内で契約が通例になっています」
「その後、住宅ローンの本審査や金消契約を経て、1ヶ月前後でお引き渡しになります。」
「不安なことがあれば、その都度一緒に整理していきますので安心してください。」
これを聞いたお客様の中で、何が起きるでしょうか。
まず、「こういう手順なんだ」という全体像が見えます。
次に、「3日以内に契約というのは、そういう理由があるんだ」という納得が生まれます。
そして、「じゃあ申し込みをするとしたら、自分はいつ動けるか」という具体的な思考が始まります。
頭の中に、購入に向けた”タスク”が見えてくるのです。
「もし進むなら、契約日はいつなら大丈夫だろう」
「仕事の休みは取れるかな」
「妻にもこの流れを共有しておこう」
「必要書類は何だろう」
営業マンが言わなくても、お客様が次の行動を考えるようになります。

タスクが見えると、人は動けます。
プロセスが明確になるから、前に進めるのです。
先に伝えると、後でびっくりしない
購入の流れを先に説明しておくことには、もう一つ大きな効果があります。
先に伝えることで、後から驚かれることがなくなります。
事前に説明していなければ、
「申し込みから3日以内に契約です」
と言った瞬間に
「え?!そんなに急なんですか?」
となります。
でも、先に伝えてあれば、
「以前お伝えした流れですね」
と復習として受け取ってもらえます。

人は、初めて聞いたことには驚きます。
でも、事前に聞いていたことには納得しやすい。
「新築は3棟しかないエリアで、そのうちの1つです!」
と事前に伝えてあれば、お客様は自分でそれを頭の片隅に置いて考え始めます。
「じゃあ油断してたら無くなるかも。」
という自覚も、自然と生まれてくる。
購入意欲が一度上がった状態がブレにくくなるのも、先に伝えてあるからです。
「購入の流れを伝える」は、クロージングではない
ここで一つ、誤解を解いておきたい。
購入の流れを説明することは、無理に買わせるためのクロージングではありません。
目的は、煽ることではありません。
急かすことでもありません。
プレッシャーをかけることでもありません。
目的は、お客様が安心して判断できる状態を作ることです。
「この先はこう進みます」
「ここでこういう判断が必要になります」
「不安があれば、このタイミングで確認できます」
こう伝えることで、お客様は落ち着いて考えられます。

慎重に考えるために必要な材料を渡す。それが、購入の流れの説明です。
初回案内は”物件見学”ではなく”講座”に近い
ここで、初回案内の捉え方を変えてほしいと思います。
初回案内は、ただ物件を見せる時間ではありません。
「家を買うとはどういうことか」
「物件探しはどう進めるべきか」
「申し込み後はどう進むのか」
「どこでつまずきやすいのか」
を伝える時間でもあります。
つまり、初回案内はある意味で”講座”です。

お客様は不動産購入の初心者です。
だから営業マンは、ただ物件を案内するだけでなく、購入までの道筋を教える役割があります。
この感覚を持てるかどうかで、案内の質は変わります。
「今日は物件を見せるだけ」と思っていると、案内は浅くなります。
でも、「今日はお客様が家を買うための基準を作る時間」と思っていれば、話す内容が変わります。
「前前前」が、営業の基本軸
ここまで話してきたことを一言で表すと、
「前前前」です。
“前”に言っておく。”前”に確認しておく。”前提”を合わせておく。
購入の流れも、つまずきやすいポイントも、スケジュール感も、全部前に伝えておく。

良い営業マンは、後出しをしません。
「それ、先に言ってほしかった」
「そんな話、聞いていません」
「急に言われても困ります」
こう思われる状態になると、信頼は下がります。
前に伝えることで、後から「聞いてない」「知らなかった」「びっくりした」という反応が生まれにくくなります。
ネガティブなことも前に伝える。注意点も前に伝える。
今後の流れも前に伝える。
つまずきやすいポイントも前に伝える。
後から説得するのではなく、前に前提を合わせておく。
これが営業の仕事です。
使うエネルギーの使い方が変わる
「前に全部伝える」というのは、最初にエネルギーを大きく使うということです。
- 案内の最初に購入の流れを説明する。
- 前提を合わせる。
- つまずきポイントを先に話す。
不動産購入の進め方について
お客様へ理解を促すためにはパワーが必要になります。
でも、そのパワーを最初に使っておくことで、
後半の流れが圧倒的にスムーズになります。
最初にエネルギーを集中するから、後から「前に言っておいた通り」が使える状態になる。
2回目以降の案内は、物件見学がメインになる。
お客様はすでに購入プロセスを知っているから、余計な不安が出ない。
ブレにくい。
という好循環で進んでいきます。

逆に、最初にエネルギーを使わず、前振りを怠ると、
後からフォローや追客に追われる。
お客様の不安が出るたびに対応しなければいけない。
エネルギーの消耗が続く。
最初に最大のエネルギーを使い、後がどんどん楽になっていく流れを作ること。
実はこれが、不動産売買仲介営業エネルギーの正しい使い方です。
「プロセスが見えると、人は動く」という原則
最後に、根本的な話をします。
今回のテーマであるプロセスを見せるというのは、不動産仲介営業に限らない、人間の普遍的な原則です。
企業経営で言えば、ビジョンと事業計画があるから社員が動けます。
どこに向かって、どのプロセスで進むのかが見えるから、行動できる。
子育てで言えば、子供が生まれた後の行政手続きをどの順番でやればいいかが分かれば動けるし、分からなければ何から手をつけていいか分からなくて止まってしまう。
研修で言えば、「この研修を受けることで3ヶ月後にどうなるか」が見えるから、今日のロールプレイにも意味が感じられる。
月に何件の契約を取り、売り上げがいくらで、
何ヶ月積み重ねたら、収入がどうなるのかが見えるから頑張れる。
全部の情報が非公開で「とりあえずやれ!」だけでは、やる気は失せる。
全て同じです。
プロセスが見えると、人は動きます。
見えないと、止まります。
「家を買いたい」というゴールだけではなく、そこまでのプロセスが見えるから動ける。
購入意欲を上げたいなら、まずプロセスを見せることです。
まとめ
「申し込みに至らない」「お客様がブレる」
という問題の根本には、プロセスが見えていないことが大きな要因としてあります。
お客様は買い方を知りません。
流れを知りません。
それは当然のことです。
だからこそ、先に伝えるのです。
購入の流れを、申し込みからの手順を、スケジュール感を、つまずきやすいポイントを全部、前に伝えておく。
そうすることで、お客様の頭の中に購入へのタスクが見えてくる。
→見えるから動ける。
→自覚が生まれる。
→購入意欲が上がる。
→後からブレにくくなる。

営業マンの仕事は、物件を紹介することだけではありません。
お客様が家を買うまでの道筋を見せ、判断できる状態を作ることです。
「前前前」
前に言っておく。前に確認しておく。前提を合わせておく。
不動産仲介営業において、「前」に何をどれだけ伝えられるか。
これが、申し込み率を大きく左右します。
不動産仲介営業とは、物件を売る仕事ではなく、
お客様が人生の大きな決断を前に進められるよう、道筋をつくるのが仕事なのだと思います。
