やる気重視でも教育には限界?“母数を減らさずに”強い人材を採る採用戦略
「とにかくやる気がある人なら誰でもウェルカム!」──そんなフレーズを掲げる企業は珍しくありません。
ですが、本当にそれだけで戦力になる人材を確保できるでしょうか?
採用の現場には、次のようなジレンマが存在しています。それは、採用基準を下げすぎると“やる気”だけの人材が集まる半面、入社後に教育コストが膨れ上がり、組織が疲弊してしまう。
一方で、基準を高くしすぎると応募自体が激減してしまう───
つまり母数不足で採用に苦戦してしまうのです。
このジレンマを解消しようと、「仕方ない、やる気があれば育てればいい」という考え方に走る企業は少なくありません。しかし、実際に現場を眺めてみると、「教育には限界がある」ことを痛感している経営者や採用担当は多いはず。やる気はあっても学習能力や適応力が伴わない人材を大量に雇えば、先輩社員や社内リソースが疲弊してしまうのは時間の問題です。
では、母数を確保しつつ教育コストの破綻を防ぐには、どうすればいいのでしょうか?
本記事では、その具体的な方策を提示しながら、さらに「顧問編集」や「採用ブランディング」の視点を組み合わせることで得られるメリットを解説していきます。
「やる気があれば誰でもOK」が限界に達する理由

やる気はあくまでモチベーション。行動力とは別物
「やる気」は一時的な熱量のようなもので、実際にそれを業務スキルや成果に転換できるかどうかはまた別問題です。
採用面接で、「自分は本当に御社で頑張ります!」と熱く語っていても、蓋を開けてみれば指示待ちで動かない人材だった…という経験はないでしょうか。多くの経営者や採用担当が、「面接時の言葉」と「入社後のパフォーマンス」のギャップに悩まされています。
学習適応力がないと、教育コストが無限にかかる
やる気だけでは足りない要素の一つが「学ぶ力」や「適応力」です。
新しい業務や知識をどれだけ吸収できるか、困難に直面したときに柔軟に乗り越えられるかが重要にもかかわらず、「やる気」という言葉に過度に頼ってしまうと、学ぶスキルが欠如していても採用してしまい、教育に時間・コストを注いでも伸び悩むという状況が続きがちです。
社内のモチベーションを下げるリスク
仮に何名も“やる気だけ”の人材を抱えてしまうと、教育担当や先輩社員が過度な負担を強いられ、モチベーションが低下します。会社全体が「新人の面倒を見る」モードに入り、日常業務を回すエネルギーが不足。組織が停滞する悪循環を生むことも珍しくありません。
それでも採用基準を上げると、応募母数が減るジレンマ

問題の反対側は「応募が全然来ない」ことです。
特に中小企業の場合、大手企業のような知名度や魅力的な条件を提示できないため、採用基準を高くすると本当に応募者がほとんど来ない事態に陥りやすい。結果的に「母数が足りない」という焦りから、また基準を低くして“誰でもOK”に戻ってしまう…この堂々巡りに悩む企業は少なくありません。
要するに、「基準を厳しくすれば質は上がるが母数が減る」「基準を甘くすれば母数は増えるが教育が破綻する」という二つの極端な選択肢の間で揺れ動いているわけです。
次章からは、二つの極端な選択肢の間でどのような施策を行なっていくのが良いかについて触れていきましょう。
解決策1:やる気+“学習適応力”を最低基準に設定

学ぶ意欲を測る質問例
- 「過去に新しいスキルを身につけた経験があるか?」
たとえば前職で未経験業務を任されたとき、どのようにキャッチアップし成果を出したか
自ら専門知識やスキルアップのために学びの行動を行なってきたか - 「困難を乗り越えた具体的エピソードは?」
失敗経験があるほど強い意欲で学習を続ける例も少なくありません
事前に確認しておくことで後の教育コストも報われやすいでしょう
こうした問いを面接で投げかけると、口先だけでは説明しにくく、本当に仕事のおいて学ぶ力・有言実行力があるかを見極めやすいです。
指標を明確化する
面接官それぞれの主観だけで判断すると、「なんとなく良さそう」なイメージ採用になりがち。例えば次のような基準を事前に定義しておきます。
- 自己学習習慣(独学の実績、オンライン講座や資格挑戦など)
- 変化対応力(職場や仕事が変化した際、どの程度ポジティブに吸収できたか)
- 問題解決プロセス(具体例:営業目標達成、チーム課題クリアなどの数値実績)
このように可視化することで、「ただやる気アピールがあるだけ」「受け答えが上手なだけ」の人材を排除しやすくなり、本当に伸びしろがある人材に絞り込めます。
弊社で入社後の研修をサポートしている企業様では、入社からの1ヶ月間に学びとアウトプットを課し、提出状況や内容から社員を判断する評価軸を設けました。専用の振り返り・アウトプットフォームを整えることで新人の行動が社内でも共有され、相互に効果を発揮している例があります。
結果:教育が効果的に機能
「やる気+学習適応力」がある人材であれば、教育担当や先輩社員の指導が成果につながりやすく、モチベーションも保ちやすい。結果として組織全体が「育つ人を育てる」空気になり、早期離職も減らせます。
解決策2:試用期間を広く活用し、実践を通じて見極める

採用ハードルを下げて母数を確保
応募母数を極端に減らしたくないなら、採用段階では比較的ゆるめの基準を設定し、広めに人材を集めるのも一つの手です。「やる気がある」「ある程度の学習意欲がありそう」という段階で初期採用し、試用期間を戦略的に活用します。
試用期間中の目標&基準を設ける
「最初の3ヶ月で○○ができるようになったか」「チームの成果をどの程度サポートできるか」など、具体的に評価ポイントを設定すると、公平に成長度合いを見極められます。自発的に質問したり、自主勉強している姿が見られるかどうかも大きな判断材料になります。
実際に3ヶ月ほど働いてみて、“やる気はあっても思ったほど伸びない”、“逆に思わぬ人が適応力を発揮した”などリアルな面が見えるため、本採用後のミスマッチを大きく減らすことができます。
運用上の注意点
試用期間中のフォローは怠らずに行い、「最初から見捨てられている」と思わせないように。中小企業の中には「どうせ試用期間で切るかも」的な雑なマネジメントをしてしまう場合もありますが、それでは企業の評判を落としてしまいます。広く採りつつも、試用期間でお互いをしっかり評価し合うと認識してもらうことが大事です。
解決策③:欲しい人材を“ピンポイント”で採用する

「やる気があれば誰でもいい」という考え方はリスクが高い一方で、採用基準を厳しくすれば応募者が激減するジレンマに陥ってしまう。
それなら「自社に合う人材像」を明確にし、そこへダイレクトにアプローチすればよい──これが3つ目の解決策です。
幅広く募集して教育コストが膨大になる前に、「最初から適した人だけ」を効果的に集めるという発想です。
社員モデルの分析と取材(インタビュー)の重要性
まず大切なのは、社内で実際に活躍している社員や成功事例を深く分析することです。たとえば営業職で成果を出している社員のバックグラウンドや性格、挫折経験をリサーチし、「こんな人材がうちで伸びるんだ」という共通点を抽出します。
しかし、ここで意外とハードルが高いのが「どのようにして社員の情報を掘り下げ、活躍モデルを言語化するか」という点です。
適当なヒアリングだと表面的な経歴しか聞き出せず、本質が見えないまま終わるケースが多い。そこに“取材・インタビュー”のプロが関われば、具体的なエピソードや本人の成長過程を徹底的に聞き出し、会社が本当に求めている要素を整理してまとめられます。
取材ができる人材は多くない
一般的な企業の採用担当や人事部では、プロのインタビュー技術を持っている人は少ないのが現実。だからこそ顧問編集のようなサポートサービスが活きてきます。経営者や社員への綿密なヒアリングを通じて、「この会社でどんなタイプが成功しているのか」を言葉に落とし込み、それを採用基準やメッセージへ反映できるのです。
この「社内モデル」づくりを適切に行えば、採用基準がぶれず、「なぜこういうタイプを採りたいのか」を説得力をもって社内外に発信できます。結果、応募者にとっても「自分には合う職場かどうか」をイメージしやすくなるのです。
大手求人媒体に頼らない“ダイレクト採用”へのシフト
「母数を確保したいからとりあえず求人サイトに掲載しておこう」ではなく、自社が求める人材をネット広告やSNSなどで直接集める“ダイレクト採用”を検討する方法があります。特に、「不動産業界・営業職・30代」のようにターゲット層がはっきりしている場合、リスティング広告と組み合わせたダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)の手法が有効です。
ダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)とは
従来の「イメージ広告」と違い、“反応が取れるLP(ランディングページ)”を用意し、そこにネット広告やSNSから集客して“すぐ行動を促す”仕掛けを作るマーケティング手法です。今は採用の世界でも応用が可能になっています。
【ダイレクト採用LPの概要】
- ターゲットと市場の徹底理解
- 例:25〜30歳で既婚、前職ではある程度コミュニケーション業務を経験…など細かく設定
- 例:25〜30歳で既婚、前職ではある程度コミュニケーション業務を経験…など細かく設定
- リスティング広告やSNS広告でLPへ直接誘導
- たとえば「〇〇市 不動産 営業 転職」などのキーワードで検索する層を集客
- たとえば「〇〇市 不動産 営業 転職」などのキーワードで検索する層を集客
- 専用LPで会社の魅力・成功モデル・教育体制を説明し、即応募を促す
- LP上で“応募ボタン”や“面談予約フォーム”へ導線を設置
- LP上で“応募ボタン”や“面談予約フォーム”へ導線を設置
- ABテストやデータ分析でLPを改善
- 離脱率や応募率を見ながらキャッチコピーや社員インタビューなどを更新
この仕組みを使えば、大手求人媒体にお金を払っても掲載が埋もれるリスクを回避できますし、ピンポイントで「こんな人を募集しています」というメッセージを届けられるのが強みです。既に“やる気+学習力を持つ人材”の像が見えていれば、LPや広告コピーもより的確に作れます。
「採用ブランディング」との結びつき
ダイレクト採用では、単に「求人募集」だけを載せても心は動かないため、自社ならではの物語や経営者の想いを盛り込む必要があります。そこで役立つのが採用ブランディングの観点で作成したコンテンツ。
- 社員モデルの成功ストーリー
- 地域密着型で働くメリット
- 経営者のビジョン
- 実際に学ぶ意欲がある人がどう成長したか
これらを丁寧にまとめたLPやSNS投稿を流せば、興味を持ったターゲットが自分から“コンタクトしたい”と思い、行動に移りやすいわけです。
結果:教育コストを抑え、母数も維持する
- 広い意味での母数確保
大手求人媒体に依存しない形で広告を出したり、SNSで直接狙った層にリーチしたりできるため、予算や知名度がない中小企業でも応募を取りこぼしにくい - 質の担保
“学習適応力”がある層にフォーカスしやすく、教育コストが無駄にかさんでしまうリスクを回避
- 大手と同じ商品棚に並ばない
自前の採用サイトやLPで勝負できるため、どれだけ予算を積んでも広告競争が激しい求人媒体と正面から闘わずに済む
そして、この一連の流れをしっかり回すために役立つのが顧問編集。前述の「社員モデル分析」や「ダイレクト採用LP作り」にはインタビューやコンテンツ制作の専門技術が不可欠なので、外部の力を借りながら洗練されたメッセージを仕上げられます。
顧問編集×採用ブランディングで実現する戦略

ここまで、「やる気+学習適応力」を基準にすること、試用期間で見極めること、そして“ピンポイント”のダイレクト採用へシフトする方法を見てきました。
しかし、実際にそれらを形にし、“自社らしい”採用ストーリーや人材募集のメッセージを作るのは容易ではありません。そこで大きな力となるのが、顧問編集という存在です。
社員モデル分析とインタビューを“ストーリー化”する
不動産業界や営業現場など、実際に成功している社員のモデルを作るとき、ただ経歴を並べるだけでは“本質”に到達しにくいものです。社員や経営者へ深くインタビューし、幼少期の体験、挫折・成功のプロセス、会社への適応過程などを引き出すことで、「どういう人が伸びるのか?」を明確に示す物語が出来上がります。
顧問編集は、こうした取材を専門の立場で行い、“抽象的な経歴”を“読者の心を動かすストーリー”としてまとめます。結果的に、それを採用ページ・SNS・ダイレクト採用用のLPで展開すれば、求職者が「自分もそんなふうに成長できるかも」と直感しやすいのです。
採用LPとダイレクトレスポンスの連携
「ピンポイント採用」を行ううえでは、大手求人サイトに頼らずリスティング広告+LPを組み合わせるダイレクト採用手法が有効でした。
顧問編集者は、経営者の想い・社員モデル・教育方針などを踏まえ、LPで訴求すべき“物語”や“ビジョン”を精巧に仕上げます。ユーザーの目を引くキャッチコピーや、社員インタビュー、実際の業務の魅力を盛り込みつつ、最終的に「応募」や「問い合わせ」への行動を促す流れを設計するのが肝心です。
特に、社員や経営者への取材で得た“リアルな声”は、大手企業が打ち出す抽象的なキャッチコピーよりも格段に信用力を高められるもの。採用ブランディングと相乗効果を狙うなら、実際の成功体験をストーリー化する編集作業が極めて重要になってきます。
継続的な運用で“伸びる人材”を安定的に確保
これまでは、一度募集をかけて終わりという採用活動が多かったかもしれません。しかし、定期的に「実際に試用期間を経て活躍している例」や「経営者の新たなチャレンジ」を発信すれば、常に“学習意欲が高い人”が目に留める機会が生まれます。
顧問編集者が社内の新しい出来事や改善事例をピックアップしてコンテンツ化すれば、“更新され続ける採用ブランディング”となり、求人広告でスポット的に母数を集めるより、長期的かつ安定的に人材を呼び込みやすくなります。
しかも、大手にはマネしづらい“経営者と社員の距離感の近さ”や“スピード感”を前面に出せるため、「やる気+学習適応力」を備えた人材にとって理想的な職場像を印象付けることができるのです。
今こそ“やる気+学ぶ力”を活かす採用へ

やる気だけに頼る採用は危険、かといって採用基準を上げると母数が減る…という矛盾に悩んできた企業こそ、今回ご紹介した三つの解決策と顧問編集×採用ブランディングを組み合わせてみてください。
- 基準を「やる気+学習適応力」に再設定: 面接で具体的に「学んだ&変化を遂げた経験」を問う
- 試用期間を有効活用: 広く採用しつつ実践評価で絞り込む → ミスマッチ減
- ピンポイント採用+ダイレクトレスポンス型の募集: LPやリスティング広告を使い、欲しい層へ直接アピール
そしてそれを後押しするのが、顧問編集の力です。経営者や活躍社員への取材を通じて、学び実行する力を持つ人材に刺さる“企業ストーリー”を言語化し、採用ページやダイレクト採用LPで発信すれば、「条件だけ」ではない深い共感を生み出せるはずです。
もし、
- 「うちは“やる気重視採用”の挫折を何度も経験している」
- 「採用基準を上げたいのに、母数不足が怖くて踏み切れない」
- 「経営者の想いを軸に、採用ブランディングを完成させたい」
- 「応募母数を底上げしつつ、不要なエントリーは減らしたい」
と感じている方は、ぜひ顧問編集を活用した採用戦略をご検討ください。
母数を落とさずに“育つ人材”を集め、教育コスト破綻の不安を解消する道を、共に。

「やる気重視」だからこそ見落とされがちだった“学ぶ力”と、それを引き寄せる[顧問編集+採用ブランディング]の威力を感じていただければ幸いです。あなたの企業に合った人材が、きっとあなたのメッセージを待っています。