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契約の裏に潜む顧客心理と若手社員が見落としがちな盲点

#契約#能力開発#顧客心理

(本文を読む前にコチラの記事を読むとより内容理解が深まります)

「契約」は、多くの顧客にとって人生で最も大きな決断の一つです。

特に不動産のような「人生で最も大きな買い物」と言われるものの契約の重みは、大きなものでしょう。にもかかわらず、その現場に携わる営業職社員は、その重要性や顧客の心理的なニーズを十分に理解できていないことが多く、それがクレームや契約後のトラブルにつながる原因となっていますケースがよくあります。

この記事では、不動産契約を例に、どのようにして顧客の心理を理解し、人生における重要な契約後もスムーズに顧客対応を行えるようになるのか、具体的な問題点とその背景について詳しく解説します。

 

顧客の心理的ニーズとその変動を理解していない問題

では、まず最初に取り上げるべきは、顧客の心理的ニーズの理解不足についてです。不動産の購入は、顧客にとって人生で最も重要な決断の一つであり、単なる物件の購入以上の意味を持ちます。この章では、なぜ顧客の心理を深く理解することが重要なのかを掘り下げていきます。

自分ごととして理解できない

20代社員の場合は、まだ社会における大きな決断(例えば、家や車の購入、結婚、引っ越しなど)を経験していることが少ないかもしれません。これにより、顧客が不動産を購入する際に感じる心理的なプレッシャーや不安を、自分ごととして理解することが難しく感じることもあるでしょう。

不動産購入のような大きな決断には、期待と同時に多くの不安が伴うものです。顧客は「本当にこれでいいのか」「この物件が最善の選択なのか」といった疑念や不安を抱えながら、最終的な決断を迫られるわけです。

若手社員にとっては、これらの大きな葛藤の感情に実感が伴わないことも多いため、その気持ちを表面的にしか理解できていない場合も少なくありません。結果として、顧客の不安を軽視しがちで、彼らの心理的なニーズを十分に汲み取ることができないことが、契約前後の顧客対応において致命的な欠陥となりえます。

表面的なコミュニケーション

若手社員は、顧客との会話において深く掘り下げるスキルが不足していることが多いです。表面的なニーズや要求に対してのみ対応してしまう傾向があり、顧客が抱える根本的な不安や懸念を見逃すことがしばしばあります。

例えば、顧客が「この物件の価格が高い気がする」と言ったとき、単に価格交渉や値引きに話を持って行くのではなく、「この価格に対する不安の背景に何があるのか」を探る必要があります。それが予算に対する不安なのか、将来の資産価値への懸念なのか、家族の意向が反映されていないからなのかを理解することが重要です。

どうしてそのように感じられましたか?」や「もう少し詳しく教えていただけますか?」と尋ねることで、顧客の心の奥にある本当の不安や期待を引き出すと良いでしょう。

 

顧客の生活背景を無視した提案

若手社員が顧客の家族構成や将来のライフプランを考慮せずに物件を提案してしまうケースも見受けられます。

例えば、子供の数や将来的に親と同居する可能性など、家族の成長や変化を無視して、現在の生活状況のみに基づいた提案をしてしまうと、顧客は「もっと慎重に考えたい」と、後になって足踏みをすることがあります。仮にこのような場合のまま話が進むと、顧客は契約直前や契約後になって「この家は本当に自分たちにとって最適だったのか」と疑念を抱き、最悪の場合、クレームや解約につながることもあります。

顧客の背景を的確に理解するためにも、顧客との会話中には「お話の中で特に気になった点をメモさせていただきます。あとでしっかりフォローさせていただきますので。」と一言添えて、重要なキーワード(例:「子供の学校」「老後の住まい」「交通の便」など)を箇条書きにしてメモに残す習慣を持ちましょう。これにより、顧客の心理的な揺れ動きを理解しやすくなります。

また、次の会話でそのメモを元に、「前回お話いただいた○○の件ですが」と前回の内容を復習することで、顧客に安心感を与えることができます。フォローアップすることで、顧客に「この営業マンは自分の話を本当に聞いてくれている」と感じてもらうことができます。

感情的なサインを見逃す

顧客が何度も同じ質問をしたり、少しでも躊躇するような態度を見せている場合、それは顧客が不安を感じているサインです。しかし、これを「ただの心配事」と軽視し、具体的な不安や疑問を解消しないまま契約を進めてしまうと、後になって「もっと説明が欲しかった」「なぜもっと聞いてくれなかったのか」という不満が噴出します。

特に、顧客が初めて不動産を購入する場合は、これらの不安は非常に大きなものとなり、営業マンがそれに敏感に対応することが求められます。

顧客が不安を表明した際には、「その気持ち、本当によくわかります。私も同じ立場なら同じように感じると思います。」と、まずは共感を示すことが重要です。いきなり自分の意見や反論を示してはいけません。そして、「こういったケースでは、他のお客様も同じように感じていらっしゃいましたが、最終的には○○でご安心いただけました」と、他の顧客の事例を交えながら具体的な解決策を提示すことで、懸念点よりも解決した未来を想像させることができます。

もし入社して間もないが故、顧客の事例がない場合は、上長や先輩の顧客事例を予め聞いておくことで「私の先輩のお客様では、こういった方がいらっしやいました」と、擬似的にでも顧客例を交えて話すだけでも、懸念を解消させることができます。

契約をゴールと見なしている短絡的な視点

次に注目したいのは、契約をゴールと見なすのではなく、顧客との関係を築き続けることが重要であることについて解説します。

社会経験が少ない若手社員は、契約のプロセス全体を見通す経験が少なく、特に契約後のフォローアップがどれだけ重要かを理解できていないことで、トラブルに発展するケースが多いです。営業成績を上げることに必死であり、短期的な成果(契約成立)を優先しがちである為、長期的な顧客満足度を見失うことがあります。

契約が一つの「仕事の終わり」と見なされることが多く、契約が成立した瞬間に「自分の役割は終わった」と感じてしまい、その後の顧客体験を軽視しがちなのは要注意です。これではその後のアフターフォローに対する意識が薄れてしまうのです。

初めて不動産を購入する顧客は、契約後も様々な疑問や不安を抱えていることが多く、それに対するフォローが不足すると「後悔」や「不満」を感じやすくなります。そんな中で、契約が終わるとすぐに顧客とのやり取りが一気に減り、フォローを怠ると、顧客が「自分のことを忘れられた」「自分は放置された」と感じ、信頼を損なう結果に繋がります。これが、後々のクレームや不満につながり、紹介やリピートビジネスのチャンスを失ってしまう原因となります。

例えば、顧客が家に関する何かしらの疑問や不安を抱えていたとしても、契約後に営業マンからの連絡が途絶えると、その疑問や不安が解消されることはなく、結果として不満が蓄積していきます。これがクレームに発展する原因となり、顧客満足度を大きく低下させることになります。極端な話、契約後にキャンセルなどに発展する可能性も否定できません。

この視点の欠如は、顧客が後に抱く疑問や不安を十分にケアすることなく、信頼関係を築くチャンスを逃してしまうことに繋がっています。営業としての真価は、契約後にこそ発揮されるべきであり、そこでの対応が次のチャンスが巡ってくるかどうかを左右し、今後の紹介やリピートビジネスにつながるかどうかの重要な要素となります。

そうならない為にも、契約が終わった瞬間に、スマホやカレンダーアプリで1週間後のフォローアップのリマインダーを設定し、その場で「〇月〇日にご連絡いたします」と約束する。顧客に対しても「お話ししましたとおり、来週のこの時間に確認のお電話をさせていただきます」と具体的な日時を示します。

顧客にとっては、自分が常に先回りして考えてくれる営業マンだと感じてもらうことが重要です。

顧客に対して、契約後に待ち受けるステップを「まずは○○を済ませてから、次に○○を進めましょう」と段階的に説明し、顧客が一度にすべてを考えなくても済むようにフォローし、具体的な準備物や日程調整のアドバイスも行うことで、顧客としてはより安心感が生まれるでしょう。

プレッシャーと顧客の期待とのギャップ

次に考慮すべき点は、社員が感じるプレッシャーと顧客の期待とのギャップです。若手社員が経験するこのギャップは、顧客対応に大きな影響を与えることがあります。このセクションでは、具体的なケースを通じて、どのようにこのギャップを埋めることができるかを考察します。

契約ノルマのプレッシャーと手薄な対応


営業マンとして仕事に対する責任感やプレッシャーを感じる一方で、顧客がどれだけの期待を持っているかを測りかねている人も多いです。 これは短期的な成果を求める営業活動の中で起こりがちな問題であり、忙しい時期やプレッシャーが強い時期に、顧客満足度よりも短期的な成果や目の前の事柄に重視されがちになります。

すると、顧客対応が手薄になり、電話やメールの返信が遅れたり、適当な対応をしてしまうケースがあると、顧客は「大事にされていない」と感じることも少なくありません。顧客が抱える心理的な負担や期待に対して、十分な対応ができず、加えて顧客が持つ期待に対して応えることができず、結果として顧客が「この営業マンは期待外れ」と感じることが増えてしまうのです。

プレッシャーを感じついつい業務を優先してしまいがちですが、一旦離席して深呼吸をする時間を持つなどの工夫をすることも大切です。その後、「このお客様のことだけに集中する」と自分に言い聞かせ、タスクを一つずつ処理します。大きなプレッシャーを小分けにして対処することで、冷静さを保ちつつ、顧客の期待に応えることができるようになります。大きなプレッシャーを小分けにして対処することで冷静さを保ちましょう。

顧客対応をする前に「この対応で顧客はどう感じるだろうか?」と、自分の対応を顧客の視点からチェックする習慣を持ち、顧客が問い合わせをしてきたときには、「お忙しい中ご連絡いただき、ありがとうございます」と感謝を表し、迅速な対応を行いましょう。 

どんなに忙しくても、顧客からの連絡には迅速に対応し、常に「お客様第一」の姿勢を忘れないことが重要です

顧客の期待を超える意識の欠如

「顧客の期待を満たす」ことは意識しているものの、「顧客の期待を超える」サービスを提供する意識が薄く、結果として顧客にとってのプラスアルファが不足している営業マンも多いです。

顧客は、契約前後を問わず、継続的なサポートを期待しているものです。営業マンとしては、その期待に応えるだけでなく、さらに一歩進んだサービスを提供することが信頼関係を築く鍵となります。

顧客が何を期待しているかを正確に理解できず、単に契約へと進めることが最優先になってしまう場面。例えば、顧客が希望するライフスタイルや将来のビジョンを十分に理解せずに提案を行うと、顧客は「自ら望んで契約した」ではなく「言いくるめられて契約させられた」と感じ、結果として契約後に不満を持つことがあります。

物件案内時には、顧客が気に入りそうなポイントをリサーチしておき、案内の際に「こちらのエリアには○○もありますので、ご家族で楽しんでいただけます」と、事前にリサーチしたプラスアルファの情報を提供するなど、常に期待以上の働きを心がけることで、契約へと進む可能性が上がるでしょう。そして、いざ契約となった緊張感ある場面でも、「あの一言が決め手になりました」と、営業マンに対する信頼でスムーズな契約を締結することができるでしょう。

適切な顧客対応の欠如

最後に取り上げるのは、適切な顧客対応が欠如していることによる影響です。特に契約後のフォローアップの重要性を理解し、適切に対応することが顧客満足度を高める鍵となります。このセクションでは、どのようにして顧客対応を改善し、信頼を築いていくかを探ります。

顧客フォローの重要性の認識不足

繰り返しになりますが、契約後のフォローが顧客満足に直結することを理解しておらず、顧客が感じる小さな問題や疑問を放置してしまう傾向も散見します。フォローアップが不足しているということは、顧客が求めている情報やサポートが提供されていない、ということです。

顧客が何かに対して不安を感じている時に、その不安を解消するための説明が不十分だと、顧客は「理解できていない」「不安が残ったまま」という状況になりこれが後々の不満やクレームにつながる要因となるのです。

例えば、顧客が「こうしたい」「ここが気になる」「もっとこうして欲しい」と思った時に、その声を拾い上げられないと、顧客は「自分の意見が無視された」と感じることがあり「期待外れだった」と感じるのです。期待外れと思われてしまうと、紹介やリピートビジネスの機会を逃してしまう可能性があります。

契約後の定期的なフォローアップの際には、「その後いかがでしょうか?」と尋ねるだけでなく、「先日はお時間いただき、ありがとうございました」などの感謝の言葉を添えることで、顧客はあなたが自分を大切にしてくれていると感じます。

一方的な説明

顧客の理解度や反応を確認せずに、こちら側の都合で説明を一方的に進めてしまう営業マンも多いです。一方的な説明が生じる背景には、営業マン自身が時間に追われていることで「早くこの質問とこの場を片付けたい」といった心理がある場合も多く、または顧客の理解度を過小評価しているといった要因が考えられます。

一方的な説明が続くと、顧客としては「理解できていない」「不安が残ったまま」と感じるため、結果として不満やクレームが発生するリスクが高まります

これを防ぐためには、説明の途中でこまめに「ここまででご不明な点はありますか?」と尋ね、顧客が理解しているかどうかを確認します。情報量が多くなると、顧客は混乱しやすくなるため、重要なポイントに絞って簡潔に説明し、顧客の表情や態度に変化が見られた場合には、すぐに説明を中断し、「何か気になる点がありましたか?」と尋ねることで、顧客の不安をタイムリーに解消することができます。

一方的な説明で説き伏せるのではなく、不安や疑問となっている部分を丁寧に聞き出し、顧客が求めていることに対して的確な返答を心がけることが大切です。

クレーム対応の遅れ

顧客が不満や疑問を抱いた際に、迅速な対応ができずに問題が拡大し、顧客の信頼を失ってしまうケースがあります。特に不動産のような高額取引では、クレーム対応の遅れが致命的となり、その後のリカバリーが難しくなることがあります。また、自分では対応しきれない部分をあやふやに回答してしまい、さらに大きな問題に発展させてしまうケースも見受けられます

クレームが入った場合、まずは深く謝罪し、顧客の感情に共感を示します。その上で、「この点について、早急に対策を講じさせていただきます」と具体的な対応策をその場で提案し、顧客の不安を迅速に解消します。

もしも、すぐに答えられない場合や、期待に応えられない場合は、「申し訳ありませんが、こちらの件については確認が必要ですので、少しお時間をいただけますか?」と、必ず確認を取り、「現状できること」と「後で対応すること」を明確に分けて伝えましょう。

顧客はプロフェッショナルで迅速な対応や答えを求めてくることが常ですが、すぐに応えられない場合、「この部分についてはすぐに対応しますが、こちらの部分は確認後に改めてご連絡いたします」と言うことで、顧客の不安を軽減し、信頼を維持すると良いでしょう。

信頼関係を築くには時間がかかりますが、失うのは一瞬です。日々の業務で顧客との信頼関係を常に意識し、丁寧な対応を心がけることが重要です。どんなに忙しくても、顧客からの連絡には迅速に対応し、常に誠実であることを忘れないようにしましょう。

 

まとめ

この記事で述べたように、不動産契約は顧客にとって人生最大の決断の一つです。

あなたがその契約を担当する以上、顧客の心理を深く理解し、彼らの不安を解消し、信頼関係を築くことが不可欠です。目の前の契約だけに集中するのではなく、その先にある顧客の生活全体を見据えた対応が必要です。これを怠ると、クレームやトラブルが発生し、最終的にはビジネスチャンスを失うことになります。

顧客との絆を強化し、長期的な信頼を築くために、常に一歩先を見据えて行動しましょう。あなたの情熱とプロフェッショナリズムが、顧客の満足度を高め、あなた自身の成長にもつながりますから、一つひとつの対応に誠意を持ち、顧客に感動を与える対応を心掛け、常に誠実でプロフェッショナルな姿勢を保ち続けましょう。

この記事の著者

関根 悠太

株式会社Re-Branding 代表取締役
  
中小企業の利益を増やす:営業コンサルタント
AIには真似できない:ブランディングクリエイター
  
1990年生まれ、福島県出身。大学中退後、10業種以上にわたる多彩なキャリアを積み、現場経験を通じて培った問題解決力を武器に2023年に株式会社Re-Brandingを設立。
 
「パートナー型コンサルティング」の手法を用いて、クライアント企業と深い信頼関係を築き、持続的な成長を支援。独自の「眼前可視化」というコンサル技術を駆使し、クライアントが自らの課題の本質を理解し、納得のいく解決策を導き出すプロセスに定評がある。
 
従来のコンサルの枠を超え、クライアント企業やチームの一員として深く関わることで、買取店を出店10ヶ月で売上1億超、60万円の講座販売成約率が70%超、ミスコン世界大会でグランプリ獲得、不動産会社の離職率を40%減少させ採用育成費を2000万円削減するなどの成果を創出している。

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