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「家が欲しい」だけでは絶対に買わない理由。購入意思を固める5つのポイント【不動産売買仲介営業】

#ヒアリング#不動産仲介#営業

これまで数多くの営業技術について解説してきました。

・ヒアリング
・資金計画
・住宅ローン
・条件整理
・クロージング

どれも、不動産売買仲介営業として成果を出すためには欠かせないものです。

しかし、それらを何年も現場で教え続ける中で、一つ強く感じることがあります。

それは、営業マンの多くが、お客様の「購入意思」という言葉の本質を勘違いしている、ということです。

 

実は、この勘違いがある限り、どれだけヒアリング技術を学んでも、どれだけ物件知識を身につけても、お客様の本当の意思決定を支援することはできません。

今回のテーマは、私が研修で何度も話している

「購入意思を確認する」
「購入意思を固める」

という考え方の根幹になります。

 

今回は、その意味を一から整理してみたいと思います。

営業テクニックの話ではありません。
不動産売買仲介営業という仕事そのものを考える記事です。

目次

営業マンの多くが、「購入意思」を勘違いしている

現場で新人営業マンを見ていると、こんな場面をよく目にします。

 

お客様へ、

「住宅購入を検討されるようになったキッカケは何ですか?」

と質問する。

 

すると・・・

「結婚したので一緒に住む家を買いたくて。」
「子供が生まれてもっと部屋が欲しいと思ったので。」
「転勤先から地元に戻れるようになったので、地元で家を買いたくて。」

などという返事が返ってくる。

 

その瞬間に

「このお客様は購入意思がある!家を買おうとしている!」

新人ほど、そう判断してしまいがちです。

 

あるいは、実際に物件を案内している中で

「この家、すごくいいですね〜!」

そんなお客様の反応を見て、

「このお客様は購入意思が高いな!」

と判断する営業マンも少なくありません。

 
でも、本当にそうでしょうか?

 

 

おそらく、お客様からの一言で確認できたのは、お客様が購入を考え始めたキッカケです。

 

もし、そのキッカケだけで「この人は購入意思がある!」「購入意思が高い!」と言えるなら、

なぜ、

「少し考えます。」
「親にも相談してみます。」
「他も見てから決めます。」

という言葉が、後になってから出てくることがあるのでしょうか・・・?

 

実際には、

・「購入したい」と言っていたお客様でも、契約にならない。
・物件を気に入っていたお客様から、キャンセルが来る。

そんな場面は、不動産営業では決して珍しくありません。

 

そう考えると、

「購入したい」「家が欲しい」という言葉と、
実際に「購入意思がある」という状態は、同じではない。

ということが言えます。

 


新人の営業マンは、まずこの点を理解しておく必要があります。

 

「家が欲しい」と「購入することを決めている」は違う

ここを混同してしまうと、営業は大きくズレ始めます。

例えば、

「家は欲しいなぁ〜と思っています。」
「いい家があったら、買いたいと思っています。」

という人。

 

果たして、この人は購入意思があるでしょうか・・・?

 

営業という視点で考えれば、まだ購入意思があるとは言いきれません。

なぜなら、お客様の頭の中には、

・購入するかも
・賃貸へ住み替えるかも
・今の家に住み続けるかも
・数年後に改めて考えるかも

こうした複数の選択肢が、まだ同じ重さで存在している可能性が高いからです。

その中で「購入」というものは、一つの選択肢に過ぎません。

 

その一方で、

「子どもが小学校へ入学する前までには、家を購入したい。後になって学区を変更するのは可哀想だから。」
 
「家賃を払い続けるより購入する方が、自分たちの計画には合っている。もう、この地を離れる予定がないから、5000万円くらいの新築を買って生活を落ち着かせたい。」

ここまで整理されている人はどうでしょう。

 

どの物件を買うかは決めていないとしても、購入するという方向性は、ほぼ決まってそうです。

 

つまり、

「何を買うか」「どんな家にするか」

は決まっていなくても、

「購入する」という意思決定はできている。

この違いは、とても大きいのです。

  

購入意思とは「家が欲しい」という感情ではない

ここまでを踏まえると、購入意思とは、

購入意思とは”家が欲しい”という気持ちや感情を指しているのではない

と言えます。
営業マンならば、ここをしっかり理解しておく必要があります。

 

もっと言えば、

「家が欲しい!」という感情だけなら、多くの人が持っているのではないでしょうか。

  • 100坪くらいの広い家に住みたい!
  • 海の近くにセカンドハウスが欲しい!
  • 駅近のタワマンにいつか引っ越したい!
  • 庭付きの家でBBQに憧れる!
  • 秘密基地みたいな子ども部屋を作ってあげたい!

しかし、この気持ちだけでは、本当に家を買うための行動には結び付きません。

 

 

では、「購入意思」が「家が欲しい気持ち」とは異なるのだとすると、購入意思とは、一体何なのでしょうか・・・?

 

私は、こう定義しています。

 

この定義には、大きな意味があります。

例えば、

「子ども部屋を作ってあげたい!」

という、子を持つ親としての願望があるとします。

 

でも、その願望を解決する方法は「家を買う」だけではないはずです。

・今より広くて部屋数が多い賃貸物件へ引っ越す。
・今の家の荷物量を減らして工夫して使う。
・実家へ戻る。
・購入する。

こう考えたら、いくつもの方法・選択肢があります。

 

これらの選択肢がある中で、

「私たちは購入という方法で、子供部屋を与えられていない問題を解決する!」

という意思決定ができていて初めて「購入意思がある」と言えるのです。 

 

 

つまり購入意思とは、

「購入」という選択肢を、自分たちの問題を解決する正式な手段として採用している状態

だと言えます。

 

だから「購入意思」を最初に確認する

私は研修の中で、

「購入意思を確認するように」

と何度も伝えている理由はここにあります。

 

これは、

営業がしやすくなるからではありません。
契約率を上げたいからでもありません。
お客様に早く決断してほしいからでもありません。

理由はもっとシンプルです。

購入意思が定まっていない状態では、物件を正しく判断することができないからです。

 

例えば、

「まだ急いでないし、まだ賃貸でもいいかな〜。」
「良い物件があれば、買うかもしれないなぁ〜。」
「3年以内くらいに、いい家が見つかったらいいな〜。」

この状態で物件を見ても、本当の意味で物件を比較はできません。

 

一方で、

「私たちは間もなく家を購入する!」

という意思決定ができている人は、同じ物件を見ても、

「この家なら、自分たちの生活はどう変わるだろう。」
「この空間だと、どんな毎日を過ごすことになりそうか。」
「この場所に毎日帰って来たい、と思えるだろうか。」

という視点で物件を見るようになります。

目の前で見ている物件自体は変わりません。

「購入意思」が明確かどうかで、比較する視点が変わるのです。

 

 

だから、あちこち物件を案内する前に、
まず購入意思を確認することが大切だ、と伝えているのです。

ここが、不動産仲介営業のスタートラインだと考えているからです。

 

なぜ購入意思を確認する必要があるのか 

では、なぜ営業マンは、その購入意思を確認しなければならないのでしょうか・・・?

 

新人営業マンにこの質問をすると、

「お客様が本気かどうかを見極めるため」

という答えが返ってくることがあります。
もちろん、それも間違いではありません。

しかし、それは契約を取りたい営業マン側の都合です。

 

きっと、その返答の裏には
「本気でないお客様には時間を割いても意味ないから。」
という言葉がセットで付いてくるでしょう。

私が考える購入意思確認の目的は、そこではありません。

お客様自身が、物件を正しく判断できる状態をつくるため

ここに尽きます。

 

ここを営業マン自身が理解しているかどうかで、その後のヒアリングも、物件案内も、大きく変わります。

 

購入意思が定まらないと物件を正しく比較できない

想像してみてください。

例えば、休日にショッピングモールへ行ったとします。

「今日は何となく見に来ただけ。」
「別に買う予定はない。」
「気になったからフラッと立ち寄ってみる。」

そんな気持ちで、ふと目についた洋服屋へ入った経験はありませんか。

 

店員さんに声をかけられても、

「あ、はい。」
「あ、大丈夫ですぅ〜。」

と軽く返事はしますが、その場で質問することもなければ、買うこともありません。

 

なぜなら、

「今日は服を買いに来た!」
「この中で気に入った1着を買う!」
という前提で洋服を見ていないからです。

 

 

不動産も同じです。

「まだ賃貸でもいいかな。」
「今すぐじゃなくてもいいかな。」
「何となく見に来ました。」

こうした状態では、お客様は購入を前提として物件を見ていません。

 

すると、

  • なんか収納量が足りない気がする〜
  • リビングが思ったより狭いかも〜
  • 駅からの坂道と階段がダルいなぁ〜
  • 隣の建物が古臭くてなんか嫌〜

そうした小さなマイナスが見えるたびに、

「まぁ、やっぱりまだ買わなくてもいいかな。いい物件が無いし。」
「妥協してまで買いたくないな。もうちょっと探してみよう。」
「失敗したくないし、後悔したくないから、もっと他も見たい。」

という結論へ戻ってしまいがちです。

 
 

 

お客様は「物件」を比較しているのではない

「もっと条件に当てはまる良い物件を紹介すれば、決まるんじゃないか。」

新人営業マンほど、そう考えがちです。

 

しかし。購入意欲が不確かなお客様は、目の前の物件だけを比較しているわけではありません。

実際、頭の中では、

・購入する
・賃貸へ住み替える
・今の家に住み続ける
・もう少し家族と検討を重ねる

など、こうした人生の選択肢そのものを比較している。

つまり、営業マンは勝手に、A物件とB物件を比較しているつもりでも、お客様の中では

「購入する人生」と「まだ購入しない人生」

を比較しているのです。

 

 

この状態で、

・物件の築年数は何年以内がいいですか?
・駅距離は何分以内がいいですか?
・通勤距離はどのくらい頑張れそうですか?

などと物件条件について聞いたところで、そのヒアリングは何の役にも立ちません。

だから私は、物件を案内する前に、まず購入意思を確認することが重要だと伝えているのです。

 

「購入意思を確認する」とは何を確認するのか

では、この「購入意思を確認する」とは、具体的に”何を”確認することなのでしょうか・・・?

「なんで住宅購入を検討され始めたのですか?」
と、住宅購入検討のキッカケを聞くことではないと思っています。

「お家を購入されて、どんな暮らしがしたいですか?」
と、単に未来を想像することでもないと思っています。

 

私が定義する営業が確認すべき購入意思とは、

お客様が「家を購入する」という決断ができる状態にあるのか?

住宅購入という人生の選択に対して、お客様の”覚悟”がどこまで定まっているのかを確認すること

こう定義しています。

 

 

覚悟レベルを確認する5つのヒアリングポイント

この、お客様の”覚悟”がどこまで定まっているのか確認ために、深掘りしてヒアリングすべきポイントがあります。

 

 

① なぜ住まいを変えたいのか?

 

最初に確認するべきなのは、

「なぜ住み替えたいのか。」

です。

家を買いたい理由、購入を考え始めたキッカケではありません。
住まい・生活を変えたい理由です。

例えば、

▶︎子どもが小5で大きくなって、娘用に部屋を1つ作らないと、女の子だからそろそろ気まずい。
▶︎離婚することになって、もう相手と顔合わせるのもキツイし、3ヶ月以内に出ていくと宣言したので、早いところ新しい住まいを決めたい。

など、理由は人それぞれですが、何かしら住まいに対して「不満」「問題」があるはずです。

しかし、ここが曖昧なままでは、購入する理由も曖昧になります。

 

② なぜ「購入」なのか? 賃貸や実家に戻るではダメなのか?

 

住まいを変える方法・手段は、何も購入だけではありません。

▶︎賃貸へ住み替えることもできます
▶︎今の家に住み続けることもできます
▶︎実家へ戻ることもできます
▶︎シェアハウス・ホテル住まいという選択肢もあります

その中で、なぜ「住宅を購入」なのでしょうか?

 

ここが明確に説明できなければ、購入という手段は、まだ複数ある選択肢の一つに過ぎません。

だから私は、

「それは、賃貸では実現できないのか?」
「それが、購入以外の方法で叶えられないのか?」

という視点も大切にしています。

営業が購入へ誘導したいからではありません。
お客様自身が、「購入する」という選択の理由を明確にするためです。

 

③ なぜ「今」なのか? なぜ、その時期なのか?

  

次に確認したいのが、時期です。

ただ、よく新人営業マンが行う
「いつ頃までに購入したいとお考えですか?」
という確認の質問だけでは、足りません。

大切なのは、

なぜ、今、動いているのか?
なぜ、その時期に買いたいのか? 

逆に、

なぜ、その時期まで買わないのか?

という理由です。

  • 子どもの入学・卒業
  • 賃貸の更新時期
  • 転勤・転職
  • 妊娠・出産
  • 離婚・別居
  • 住宅ローンを組める年齢上限

理由があると行動の期限になります。

 

一方で、明確な理由がないと、時期は簡単に先送りにされます。

その場合は、購入を先送りすることのメリット・デメリットから、適切な購入時期をしっかり検討いただく必要があります。

 

④ 購入しないままだと、どうなるのか?

 

実は、多くの営業マンがここを聞いていません。
でも、私はとても重要だと思っています。

大前提として、
住宅購入に興味があって物件見学に来ていると思いますが、

もしも、住宅を購入しなかったら、
お客様の今後の生活はどうなるのでしょうか?

  • 子ども部屋は作れないまま後悔が残るかもしれない?
  • 「家を買えない人生だった」と最期の時に思うかもしれない?
  • 実は、買っても買わなくても、気持ちも生活も、大差ない?

つまり、現状維持を選んだ場合の未来を確認したいのです。

ここが確認されると、初めて、「購入を選択することの意味」が見えてきます。

 

⑤ 条件が整えば、本当に購入へ進めるのか

 

そして最後に確認したいのは、条件ではありません。

行動できるの人なのか、否かです。 

 

例えば、

・希望エリア内かつ予算内
・住宅ローン審査も問題なし
・ご家族の意見すり合わせもバッチリ

これらが整理されたら、購入へ向けて具体的な一歩を進む意思はあるのでしょうか。
これらが整理されても、動かないのでしょうか。

ここまで確認できて、初めて、
「購入意思を確認した」と言えるのだと思います。

 

 

購入意思を固めるとは何なのか

さて、ここで一つ、現実的な話をします。

実際にこの5つのヒアリングポイントについてお客様へ質問してみると、全て明快に答えられるお客様は、ほとんどいません。

ほぼ必ず、どこかが曖昧です。どこかが抜けています。

「なんとな〜く? 前から家が欲しくて。」
「まぁ、買うなら、そろそろかな〜?と思って。」

その程度の状態で物件見学に来られるお客様の方が、圧倒的に多いです。

では、そこで営業マンは何をするのでしょうか。

「このお客様は購入意思がないな〜」
「見込みの薄い人だな〜」

そう判断して、終わりでしょうか。

いいえ、違います。
そこから先が、営業マンの仕事です。

そこで必要になるのが、

「購入意思を固める」

というプロセスです。

 

「購入意思を固める」とは、説得することではない

この言葉を聞くと、こんなイメージを持つ人がいるかもしれません。

「お客様を買う気にさせること。」
「逃げ道をなくして、契約へ向かわせること。」
「売上の為に、お客様を買う方向に説き伏せること。」

しかし、これは全く違います。

 

「購入意思を固める」とは、営業マンがお客様に結論を与えることではありません。
営業トークでお客様の気持ちを盛り上げることでもありません。

 

私は、こう定義しています。

購入意思を固めるとは、
お客様自身が「自分たちはこういう理由で家を買う」と説明できる状態にすること。

 

 

この時の主語は、営業マンではありません。お客様です。

営業マンが説明できても、意味がありません。
“お客様自身が”、自分で自覚し説明できるようになること。

これが「固まった」という状態と言えます。

 

確認したいのは話の「つながり」

5つのポイントについてヒアリングをすると、多くの新人営業マンは、こう考えます。

「① なぜ住まいを変えたいのか?も聞けた。」
「② なぜ賃貸ではなく購入なのか?も聞けた。」
「③ なぜ今探してるのか?も聞けた。」
「④ 購入しないままだと、どうなるのか?も聞けた。」
「⑤ 条件が整えば、本当に購入へ進める気もあることを聞けた!」
  →「よし!購入意思は確認できたぞ!」

 

でも、残念ながら、これは違います!

詳しい解説の前に、一つ確認しておきたいことがあります。

 

人が何かを決める時、頭の中では理由が順番に並んでいます。

例えば、車の買い替えを例に考えてみます。

 

 

この4つの話が「だから」で繋がっています。
よって、この人は自動車販売店に行った時に、購入前提で車を選ぶことができます。

 

では、途中の話を一箇所だけ抜いてみます。

「子どもが生まれて、今の車ではベビーカーを積むと荷物が乗らない。」
   ↓ だから
「……3ヶ月以内に買い替える」

これでは、「だから」の前後で話がつながっていません。

 

買い換えるのは分かるけど、なぜ3ヶ月以内なの?と疑問が残ります。

つまり、どこか一箇所でも「だから」がつながらない場所があると、そこで決断は止まるのです。
 


これは住宅購入も、まったく同じです。

(お客様の例)

5つとも、聞けば、それっぽい答えは返ってきます。

では、この答えを「だから」でつないでみます。 

 

①「今の家が狭くて、子ども部屋が作れない。」
   ↓ だから
「そろそろ購入かな。」

……話がつながりましたか? つながっていませんね。

 

狭いことが問題なら、広い賃貸へ引っ越しても解決します。
実家に戻っても解決するかもしれません。

「なぜ、その中で”購入”なのか?」

この理由が、①と②の間に入っていないのです。

 

もう少し、続けます。

②「そろそろ購入かな。」
   ↓ だから
③「今年中に決めたい。」

これも、話がつながっている様で、つながっていません。

 

なぜ、今年中なのでしょうか?
別に、来年でも、再来年でも良いはずです。

「今年中でなければならない理由」が、②と③の間に入っていません。

 
 

 
さらに、④を見てください。

③「今年中に決めたい。」 ↔︎ ④「買わなくても住める。」
①「狭くて困っている。」 ↔︎ ④「買わなくても住める。」

内容が噛み合っていませんね。支離滅裂です。

 

つまり、このお客様の中では、住まいに関する問題が「解決しなければならないもの」として、思考がまとまっていないということです。

そうなると、

⑤「いい物件があれば買います。」

という言葉の意味あいも変わってきます。

 


 

この「いい物件があれば」という言葉は、「条件が整えば購入へ進む」という言葉ではありません。

「よほど良いものが出てきたら、その時に真面目に考えます」

代弁すると、恐らくこのようなところでしょう。

 

もう一度、冒頭の問いと答えを見てください。

 

(お客様の例)

 

質問に対する答えは、5つともそれなりに返ってきています。

でも、その答えと答えの間が埋まっておらず、答えが「点」のまま置かれている状態では、単独の質問・回答としては成立しますが、並べてみたときにつながりがありません。

 

つまり、
5つのヒアリングで大事なのは、一つひとつの「答え」ではありません。

 

営業マンが見るべきなのは、

お客様の話で、まだつながっていないのはどこか?

どの答えと、どの答えの間が埋まっていないか?

ということです。

 

「固まっている状態」の人とは

では、購入意思が固まっているお客様は、どのように話すのでしょうか。

同じような状況の、別のお客様を例に出します。

 

別なお客様の例


いかがでしょうか。
この方も、まだどの物件を買うかは決めていません。

 

でも、

①住まいを変える理由
②購入を選ぶ理由
③今、動く理由
④購入しないままの未来
⑤動くための条件

これらが、一本の話としてつながっています。

これが、購入意思が固まっている状態と言えるでしょう。


ここで注目してほしいことがあります。

先ほどのお客様と、このお客様。
両者が言っている情報、実はそこまで変わりません。

どちらも、

「子ども部屋が欲しい」
「今の家が狭い」
「今年中に動きたい」

と言っています。

 

その中で異なるのは、

その情報がつながっているかどうか。

という点です。

 

現場で実践するには?

ここまで読んで、

「言いたいことは分かるけど、現場でどうすればいいのか分からない。」

そう思った方もいると思います。

 

そこで、私が新人におすすめしている方法があります。

ヒアリングが終わったら、お客様の言葉をつないで、一本の文章にしてみる。

「この人は、
 〇〇という理由で、住まいを変えたい。
 △△という理由で、賃貸の住み替えなどではなく、購入を選択している。
 □□の頃までに現場の問題を解決したいから、今動く必要がある。
 だから、条件が合えば購入へ進むことになる。」

この形に、お客様が話してくれた言葉を当てはめてみる。
すると、必ずあることに気づきます。

「あれ? ここが『だから』でつながらない。」
「なんか…ここ、うまく書けないな。」

その書けない部分こそが、つながっていない場所、切れている場所です。
 

そして、そこを質問で埋めていくのです。

これが「購入意思を固める」という作業の正体です。

営業マンが理由を付け足すのではありません。
つながっていないところを、お客様へ質問し、確認してつなぎ直す。

それだけなのです。 

最後は、お客様の口から言ってもらう

そして、もう一つ大切なことがあります。
 

一本の文章になったら、それをお客様に返してみてください。

つまり!今回のお家探しに当たっては、
お子様の入学に間に合わせたいので、今年中に、この予算の範囲で購入を決めたい。
広い賃貸も探したけれど、家賃だと4万円上がるし、10年払い続けても自分たちには何も残らないから購入で考えている。
もう転勤することはなく、柏周辺に長く住むつもりだから、購入した方が佐藤様ご夫妻のライフプランには合っている。
という認識で間違いないでしょうか?

ここでお客様が、
「そうです!そういうことです!」
と答えていただけたら、購入意思は明確であり、購入に向けて意思が固まっていると考えて良いでしょう。

 

逆に、

「うーん、まぁ、そうですね……。」
「そこまでは、まだ……。」

こういう反応が返ってきたら、まだ購入意思は固まっていません。
どこかに、本人が納得しきれていない部分が残っている反応です。

もしくは、営業マンに対して信頼構築が足りておらず
「あなたに細かいことは話したくない」
と思われている可能性もありえます。

 

ここでは、営業マンがお客様のことを理解しているかどうかは判断基準になりません。

お客様から「そうです」「〜〜だからです」と反応があるかどうか、が重要です。

 

「購入意思を固める」と「条件を固める」は違う


ここは混同しやすいので、はっきり分けておきます。

購入意思が固まっていない状態で、探す物件の条件だけを固めても、ほとんど意味がありません。

例えば、

・物件予算は5,000万円まで
・千葉市内(稲毛区か美浜区希望)
・駅徒歩15分以内
・4LDK
・築20年以内

ここまで聞けたとします。

一見すると、物件を探す準備が整ったように見えます。

 

しかし、お客様の中に、

「賃貸でもいい。」
「今の家でも、まだ住める。」
「今じゃなくてもいい。」

という選択肢が残っていたら、この条件は簡単に崩れます。

 

新人営業マンがやりがちな順番

多くの新人営業マンがやってしまう流れがあります。

それが「どんな物件をお探しですか?」と条件を先に聞くことです。

 

この繰り返しをやりがちです。

「もっと条件に合う物件を探そう。」
「もっと新しい物件を紹介しよう。」
「もっとたくさん案内しよう。」

と考えます。

 

しかし、購入が進展しないのは、本当に物件が原因なのでしょうか・・・?

そもそもお客様の中で、

「自分たちは家を購入する!」

という意思決定そのものが、完了していない可能性があります。

 

それなのに、

「どっちがいいか?もっと広い方がいいか?」

という話を先に進めてしまっているのが、売れない営業マンの特徴です。

 

「良い物件があれば買う」を前提にしてはいけない

そして特に注意したいのが、

「良い物件があれば買いたいです。」

というお客様の言葉です。

これをそのまま受け取って、

「分かりました。では良い物件を探しましょう。」

と進めてしまう営業マンは少なくありません。

 

すると営業の順番は、

良い物件を探す

物件を気に入ってもらう

購入する気になってもらう

契約する

となります。

 

 

これは、物件に購入意思を作ってもらおうとしている状態で、かなり危険です。

 

なぜなら、その物件に一つでも大きなマイナスがあれば、

「駅から少し遠い。」
「思ったより狭い。」
「想像していた間取りと違う。」

という理由だけで、

「今回は、ちょっと違ったので、いいです。もう少し考えます・・・。」

と、購入意思そのものまで後退してしまいまうからです。

 

こうなる原因は、

購入する理由が物件の魅力に依存しているからです。

物件の魅力に依存した営業は不動産売買仲介営業で、もっとも注意しなければならないことで、避けなければいけない状態です。 

 

  

売れる営業のプロセス

不動産売買仲介営業でお客様を購入へ導くには、最適な順番があります。

  1. 購入意思を固める。
  2. 予算・時期・条件を固める。
  3. そその条件の中から、最良の物件を選ぶ。

この順番です。

どの家を買うかを決める前に、そもそも家を買うのかどうかを決めること。

この心構えは必須です。

 

この順番を飛ばすと、条件はいくらでもひっくり返り、営業としては商談が振り出しに戻ります。

 

「固める」とは購入以外の選択肢を否定することではない

もう一つ、新人営業マンが誤解しやすい点があります。

購入意思を固めるために 必要なのは、購入以外の選択肢を、一度きちんと並列して並べることです。

 

先ほどもお話しした通り、住まいの問題を解決する方法は、購入だけではありません。

・広い賃貸へ引っ越す
・今の住まいを工夫して使う
・リノベーションする(持ち家の場合)
・セカンドハウスを持つ
・実家へ戻る
・購入する

 

 

このような選択肢がある中で、

・本当に購入が一番合っているのか?
・賃貸では、なぜダメなのか?
・今のままでは、何が解決されないのか?
・先送りすると、何が起こるのか?

ここまで全て選択肢を並べた上で、

「自分たちには、購入という方法が一番合っている!」

と、お客様自身が判断することが「固まる」ということです。

 

 

営業マンの方から、

「家賃を払い続けるのはもったいないですよ!」

と、他の選択肢を一方的に否定することは、全く求められていません。

 

そして、全てを並べて整理した結果、

「今は購入しない方がいい。むしろ、賃貸のままの方がベスト。」
「住み替える必要がない。今の家を売る方がもったいないです。」

という結論になることもあるでしょう。

 

それなら、それがそのお客様にとっての正しい意思決定です。

購入意思を固めることは、何が何でも購入という結論へ導くことではありません。

買うのか?
今の部屋を工夫して使うのか?
実家に戻るのか?

選択肢が曖昧なまま物件を見続けるのではなく、「自分たちは住まいの問題をどの方法で解決するのか?」を決めること。

これが、購入意思を固めるということです。

 

 

購入意思が固まると、物件の見方が変わる

では、ここまで長らく伝えてきた「購入意思が固まる」と、お客様の中で何が変わるのでしょうか?

結論、『物件に対する見方』が変わります。

 

購入意思が固まっていないお客様は、物件を見ても、ただの感想で終わります。

「広いですね。」
「きれいですね。」
「駅から少し遠いですね。」

そして、マイナスが一つ見つかるたびに、
「やっぱり、まだ買わなくてもいいかな。」
という結論へ戻ってしまいます。

 

一方で、購入意思が固まったお客様は違います。

同じ物件を見ても、

「駅距離はあるけど、予算内で4LDKが取れる。」
「子ども部屋を確保できる。」
「今の家賃と比べても、支払いは現実的だ。」
「このエリアで、この価格帯はあまり出てこない。」

という、ただの感覚ではなく、目的と目の前の物件を照らし合わせて検討します。

 

 

つまり、デメリットを受け入れる価値があるかどうかを、自分で考えられるようになるのです。

意思が固まっていないと、デメリットを見つけて終わります。
意思が固まっていると、そのデメリットと引き換えに何が手に入るのかを考えます。

 

変わるのは、物件ではありません。営業マンの提案力でもありません。

お客様自身の中で判断の土台が固まったから、同じ物件が違って見えるのです。

 

最後に

この記事でお伝えした内容を整理します。

 

■ 「家が欲しい」=購入意思ではない

「家が欲しい」「良い物件があれば買いたい」は、あくまで願望や興味です。

購入意思とは、住まいに関する問題や願望を「家を購入する」という手段で解決すると決心している状態です。

 

 

■ 購入意思を確認する5つのポイント

営業マンが確認するのは、次の5つです。

  1. なぜ住まいを変えたいのか?
  2. なぜ「購入」なのか?
  3. なぜ「今」なのか?
  4. 購入しないままだと、どうなるのか?
  5. 条件が整えば、本当に購入へ進めるのか?

ただし、5つすべてに答えがあれば良いわけではありません。

 

 

■ 大切なのは、5つの答えが「だから」でつながっていること

営業マンが見るべきなのは、一つひとつの答えではなく、

「お客様の話が、どこでつながっていないのか?」

です。

つながっていない部分を質問によって整理し、

「自分たちは、こういう理由で家を購入する」

と、お客様自身が説明できる状態にする。
これが、「購入意思を固める」ということです。

 

 

■ 営業の順番を間違えない

不動産売買仲介営業では、順番が重要です。

購入意思を固める

予算・時期・条件を固める

その中から最良の物件を選ぶ

「良い物件があれば買う」という状態のまま、条件整理や物件提案を先に進めてはいけません。

 

 

■ 購入意思が固まると、比較するものが変わる

購入意思が固まっていない
「買うか、買わないか」を比較している

購入意思が固まっている
「どの家を買うか」を比較できる

 

 

この土台を理解しておくことが不動産売買仲介営業のスタートラインだと考えています。

ぜひ、明日からの現場で実践してみてください。

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